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17.
何度、読み返したかは分からない。
しかし途中、姫宮の胸に身体を預けている我が子のことをふと見た後、困り笑いした。
いつの間にか寝入っていたのだ。
甘えてそうしているのかと思っていたら。
閉じた絵本を脇に置き、起こさないようゆっくりとした動作で、隣にそっと置いた。
少し身体を起こした時、引っ張られる感覚があった。
それは大河が姫宮の服を掴んでいた。
寝ながらもぎゅっと握りしめて離さないそれを見て、姫宮は耐えきれずくすりと笑った。
「⋯⋯大河は、もう」
少しの間、肩を震わせ、されど起こさないように静かに笑っていた姫宮はその隣に横になった。
胸を上下にゆっくりと動かし、小さな口を開けている我が子の穏やかな様子のその寝顔を見つめていた。
言葉を発していたら、小さな寝息が聞こえるのだろうか。夢を見ていたら寝言でも言ってくれるのだろうか。
『ママ』以外の大河の言葉を聞きたい。
その願いを叶えるために、これからも大河が穏やかで安心できる環境を作っていきたい。
それから少なくとも姫宮は望んで産んだ我が子を、これから先も不自由なく、自分のように怖い思いをさせずに幸せな道を歩ませてやりたい。
そうしたらきっと、自然と言葉が話せるようになってくれるだろう。
そうなって欲しい。
静かに眠る我が息子を見ながら幸せを願う姫宮もまた、知らぬ間に眠りについたのであった。
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