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南悠太の回想 1
オレが八雲さんと出会ったのはけっこう前の話。5年前の夏。だから小学6年のとき。
今でもはっきり覚えてる。
その日は友だちと遊ぶことにすごく夢中になってて、門限だった18時を過ぎても公園にいた。
暗くなったことに気づいたときには19時を過ぎてた。
急いで家に帰ろうと思ったオレは、近道なんだけど少し治安の悪い裏道を使った。
そしたら、まあ、そうなりますよねな展開になり。
大学生ぐらいの男3人が小6のガキから金を盗ろうとしたり体を触ってきたりで、泣くことしかできなかった。
心のなかで誰か助けてって強く願ったとき、助けに来てくれた人がいた。
「お前らガキ相手に何してんの」
少し長めの黒髪。ゆるいタレ目は眼孔が鋭く蜂を殺せそうだった。
着ていた制服は着崩していて、スラックスも足首が見えるように折り返している。
そして髪を右耳にかけていて、そこから見えるシルバーのピアス。
それが八雲さん。
八雲さんは高校1年生のときから、大人顔負けのスタイルとイケメンオーラを放っていたのだ。かっこいい好き。
キレた男たちが標的をオレから八雲さんに変えて、一斉に殴りかかろうとするも、それをスラリとかわしてしまう姿にまずときめいた。
そこで逃げておけばいいものを、男たちはさらに殴りかかろうとして、八雲さんはまず1人目に鳩尾に一発。
2人目の足をひっかけて転ばせて。
後ろからきた3人目はなんと背負い投げをお見舞いしてみせた。
普段の八雲さんはこんなに喧嘩っ早い性格ではないのだけど、後から聞いた話では、
「あー、あのときね。暑くてイライラしてただけ」
らしい。
そんなところも好き。
とにかく、そのとき助けてもらってから恋心を抱くようになったんだ。
八雲さんはオレの頭をぽんぽんと撫でて「表に出るまでな」と言って手を繋ぎ、送ってもらった。
高校1年生のときから既にこのイケメンっぷり。
好きになるなってほうが無理だった。
八雲さんと別れたあと泣きじゃくってお礼さえ言えなかったと後悔するのだが、後日、偶然再会する話は八雲さんの気が向いたら教えてくれるんじゃないかな。
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