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 シデリス殿下が王都に戻るのを見送った僕たちは、各々街を見て回ることとなった。  エカードさんは大剣の手入れをすると、鍛冶屋などがある方面へ。キリアンも渋々エカードさんについていくこととなった。 「お前の剣も手入れをしたほうがいい。行くぞ」  強引にキリアンを引きずったエカードさんは、僕に向かって口パクで伝えてくる。 『こいつはしばらく預かっておく』  どうやら、エカードさんは僕の気が休まっていないと思ったようだ。  別に気が休まっていないわけではないけど、個人で調べたいことがあったから、彼の気遣いに甘えておくことにした。 (……まず、知るべきは僕の両親が本当の両親なのか)  僕には魔族の血が入っているという。両親は生粋の人間――のはず。じゃあ、僕は一体なんなのか。 (先祖返りとかそういうものの可能性もある……んだけど)  やっぱり一番高い可能性は僕は両親の実子ではないということ。  もしも、もしもだよ。僕に本当の両親がいるのなら――会ってみたいと、思ってしまう。 (たくさん尋ねたいことがあるんだ)  こぶしを握って、僕は芸術家のアトリエがある通りに足を向けてみた。  大通りは今まで何度か通ったし、今回は小道に行ってみようと思ったのだ。  アトリエがたくさん建ち並ぶ通りはしぃんとしていた。かといって、活気がないわけじゃない。  人はそれなりに通っているし、話し声も聞こえてくる。ただ、雰囲気が独特だった。そして、僕はこの雰囲気が嫌いじゃない。 「……すごいなぁ」  自然と言葉がこぼれていた。芸術家たちのアトリエはとても独創的。あと、お店らしき建物もあった。  お店の中を覗いてみると、たくさんの芸術品や工芸品が並んでいる。  店主の「いらっしゃい」という声が遠くから聞こえる。視線を向けると、店主らしきご老人がお金を数えているみたいだ。 (木工品が多いのかな。このオブジェも木で出来ているみたい)  だからなのか温かみがあって、見ていて心が安らぐ。  少しの間店内を見回ってみる。完全に冷やかしだけど、見ていて楽しかったのだ。 (店主さんに、聞いてみてもいいけど……)  けど、どう聞けばいい? 僕の両親を知りませんかって聞くのは違うような気がする。  工芸品を見つつ頭を悩ませていると、店主さんがいたほうからガシャーンと大きな音が聞こえてきた。  僕が慌ててそちらに顔を向ける。店主さんは、僕を見て口をパクパクと動かしていた。 「――クラーラさんかい?」 「クラーラ?」  馴染みのない名前に、僕が眉間にしわを寄せた。店主さんは慌てて眼鏡をかけた。少しして落胆したように肩を落とす。 「あぁ、ごめん。人違いだったよ。ごめんねぇ」  店主さんが何度も謝ってくる。僕はゆるゆると首を横に振った。謝ってもらうようなことじゃなかったから。  僕はゆっくりと店主さんのほうに近づいた。店主さんは僕の顔をまじまじと見て、「そっくりだねぇ」と声を上げた。 「まるで生き写しじゃないか」  感極まったような声に、僕は戸惑う。でも、これはチャンスだと思った。 「あの、クラーラさんという人のこと、教えていただけませんか?」  僕の声は震えていた。 「僕、ジェリーって言います」  ちょっとでも警戒心を解いてほしくて、僕は必死に言葉を探した。  店主さんは目を瞬かせていたけど、「いいよぉ」と了承してくれた。 「とりあえず、そこに座ったらいいよ。今、お茶を淹れてくるからねぇ」 「い、いえ、お構いなく……」 「いいんだよ。若者とお話しするのも、楽しいから」  お店の奥に入っていく店主さんを見送って、僕は自分の心臓が大きく音を鳴らしていることに気が付いた。  もしかしたら、僕の出自に関わることが知れるかもしれない――という、期待があったのだ。

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