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第1話

「ねぇ、大輔くんって私のこと好きなの?」 数十分前に問われた、甘ったるい声を思い出して眉間に皺を寄せる。道行く人は冷たい風に顔をしかめているため、不可解には思われなかっただろう。 PCの入った重たいリュックを背負いなおして、青に変わった信号を渡った。まだ夕方と呼べる時間だが、太陽は沈みかけている。 バイトまでどこかで時間をつぶそうか、と適当なカフェを探そうと顔をあげると、路地裏の小さな看板に目を奪われた。ティーカップのイラストに「ブルーム」と書かれた喫茶店らしき看板。 普段は知らない店に入ることはないが、その日はなんとなく、ふらりと小さな店内に入った。 カラン、と軽いベルと共に扉を開くと、想像よりもシックで落ち着いた店内が迎えてくれた。ふわりとコーヒーの匂いと温かい空調が身体を包み、寒さで強張った身体を緩めてくれる。 カウンターの奥にいる店員こちらに気づき、好きな席へどうぞと声を掛けた。一番角の席に腰かけてメニューを眺めると、店員が水を持ってくる。 「いらっしゃいませ。ご注文お決まりですか?」 「ホットコーヒーで」 「好きな種類はあります?」 「いや……」 豆にこだわってコーヒーを飲んだことがない。歯切れ悪く返事をする大輔に、店員は笑って頷く。 「では、今日のおすすめをご用意しますね」 綺麗にセットされた黒髪を靡かせて、店員はカウンター奥へと戻っていった。 自他ともに認める無愛想な俺とは正反対の、柔らかい笑顔。あれが営業スマイルだったとしても好印象な店員を、思わず目で追ってしまう。 そんな思考を止めるように、一口水を飲んでPCを取り出した。課題のレポートを終わらせてしまおう。学校でやろうと思ったが、また甘ったるい声で邪魔をされてしまった。 嫌なことを思い出した、とまた眉間に皺が寄る。流れで付き合うことになってしまった彼女。趣味や好きなことを優先していいから、と言っていたのに最近は大輔を試すような言葉を投げてくるようになった。そこで別れを切り出しても、そうじゃないと逆上され疲れるばかり。めんどくさくて放置したい、とても。 「大丈夫ですか?」 突然、耳元で囁かれ肩が跳ねた。いつも自分を責めてくる甲高い声じゃない、落ち着いた低い声はなんだか耳がむず痒い。 バッと振り向くと、微笑んだ店員が垂れ目をさらに細めてコーヒーを持って来ていた。 「驚かせちゃったかな。なんだか難しい顔をしてたから」 「いや、まあ……」 「ゆっくりしていってね。これ、甘いの嫌いじゃなかったら」 湯気のたつホットコーヒーとともに、チョコレートが2粒乗った小皿がテーブルに並べられる。あまり人と喋るのが得意ではないが、この店員の言葉はどこか受け取りやすくて。 軽く会釈して立ち去る背中を見つめながらコーヒーに口をつける。苦みの奥にコクがある味。 「……うまい」 ゆったりとしたBGMとコーヒーの匂い。チェーン店のような喧騒がない、落ち着いた店内はモヤモヤした気分を穏やかにさせる。 いつもの半分の早さでレポートは書きあがった。伸びをして時間を確認すると、今からバイト先に向かえばちょうどよさそうだ。荷物をまとめてレジへ向かうと、店員はふわりと笑いかけてくる。 「作業が捗ったみたいで良かった」 「はあ、どうも」 「はい、お釣り。よければまた、待ってるね」 耳元で囁かれたときに、コーヒーで気付かなかったムスクの香水が鼻腔をくすぐって、足早に喫茶店を立ち去った。 それから少しずつ、この喫茶店に通うようになった。静かな店内と、少しおせっかいな店員がどこか心地よくて。気づけば週に3回ほど通っている。カランとベルを鳴らせば、店員の亮さんが微笑みかけてくる。 「大輔くん、いらっしゃい。今日もホットコーヒー?」 「はい、それで」 いつも座る角の席を見ると、どうやら今日は先客がいるらしい。どこに座ろうかと目線をさ迷わせると、亮さんと目があった。どこか面白そうに笑うと、ちょいちょいと手招きされる。 「よかったら、今日はカウンターでゆっくりしない?」 「そう、ですね」 もう何度か来ているが、カウンター席に座るのは初めてだ。目の前で亮さんがコーヒーを淹れているのが新鮮で、ぼんやりと眺めてしまう。ふわりと香るコーヒーも普段より濃い気がした。 「ふふ、そんなに見られると照れちゃうな」 「……別に見てませんけど」 視線を外せば目の前にコーヒーカップが置かれた。見透かされているような視線から逃れるように口をつければ、今日もちょうどいい苦みが口に広がる。 「大輔くんは大学生?なにを勉強してるの?」 「……工学部で、今実験してます」 「理系なんだ。僕は文系だったから実験とかなかったなぁ。もう忘れちゃったけど」 「亮さんっていくつ?」 「今年で35かな?」 「さっ……、若……」 見た目が整っていて、身なりにも気遣っているからかもっと若いと思っていた。少し年上だろうとは思っていたが、まさか10歳以上違うとは。落ち着いた雰囲気が年齢からくるものか、とどこか納得する自分もいた。 そうかな、と照れたように笑う亮さんは普段より少し幼く見える。思わずふっと笑うと、驚いたように俺の顔を見てきた。 「なんですか」 「大輔くんって笑うんだね」 「笑うだろ」 「笑顔見れて嬉しいよ、今日はラッキーだなぁ」 そういえば、最近笑ったのはいつだっただろう。彼女からのかまってアピールがどんどんエスカレートしていて、逃げるように大学から帰っているのだ。友人は事情を知っているが、彼女から探りを入れられているようで、早く別れろと言ってくる。そんなの俺だって早く別れたい。 「何か悩んでる?」 「え、あぁ……」 「なーんにも関係ない人には話しやすいこともあるんじゃない?」 ね?と言ってシフォンケーキを置かれる。餌付けをされていると実感しているが、ここのメニューがどれも美味しいのが悪い。貰えるものは貰っておこうとフォークをとって、最近の悩みをぽつぽつと言葉にしていった。 「そっか、きちんと話し合わないとね」 「え」 「ん?」 「あぁ、いや……」 今までこのことを話した友人たちは皆、早く別れろと言ってきたり、彼女の悪口を言ったりしていた。こんなにさっぱりとした回答に拍子抜けしたというか。思わずそれだけか、と言いかけて口を噤んだ。 「彼女さんも自分の気持ちを押し付けちゃってるし、大輔くんも逃げるばかりになってるんじゃないかな。きちんと話し合って、今後のことを決めたらお互い納得できる結果になれそうだよね」 「……はい」 「あ、ちょっとお節介すぎたかな?ごめんね、嫌な大人になっちゃった」 「いや、助かります」 喋って乾いた舌を潤すように、コーヒーを飲む。 お節介な店員は確かに俺より年上で、いろんな経験を積んでいるんだろう。周りの同年代からは出てこなかった意見が、いつも微笑みかけてくれる口から出てきたことに少し動揺している。 大人の男性とこんな話をすることはなかなかない。 「大丈夫。大輔くんはいい子だし、上手くいくよ」 耳に流れ込むテノールは安心させるような優しさを含んでいて、ちらりと顔を見やる。自分を甘やかすような笑みを向ける亮さんとばちりと目が合った。むず痒い気持ちを隠すように最後のシフォンケーキを口に運べば、ふふっと笑う亮さんの声が降ってきた。 「お疲れ様でした」 バイト先の居酒屋を出て、繁華街を歩く。スマホをちらりと見れば複数の不在着信。全部が彼女からでうんざりして画面を閉じた。 雪が降りそうなほど寒いのに、酔っ払いたちはコートを片手に二次会だなんだと騒いでいる。駅へと急いでいると、聞き覚えのあるテノールが耳を掠めた。 「……亮さん?」 声のする方へ足を向けると、亮さんが男と揉めている様だった。亮さんは男に掴まれた腕を振りほどこうとしているが、男は頭に血が上っているらしく怒号を飛ばしている。揉めているのはラブホテルの前。色々と察するものはあるが、野次馬が集まり始めている。俺はスマホを手に近づく。 「黙ってついてこいよ、なあ!?」 「もう離してくれ!」 「あー警察ですか。街中でケンカしてる人がいて……」 通報をするふりをして近づけば、亮さんと目が合う。驚いている彼の手を男から奪い取って駆け出した。後ろからおい!と声が聞こえるが、野次馬に紛れて走ればうまく巻くことができた。 ここまでくればいいか、と足を止めると肩で息をしている亮さんが戸惑ったようにこちらを見ている。 「えっと、ありがとう」 「いえ……勝手に、すみません」 「ううん、助かったよ。よければ、コーヒー飲んでいかない?」 気付けば喫茶店の近くまで来ていたらしい。俺は無言でうなずいて、先を歩く亮さんに着いて行くしかなかった。 カラン、とベルはいつもより反響したような気がする。いつもは足を踏み入れたら温かいのに、今は空調が切れているからか少し寒い。亮さんが明かりをつけて空調を点けると、ゴウと音がして温かい風が出てくる。いつも充満しているコーヒーの匂いも今は薄くて、いつもの喫茶店ではないようだ。 「今コーヒー淹れるから、座って待ってて」 「なあ、あいつとは付き合ってるのか?」 「……ううん、もう別れてるんだ」 「邪魔、したか」 「いや、助かったよ。断ってるのに止めてくれなくて」 困ったように笑う亮さんがカウンターの奥へ行こうとするのを引き止める。寒い中歩いてきたから、2人とも手が冷たい。俺より高いところにある亮さんの目を覗き込めば、意図を探るように俺を見つめてくる。 「なんで、そんなに辛そうなんですか」 「そうかな?気のせいじゃない?」 「まだあの男のこと、好き?」 「……結婚したんだ、あの人」 「は?」 「なのに連絡して来て……のこのこ会っちゃった」 自嘲している姿が辛そうで、思わずその広い背中に腕をまわした。こんなこと誰にもしたことが無い。自分が一番驚いているのに、亮さんは縋る様に俺の背中へしがみついた。近づくたびに顔をのぞかせていたムスクの香りでいっぱいになる。じわりと高まっていく体温を知ってか知らずか、亮さんが耳に口を寄せてきた。 「これは、都合よく受け取っていいの?」 「……好きに受け取ればいい」 「二階が僕の部屋なんだけど、招待してもいいかな」 「好きにしろ」 喫茶店の二階は自室になっているらしく、イメージよりもシンプルな部屋だった。隅にリュックを下ろして、どこに腰を落ち着けようかと見回せば、未だに心配そうな瞳とかち合う。 「寒かったし、先にお風呂入ってくる?今布団用意するから……」 「まだそんなこと言ってるのか」 わざとベッドに腰を掛けた。亮さんはそんな俺に近づいて優しく頬を撫でる。すり寄ってみればピクリと驚いたように手が強張った。 「引き返すなら今だよ、大輔くん」 「うるさい。気が変わる前にさっさとしろ」 顎を掬われて触れるだけのキスをする。寒さで少しかさついた唇はまだ戸惑っているようで、すぐに離れた。項に手を回して深いキスを求めれば、意を決したように舌が割り入ってくる。上顎をくすぐるようなキスに息が漏れた。息が苦しくなって肩を押すと、普段の優しい瞳の奥に欲が見える。 「あ……、外出た服でベッド上がるの、大丈夫でした?」 「ふふ、今更?」 また唇を重ねると、そのまま今度は肩を押されて組み敷かれる。 「え、俺こっち?」 「あ、そっか。どうしよう、僕ネコはしたことないんだけど……」 「ネコ……?」 「大輔くんは、僕を甘やかしたい?それとも甘やかされたい?」 ちゅっと音を立てて唇を吸われる。ふふ、と息を漏らして笑いながらそんなことを聞かれても、思考がどんどん溶けていくばかりだ。分厚い舌が口内を蹂躙して、くちゅくちゅと撫でられるのが気持ちいい。義務的にしていた彼女の行為との違いにくらくらした。 「ね、大輔くん」 「あ……、甘やか、されたい♡」 「ふふ、そっかぁ。じゃあ、ゆっくり甘やかさせてね」 するりと上着の下から手が侵入してくる。温まりきっていない手は冷たくて、ぐっと腹筋に力が入った。それが気に入ったのか、ゆっくりと腹筋をなぞる様に撫でられる。それがなんだか焦らされているようで、熱い息が漏れた。 「は、う……」 「大輔くんってさぁ」 「な、に」 「僕の声、好きだよね」 「あっ……♡」 いつもより近い距離で囁かれて、思わず腰が浮いた。あの日、むず痒く感じたテノールが腰に直接響いて、聞きたくない自分の高い声が鼓膜を揺らす。もしかしたら初めて囁かれたあの日から、こうなる未来を期待していたのかもしれない。 恥ずかしくて目線を反らす俺を見て、また楽しそうに耳元で笑われる。その息にまた身を捩れば、わざとらしく音をたてて唇を寄せられた。 「うっ、み、み♡やめ……♡」 「いやだ?やめる?」 「は……♡くそっ♡」 パッと顔を離されて、微笑まれる。嫌なことはしたくないから、と捲し上げられて冷たい手が乳首の周りをすりすりと擦っていく。全部がもどかしい。絶対にわざとだ、と睨んでも軽く笑ってごまかされる。 「ほら、どこがいい?気持ちいいところ、教えてほしいな」 「うあ……♡別に……っあ!?♡♡」 焦らされて高められた身体は、普段よりも敏感で。あまり触られたことのない乳首をきゅっと摘ままれると、ビリッとした快感が頭を貫いた。 「ここ好き?強いほうがいいのかな」 「ああっ!♡し、らない♡こんな……♡」 「初めてなのに、おっぱい気持ちいいんだね。えらいえらい」 すり♡こりこり♡ 優しく頭を撫でながら、もう片方の手で乳首を捏ねたり優しく引っ張ったりされる。自分が乳首で感じているという事実について行けずに、ただ嬌声を上げることで精いっぱいだ。 「あぅ……♡は、あぁっ……♡んんっ♡♡」 「こうやって弾くのと」 「あぅっ!♡」 「ぎゅーってされるの」 「うぅ~~~~っ!!♡」 「どっちが好き?」 目の前の亮さんは普段と同じように笑うのに、目の奥がギラギラしていて落ち着かない。何か言わないと、と口を開けてもハクハクと息をして止まってしまう。恥ずかしくて言葉が続かなかった。 「やっぱり、嫌だったかな」 「あ、ちが……」 離される身体を留めるように腕を掴む。試すような瞳にぞくりと背中が粟だった。 今、俺は亮さんに試されている。自分から亮さんを求めていると、言葉にしろと誘導されている。 分かっていても、俺は息を吸い込んだ。 「ちょっと、痛く摘ままれるのが、い……い」 「そっか。じゃあ強くしてあげようね」 「あっ、あっ♡あ、ああああああぁ~~~~!!♡♡は、うぅ♡」 「気持ちいいね」 「あっ、あ♡くぅ……♡♡も、伸び、る♡♡から……っ♡」 ぎゅう♡ さっきよりも強い力で先端を引っ張られる。もっと、と強請る様に胸を突き出せば、そのままクリクリとねじられた。バチッと頭に快感が伝達されて、がくがく腰を揺らす。 耳元でえらいね、いい子だねと吹き込まれると、感じることがいいことなんだと錯覚させられているようだ。 そのまま手は下へと伸ばされて、下着越しに緩く勃ちあがったものを触られる。直接的な刺激に身体をのけぞると、そのままずるりと下着ごと服を取り払われた。外気にふれてぶるりと震えれば、先走りがつぅっと流れたのが分かって恥ずかしい。 足を閉じようとしても、亮さんが足の間に入ってきてそれを許さない。見られていることにまた興奮して鼓動が高鳴っていく。 「今から辛くなっちゃうかもしれないから、一緒に気持ちよくなっとこうね」 「ふっ♡あ、あ、そこ♡うぁ、ああ……♡♡」 「どこが気持ちいいかな。先っぽ?それともくびれかな」 「んぁっ♡♡そこ、もっと、あ♡あぁっ!♡」 しゅっ♡しゅっ♡くちくち♡ バカみたいに開きっぱなしの口から喘ぎ声が垂れ流しになる。緩急をつけて扱かれると、勝手に腰が揺れてもっと、もっとと求めてしまう。恥ずかしいのに、もうここまできたら止められない。 既に陰茎はガチガチに硬くなっていて、溢れた先走りが滑りを良くして快感を増していく。 綺麗な亮さんの顔が近づいてきた。べろりと厚い舌で唇を舐められ、ゆったりとしたキスが始まる。目を閉じて必死に舌を追っていると、鈍い痛みが襲った。 「ん!?んんっ!!」 「ごめんね、ゆっくりするからね」 ちゅぷ……♡ 自分でも触ったことのない、秘部に指が埋め込まれた。竿の快感と尻の異物感で頭がおかしくなりそうだ。 いつもコーヒーを淹れている亮さんの指が、体内に。その事実だけで頭が沸騰しそうになる。 「ぐっ、う……あ♡んぐっ♡」 「頑張ってくれてありがとう。えらいね、もうちょっと頑張ろうね」 「あぅ♡耳、やめ♡♡」 「ほんとに?やめてほしいの?」 「あああああああぁっ!?♡♡そ、れ!♡♡んんんっ!!♡♡」 ちゅ♡♡じゅるじゅるっ♡♡ちゅぽっ♡♡ 耳全体を口に含んで吸い付いたり、わざと音を立てるように舌を動かされる。頭の中を直接犯されているような感覚に陥ってガクガクと身体が震えた。身を捩ろうとしても、いつの間にか亮さんの足に抑え込まれていて快感が逃せられない。心地いいテノールが、今は危ない媚薬のように体中を駆け巡る。 「気持ちいね。もっと教えて。ゆ~っくり上下に扱かれるのがいい?」 「あぁ……♡♡やば、い♡あ、も、むり♡♡」 「それとも、ちょっと強い方がいいかな」 「あっあっ♡はげ、しっ♡♡もで、る……っ!♡♡あ、あ、あっ♡ああああああっ!♡♡」 「ほら、教えて」 パッと手が離される。余韻でへこへこと動く腰を止められなくて、もっとと媚びるように陰茎も揺らしてしまう。早く、早く触ってほしいのに。真横にある亮さんの顔の方へ振り向いて、ねだる様に言葉を零した。 「もっと……たくさん、触って」 「よく言えました。でも、こっちでも気持ちよくなってみようね」 ぐちゅ♡と亮さんの指がある一点を押し込んだ。 「あ……?♡うっ……!んんんんん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?♡♡♡」 今までの快感なんて非じゃない衝撃に、目の前がバチバチと光る。射精とも違った感覚に思い切り身体をのけぞらせて何とかやり過ごそうとするが、そんなことお構いなしに亮さんはまたしこりを押しつぶすようにぐりぐり指を動かす。生理的な涙の向こうには、嬉しそうに笑う綺麗な顔が見えた。 「初めてでこんなに気持ちいいのすごいよ。えらいね、よしよし」 「あ、あ、あああああっ!?♡♡ま、て♡これ、キツ……いぃ!♡♡あ、あ、こわい♡ね、おね、が……♡♡」 「大丈夫だよ、怖くないからね」 「あああああああぁぁぁっ!!♡♡♡いっしょ、や、むり、だ!!♡♡ひ、ぅ……っ♡♡」 ぐぷっ♡ぐぷっ♡ちゅこちゅこ♡♡ いつの間にか指は追加されていて、挟んで揺らすように刺激される。肉棒を扱く手も再開されておかしくなりそうな快感にどこまでも落ちていく感覚。怖くなって腕を掴んでも、力の入らない手はすりすりと撫でることしかできなかった。 手つきはえぐいのに、優しく笑う亮さんはまた穏やかなキスをしてくる。酸欠の頭は目の前の舌を追いかけて、吸われるたびに甘く喘げと命令するばかりだ。 「んちゅ……♡は、はぁ……♡♡んぁ、りょ、さ♡」 「イキたくない?もう、止めておく?」 扱かれる手が緩まる。中の指は前立腺を避けるように周りをくるくると撫でていてもどかしい。ねだるような腰つきに気が付いているくせに、俺の言葉を促す目の前の男が憎らしかった。でも、俺に残された道はひとつ。 「やめ、ないで……。もっと、気持ちよく、して♡」 「ふふ、かわいい……。素直な大輔くんには、ちゃんとご褒美あげないとね」 ぐちゅぐちゅっ♡♡ぐりぐりぐりっ♡♡ 止まっていた動きが、早急になる。いつのまにか異物感は気にならなくなり、ただただ快感を拾い続けていた。 「あ、やば♡も、でる……っ♡♡イ、く……!♡あ、あ、ああああっ!♡♡ん、あっ♡は、も、イくっ!♡あっ、あ、ああああああああぁぁぁっ!♡♡」 びゅっ♡びゅるっ♡ 最近碌に触っていなかったから、どろりとした白濁が勢いよく噴き出した。大きい亮さんの手の平で受け止められたのをぼんやりと見つめていると、満足そうな亮さんがちゅっと軽いキスをしてくる。それに軽く喘ぐと、愛おしそうに笑われた。 「たくさん出せて、いい子だね」 「あぅ……♡」 「痛かったらごめんね、ゆっくりするから……」 いつの間にか亮さんの下半身は何も纏っておらず、俺よりも太くて長い肉棒がぴとりと宛がわれていた。思わずシーツを蹴って腰が引ける。でかい、デカすぎる。確かに体格に見合っているのかもしれないが、怖い。 そんな俺をあやすように、ふぅっ♡と耳に熱い空気を送り込んで亮さんは囁いた。 「怖くないからね、大丈夫。大輔くんはいい子だから」 「あ……♡ふ、う……♡く、るし……んぁっ♡♡」 「今先っぽ入ったよ」 ぐちゅ♡ぐちゅぅ♡ 少しずつ抜き差しして体内に割り入ってくる陰茎は熱くて硬くて苦しい。気を紛らわせるように耳を甘噛みされたり、首をねっとり舐めあげられて、少しずつ奥へと進められる。 けど、正常位では限界があるようで途中から痛みが勝ってしまった。歯を食いしばって眉間に皺を寄せる俺を見た亮さんは自身を俺から抜いた。 「ごめんね、辛いね。顔見れないけど、後ろから試してみる?」 「はぁ……はぁ……。そ、ですね」 「バックの方が楽な人もいるから」 力の入らない手を何とか動かして四つん這いになる。尻を向ける体勢は何とも言えない恥ずかしさだが、ここまで来たら後に引けない。 くるりと皺をなぞる様に撫でられ、また熱い亀頭がグッと押し込められる。さっきとは違う角度で中を抉られて苦しさと微かな快感に声を漏らした。 そのとき。 プルルルルルルルル。 枕元に投げ出していたスマホに着信。画面には、彼女の名前。 それは亮さんの目にも入ったらしく。 「彼女さんから?」 「え、あぁ、はい」 「ふぅん、そっか」 「んぁっ!?♡はぁっ♡あ……♡」 ぐりぐり♡ぐちゅっ♡ 少し強引に奥へと押し込められた。尾てい骨辺りに手を置かれてピストンされる速度も上がる。思わず顎を上げて喘いでいると、着信音は途切れた。 プルルルルルルルル。 また彼女から着信。バイト中にかかってきていた件数を思えば、まだまだ序の口だろう。通知を切ろうと手を伸ばすと、尻を優しく撫でられた。 「出てあげたら?電話」 「は……?何言って、んんんっ!!?♡♡」 「言ったでしょ?しっかり話し合わないと」 後ろから覆いかぶさられて、更に奥を突かれてしまう。自分を支えるのに必死になっている間に、亮さんが通話ボタンを押してしまった。スピーカーから甘ったるい彼女の声。嬌声を押さえることに必死で、画面に手を伸ばせない。 『なんで電話出てくれないの!?もうバイト終わったんでしょ?』 「は……♡わ、るい」 『まさか、女の所にいるんじゃないよね?』 「い、ない……っ♡は、バイト帰り、に……知り合いに会って……んぁっ♡♡」 ぐりぐり♡ぬ~~っ♡ぐぷっ♡ ゆっくり焦らすようなピストンがどんどん脳みそを溶かしていく。喘がないよう腹筋に力を入れれば中を締め付けてしまい、亮さんの大きさをより感じて逆効果だった。早く電話を切らなければと思っても、彼女の話はなかなか終わらない。 その間にも背中や脇腹をフェザータッチされて、全身に鳥肌を立てて感じるしかできなかった。 『ねぇ、大輔くん大丈夫?体調わるいの?』 「ぐっ……♡いや、別に……。それ、より……ぃっ♡♡こん、ど、話が、ある」 『話?それっていいこと?」 「だい、じな話……っ♡♡ぅあ♡は、はぁ……♡だから……~~~~っ!!!?♡♡♡」 ばちゅん!♡♡ 亮さんの下生えが尻に当たる感覚。全部、入ったんだ。そう理解した瞬間、がくんと身体を支えていた腕の力が抜けてしまう。尻だけを突き出すような体勢を気にする余裕はなく、最奥をぐりぐりと開かせようとしてくるのを止めさせようと腕を伸ばすだけ。 「あ、あ、あ……♡ふ、ぐ……♡♡」 『ねぇ、ちょっと大輔くん!?』 「ま、またかける……っ♡♡う、あ、あああああああぁぁぁっ!?♡♡♡」 亮さんに覆いかぶさられ、ごりごり♡と内壁を抉られて声が抑えられなかった。こんなあられもない声が聞かれたのか。もしかしたら共通の友人にバラされるかも。 羞恥と興奮で中をぎゅうっと締め付ける。萎えてしまっていた陰茎から、勢いのない精液がとろりと零れてシーツに染みを作った。バチバチと光がはじける視界に捉えたスマホ画面は、通話が切れていることを示している。 「ちゃんと話合おうとして偉いね」 「あ……♡き、かれ……た?♡」 「どうだろうね。切ったけど、ちょっと聞こえちゃったかも」 亮さんの言葉にまたきゅんっと中を締めた。そんな俺を楽しむように、激しいピストンが再開される。 パンパンパンパンパン♡♡どちゅっどちゅっ♡♡ぐぽっ♡ 突き上げた尻を両側から掴まれて割り開かれた。亮さんの肉棒が抜き差しされる秘部が晒されていると思うと、またひくひくと締め付けてしまう。 「大輔くんって、こういうの興奮するタイプなんだ」 「あ、あ”っ♡♡そ、んなことっ……あう♡な、い”……ん”ん”んんんんっ!!♡あ、ふか……っ♡♡お”っ♡」 「えぇ?さっきより締め付けてくるのは気のせいなの?」 「お”っ♡あ”っ♡そ、そこ……♡♡だめ、だ♡♡つ、ら……♡♡あああああぁっ♡♡♡」 「いやだ?やめる?」 「んあ”あ”あ”あああああぁぁぁぁぁっ!!♡♡あ”、それ……きつ……♡ぐ、う”っ♡んんぅ♡♡♡」 ぐりっ♡♡ぐりぐり♡♡じゅぽっ……♡♡ 急にピストンが緩められて、前立腺をしつこくぐぅ~~っ♡♡と押しつぶされる。重たい快感がなけなしの理性なんか焼き切ってしまう。イったばかりの陰茎を握られて、顎を上げて舌を出して、汚い喘ぎ声をあげた。 「いい子な大輔くんは、教えてくれるよね?どうしてほしい?」 「あ、あ”……♡もっと、いっぱい……ついて……♡♡きもちい、の……すき♡♡♡」 「素直に言えたね」 がちゅん!!♡♡ 穏やかな顔に似合わない、暴力的な肉棒が一気に埋め込まれる。もう膝を立てていることもできなくて、寝バックの体勢で腰を打ち付けられた。 息がしづらくて苦しい。シーツに陰茎が擦れて気持ちいい。枕にしがみついて動物みたいに喘いで。今までの俺なんてどこにもいないみたいに、目の前の快感に流された。 「お”っ♡お”っ♡お”ぁっ……♡♡ぐっ♡ん”ん”ん”んんんんんっ♡は、きもち……♡♡あ、まっ……て♡♡それ、は……」 「大好きな耳も一緒にね。かわいい、気持ちいいね大輔くん」 「あ”っ♡きもちい……♡♡りょ、さんのっ♡♡こえ、すき……♡♡あああああぁんッ!あ、もっと……♡もっ、と……あぁんっ♡♡♡」 枕を掴んでいた指を解かれて、恋人つなぎで握られる。いつも美味しいコーヒーを淹れている指に好き勝手されていたことがどうにも堪らなくて、唇に引き寄せた。 あ、大きくなった……♡ 瞬間、それを取り繕うかのように耳を甘噛みされる。彼女とは違う意味の、甘ったるい言葉を吐息と一緒に吹き込まれて。子どもみたいに頭を撫でられて、褒められて、でも体内はぐちゃぐちゃに暴かれて。自分がバラバラになるような感覚にどんどん落ちていく。 「はっ、もう、イきそ……」 「はぁ、はぁ♡イって……?♡りょ、さ、も……♡♡あ、はげしっ♡♡あ”、あ”ぁっ!!!♡す、ご♡♡お、かしく、な……っん”ん”ん”んんんんんっ!!!!!♡♡」 ばちゅんっ!♡どぴゅ……どくっ♡♡ 腹の中に広がる熱い感覚。中に出されるってこんな感じなのか、とどこか他人事のように思いながら意識を飛ばした。 目を覚ませば知らない天井。自分の状態を確認すれば綺麗になった身体に服を着た状態。もしかして昨日は夢だったかと思うが、喘がされながら掴んだ枕はそのままでため息を漏らす。 隣を見やれば亮さんはいない。掛け時計は午前7時を指していて、カーテンの隙間から見える景色はまだ少し薄暗い。 寒いがひと様の布団で二度寝するほど図太くない。ベッドから降りると、どこからかコーヒーの匂いがする。 思ったより重い腰に気遣いながら階段を降りると、カウンターキッチンで亮さんがコーヒーを淹れていた。 「あ、おはよう。そろそろ起こしに行こうかと思ってたんだ」 「おはようございます……」 「身体は大丈夫?昨日は無理させてごめんね」 「いや……」 カウンター席に座ると、コーヒーと焼きたてのフレンチトーストが出てきた。後処理までさせて申し訳ないが、生憎腹は減っている。遠慮なくいただけば、いつも通り穏やかな表情で亮さんは見つめてきた。 「彼女とは別れるの?」 「そう、ですね……」 「そっか。また甘やかされたくなったら言ってね」 昨日のあれこれを思い出して目線を反らす。そんな俺の顎をカウンター越しから掬って、亮さんは目を細めた。 「僕、いい子大好きだから」 ぞくり、と背中に快感が走る。また俺は、このテノールに甘やかされたくてベルを鳴らすのだろう。 カチャリと音を立ててコーヒーカップを手放して、俺はゆっくりと唇を寄せた。

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