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第61話 朝起きたてぽやぽやの魔王様

「ん……う?」  なにやら重たい物体が身体にのしかかっている。僕はぽやぽやする頭を働かせて目を開く。するとそこには、僕を抱きかかえて眠るジスの唇があった。5センチくらいの距離にジスの艶めいた形のいい唇があり、昨夜はあんなことやそんなことをしたのにどきどきと胸が高まってしまう。  いいよね。寝てるし、1回くらいならバレないよね。 「ふゅ」  むに、と唇に仄かに触れるだけの口付けをする。すると、ジスの瞼がぴくりと反応する。 「朝から……いたずらするのが……好き……なの……か」  ジスは、まだ眠気が強い様子でとろんとした瞳で朧気に僕を見つめてくる。だから僕は瞬時にこんなことを思いついた 「ジス。これは夢の中なんだよ」  囁くようにジスの耳元で話す。 「夢の中……」  うとうととしながら、ジスが僕の声に耳を傾けている。 「そう。夢の中だから好きなことなんでもできるんだよ」 「……なんでも……」  さあ、どんな行動に出るんだろう。ジスは。 「んん?」  ジスは手を軽く丸めて僕の胸をふみふみしてくる。  なっ……子猫に擬態してる!?  ふみふみしつつ、僕の服を脱がせてくる。  この子猫、変態ちゃん!?  内心あわあわとしていると、ジスが僕の顔を見つめて 「おっぱい」  と呟く。  魔王のジスから「おっぱい」なんて聞ける日がくるなんて……明日は雪が降りそうだ。 「ちゅう」  ジスが僕の胸をふみふみしながら、胸の突起に吸い付いてくる。  ほんとの子猫みたいだ……赤ちゃんみたい。  まさか、ジスのこんな一面を見れるとは思っていなくて、とても満足度が高い。 「ちゅっちゅ」  ジスは僕の胸に吸い付きながら、うとうとしている。  授乳ってこんな感じなのかな……ジス、赤ちゃんみたいでかわいい。  桜を育てた時は粉ミルクをお湯で作って飲ませていたっけ。 「よちよち」  僕はつい、ジスに赤ちゃんの対応をしてしまう。  だってこんなにかわいいんだもん。仕方ないよね。 「ちゅうちゅう」  こてん、とジスの頭が枕に落ちる。ぽやぽや寝ぼけ眼のジスが、ふわと微笑む。 「そなたのおっぱい……だいすき」 「えっ」  胸がドキッと跳ねる。寝癖がついてる前髪で、ぽやぽやしてる様子のジスは再び眠りについてしまう。 「かわいい……」  今にも寝込みを襲いたいところだが、眠そうなのを無理に起こすことは申し訳ないから辞めた。 「僕のおっぱいそんなにおいしいのかな……」  僕はそんな疑問を心に残しながら、再び眠りについた。

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