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第1話
狼は人間と近しく社会的な群れをつくる動物だから、単独ではほとんど生きていけない。
「はぐれ狼」と呼ばれる哀れな存在と似かよった人物が、俺の身近にいる。
俺が勤める会社のモットーはチームワーク。
とあり、つねに社内の雰囲気を和気あいあいとして笑顔溢れるものにしないと「いけない」。
チームワークを大切にするか否かが人事の評価につながるから、みんな不和を生むようなことを絶対しないなか、一人、同僚の小口だけは空気を読まず。
仕事において必要最低限にしか言葉を交わさないし、一切、雑談をしなければ、一言も無駄口を叩かないで、出社から退勤までほぼ無表情、無反応。
和を尊しとする会社にあって頑なに孤独でいるのが「はぐれ狼みたいだ」というわけだ。
ただ、人間は狼とちがい、現代社会においては、ぼっちでも死ぬことはないが、精神的に追いつめられ、自死に向かうこともある。
「仲間はずれになって辛いのでは」心配したのと、チームワーク推進リーダーという立場からして放っておけず、和のなかにはいるよう促すも「仕事があるんで」「会社以外では一人ですごしたいんで」と断固拒絶。
そのうち「こいつ、出世するつもりないのか」と愛想をつかし、まわりもかまわなくなたのだが、それでも、はぐれ狼の動向がみょうに気になって。
すこし経って休日に部長主催のバーベキューへ。
正直、面倒くさかったが、出世街道から外れたくなく、休日でもチームワーク推進リーダーの務めを果たして、場が盛りあがるように。
もちろん小口がいないのを、すこし気にしつつ、せっせと準備をして、さあ肉を焼こうというときに「あっちで弓道の大会やっているぞ!」と部長が報告。
部長の先導で見にいってみると、ぴんと張りつめた空気のなか、弓の糸が引かれて、次の瞬間、俵の真ん中に矢が刺さっていた。
静かに拍手が鳴り、俺らも手を叩きながら、あらためて今、弓を引いた人を見れば、なんと小口。
俺だけが目を丸くし、みんなは気づいてないよう。
容姿自体は冴えないものの、姿勢を伸ばしたその佇まいは凛々しく美しく、一見、別人のようだから。
弓道の世界でも人々に遠巻きにされているのは同じとはいえ、高値の花的オーラがあり、まわりは恋する乙女のように見惚れて「やだ!かっこよすぎて近づけない!」とばかりもじもじ。
会社では社会不適合の負け犬のように見られているのが、ここでは道を極めし孤高のはぐれ狼として畏敬されているらしい。
が、一人だけ「結城!」となれなれしく抱きつくのが。
小口が「孤高を貫くはぐれ狼」ならその男は「愛嬌溢れる大型犬」。
親しげに話しかけるのに、一言二言しか返さず、そっけなくしながらも、わずかに笑み浮かべたように思えて。
その瞬間、雷に打たれたような衝撃を受け、同時に噴火するように激情がわ湧きあがり「じゃあそろそろ」と会社の人たちがもどっていくのとは逆に猛突進。
関係者以外立ち入り禁止の看板を無視して、選手が控える場所に踏みいり、あいかわらず密着してる小口と相手の男にタックル。
二人がよろけたところで小口の腕をつかんで、有無もいわさぬ力をこめて走っていった。
相手の男は追いかけようとして、大会関係者の足止めをくらい、一方で急にさらわれた本人、小口はこんなときでも無言でとくに反応なし。
頬の辺りに視線を覚えるから、たぶん「会社で和に混じれとしつこく強要してきた変な
やつ」と認識しているのだろうが、名前を覚えられている自信はない。
手を引かれるまま、無抵抗に走ってくれている小口の心境は知れないものを「はぐれ狼のくせに!」と理不尽な怒りを抱きながら、とにかく前進。
すこしすると別荘地がお目見えして、並ぶ建物のひとつに行き、とりだした鍵で解錠。
この別荘は俺のもの。
幼いころ長期の休みの日に遊びにきていたのが、俺が成人したら譲渡されて今は人に貸している。
その人は夏のシーズンしか使わないに、秋の今は無人。
人に見られないようドアを開けてすぐに踏みこんで、つんのめった小口とあらためて向きあうまえに、玄関にあった重い花瓶で頭を殴打。
そのあと小口が目を覚ましたのは牢屋のなか。
場所は地下で、牢屋は貸している人の所有物。
まえに見せてもらったときの説明では「猟銃会にはいっていて要請を受ければ、この檻を罠にして熊を捕まえるんだよ」とのこと。
人間を閉じこめておくのには、やや狭いが、地下室のドアは堅固だし鍵も厳重だから、問題ないだろう。
自分が裸のうえ、首輪がはめられているのを確認するも、やはり小口は表情を変えず、呻きも漏らさず。
俺に向けた目にも感情や含みはなく、すこし苛つきながらも笑いかけて「ほらご飯だよ」と犬用の餌皿にいれた、ぐちゃぐちゃの猫まんまを。
丸一日寝ていたから空腹なのだろう、檻の扉を開けて皿を置くと、起きあがって四つん這いで近づいてきた。
が、箸やスプーンがないから、さすがに俺に問いかけるような視線を送るも「はぐれ狼から飼い犬になっただけだから」と小口にすれば訳のわからない説明を。
釈然としないだろうに、眉ひとつ動かさず皿に顔を突っこみがつがつ。
皿をきれいに舐めて上体を起こしたところで、顔が味噌汁とご飯粒まみれなのをそのままに「じゃあ食後の運動をしようか、ポチ」と檻から引っ張りだし、マットレスの上に放る。
埃が舞いあげって、咳きこんでいるうちに「今は飼い犬だからワンと鳴くんだよ」と指示して、小口の生まれたままのすがたを眺める。
引きしまった体、毛がうすく白い滑らかな肌、弓道をやっているせいか寝姿にも品があり、そこはかとない色気が。
喉を鳴らして、胸をまさぐり萎えたそれをにぎってしこしこ。
会社の同僚に犯されようとしても呆けた顔をしたまま、といって体は反応して、呻きを漏らすたびに「ワ、ワン・・・」と律儀に鳴く、その心境ははかり知れず。
「まだはぐれ狼のような顔をしやがって」と内心、ぼやきつつ、扱く手を早めて「ワ、ワン、ワン、ワアアン・・・!」と射精させる。
余韻に浸る暇を与えず、胸を吸って尻の奥を指でぐちゃぐちゃにするも、遠い目をしてワンワン悶えるのが、むしろ俺をこけにしているよう。
そのくせ体は嘘をつけず、俺の愛撫に従順で「ワ、ワア、ワンン・・・!」と二回目の射精をしているから笑えるが。
歪んだ笑みを浮かべて、苛立ちを募らせながら「無感情の小口のまえで感情を露にしたら負けだ」と歯噛みし、準備万端の息子を剥きだしに。
「さっきの男以上に感情を発露させてやる!」と躍起になりかけ、深呼吸してクールダウン。
男の尊厳が奪われそうな、この期に及んでも他人事のようにぼうっとしている小口に、慈愛をこめてほほ笑みかける。
「はぐれ狼のおまえは一生、だれも愛さないし、だれにも愛されないで死んでいく、そうだろ?」
「でも俺が、あの男の代わりに飼い犬として最期までかわいがってやる」と告げたとたん、見開いた目を震わせて、あきらかな動揺。
「やっぱりな!」と怒りとよろびがないまぜの烈々とした感情を叩きつけるように貫けば「くうあああ!」とやっと偽りのない喘ぎを。
この機を逃すまいと腰の強打を畳みかけ「や、やだあ、あいつのこと、思い、ださせ、ないでえ!」
「どうして?思いだせるだけ思いだせばいい。
もう二度とあの男には会えないのだから・・・かわいそうに・・・あの男に抱かれているのを思いだしながらヨがるのを許してやるよ」
「はあ、ちが、ちがああ・・!あいつは、幼ななじみ、でえ、ずっと、好き、でえ!や、やっと、結ばれたのお!俺、俺え、あいつ、大切、だからあ、邪魔なんてえ・・・!」
「でも、あの男に抱かれて愛していると囁かれる妄想に浸って、数えきれないほど自慰をしたんだろ?
そして、その邪な思いを知られまいと過剰防衛に走るあまり、まわりに対しても完全に心を閉ざしてしまった。
ああ、なんて哀れみを誘うはぐれ狼よ、ずっと寂しかったろう。
これからは俺が死ぬまで飼ってあげるから、あの男の思いでを、せいぜい美化しながら、惨めたらしく犯されればいい」
「や、やだあ・・・!ふあ、んあ、お、おまえの、そば、いてえ、結婚、されたら、辛いけどお!そばに、いられないの、やだああ!や、やあ、やめてえ、思いださせな、でえ!気もちよく、しな、でえ!ああ、ああ、ああう、か、寛太、寛太ああ、助けてえ、んふ、ふおお!」
メスイキして締めつけてきたのに、注ぎこむ。
あまりの量に溢れでるも、俺の息子は元気はつらつで、かまわず精液をシェイクするように腰の強打を緩めず。
「一生、だれも愛さず、だれにも愛されなくても俺が孕ませてあげるよ!
俺はおまえを愛せなくても、子供は愛せるだろうし、はぐれ狼のおまえが家族をもてるなんて幸せなことだろ!?」
気がすむまで犯したら、意識を朦朧とさせる小口の体を拭いてやり、裸のまま檻にもどした。
しっかりと施錠してから何事もなかったようにバーベキューに合流し、巧みに言い訳をして不審がられず。
そのあとの生活はあまり変わらず、出世を目指して仕事に励み、毎晩、別荘に帰って犬のように小口のお世話。
一通り世話を済ますと、かならず交尾をして、はじめのほうが「あ、ああ、、あいつのこと、思いださせ、なあでええ!」と泣き叫んでいたのが、このごろは俺の顔を愛しげに見るように。
おそらく俺を寛太と重ねて見て、笑いかけたり幼児のように甘えたり積極的に求めたり。
代用されるのに「俺だけを見てくれ!」と怒らず、むしろご満悦な俺は、今日は交尾のまえに小口にたらふく水を飲ませた。
会社の噂で聞いたことがあるのだ。
小口は細身ながら、すこし飲んだり食べたりしただけで、やけに腹が膨らんでしまうと。
噂どおりで、二リットルのペットボトルを五本飲ませたところで妊婦のように。
妊婦と見まがう小口の腹に大興奮して「いっぱい子供つくろうな!」とこれでもかと注ぎこんだもので。
「孕んだ腹のなかに子種を追加すれば、子供が増えるらしいよ!
多くの子供が生まれて大家族になれば、もう、おまえははぐれ狼はじゃなくなる!ああ、俺もうれしいよ!」
「ひいあ、ああ、しゅ、しゅごお、いっぱあ・・・!か、寛太、寛太あ!うれし、うれし・・・!だって、寛太はあ、彼女にい、子供、できた、うれしそう、いってたからあ!でも、でも、俺、選んで、くれたのお!あ、ああう、あひいい!寂、寂し、かった、のお、ずっとお!おふう、おう、く、か、寛太、とお、寛太の、子供、いっぱあ、俺も、ほし、ほしいい!もっと、もっとお、俺、犯してえ、は、孕ませてええ、おう、んお、ふぐおお!」
ひそやかな歓声と拍手が響いたのに、はっとして見れば、小口がまた弓で的のど真ん中を射ったらしい。
といってガッツポーズをせず、雄叫びもあげず、澄ました顔でやおら弓を下ろして粛々と頭をさげのを見て「まあ俺は出世まっしぐらの人生を捨てる気はないし」と鼻で笑う。
そのくせズボンを膨らませて、トイレに寄ってから会社の人と合流しようと去ろうとしたとき。
「おまえ、すごすぎい!」と例の寛太がうしろから抱きつき、犬がじゃれつくように頭に頬擦り。
小口は苦笑したとはいえ「あれ?おまえ、おっぱいおっきくなった?」と揉まれて、すかさず口を腕でおおい、頬を染めて伏せた目を潤ませたのを俺は見逃さず。
遠く離れていても、むせるような色香が鼻について「はぐれ狼のくせに・・・!」と激昂するあまり我を失ってしまい。
スマホの通知音を無視して二人のもとへと突き進み、懐こい大型犬にかまわれて勘ちがいしかけている、可哀想なはぐれ狼に手を。
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