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25話(4)
「ん~~~~っ」
目が覚めた。昨日の記憶は風呂場で止まっている。多分、そこで果てて寝ちゃったのだと思う。ちゃんと服を着ているのは如月がやってくれたのだろうか。
隣を見る。くぅくぅ。如月が寝てる。大変だっただろうなぁ。勝手にキッチン使ってもいいかな? まぁ、今更だよね。これだけこき使われて料理してるのだから、俺のテリトリーみたいなもの。
何か如月のために作ろうかな? 身体を起こし、ベッドから降りる。首元が苦しい。Tシャツを見る。
「前と後ろ反対だし!!」
Tシャツを脱ぐ。胸元がキスの跡だらけ。何これ!!! えっ?!?! いつ付けたの?!?! 俺が果てた後?!?!
「もぉ~~っやめてよね~~っ」
でも嬉しい。私のものっていう独占欲を感じる。はぁ、そういうの良い。これは誰にも見せられないけど。Tシャツを着直す。一階に降り、キッチンへ向かう。何作ろうかなぁ? リビングを通り、キッチンへ行き、冷蔵庫を開けた。
「あんまいいものない……」
ふと、イングリッシュマフィンが目に入る。これにしよ。イングリッシュマフィンを上に向け、4枚オーブンへ入れる。
「2分くらい焼いとけばいっか!!」
冷蔵庫を開け、バターとケチャップとマヨネーズを取り出す。如月のために作ると思うと楽しい。
チーン
「パン焼けた!!」
イングリッシュマフィンを取り出し、バターとケチャップ、マヨネーズを塗っていく。ふんふんふ~~ん。
「耐熱性のお皿ないかな……」ごそごそ。
「あっ!! これいいじゃ~~ん!!」
ココット皿に卵を割り入れる。黄身を軽く混ぜ、電子レンジへ入れた。少しずつ様子を見ながら温める。
「卵、固まった!!!」
卵を取り出し、粗挽き胡椒を振る。あともう1個作らなきゃ。ついでにベーコンも冷蔵庫から出~~そっと。冷蔵庫を開く。
ぎゅ
腰回りに腕が絡まる。
「う?」後ろを見る。如月。
「それ誰の朝ごはん?」
「如月と俺~~っ一緒に食べよ?」如月の顔が近づく。
「うん、食べる」ちゅ。優しく唇が触れ合う。如月は嬉しそうに微笑んだ。
フライパンにベーコンを置き、焼き色がつくまで焼く。あ、チーズチーズ乗せちゃおうかな?!
「如月とろけるチーズ取って!!」
「え? はぁい」如月は冷蔵庫からとろけるチーズを取り出し、睦月へ渡した。
「ベーコンの上乗せて~~」ボタンを押し、IHコンロの火を消す。
「こう?」
「そうそう」熱でチーズがとろっと溶けた。いい感じ。
「イングリッシュマフィンに挟も~~」先ほどの卵を乗せる。
「ベーコン乗せますね」如月がフライ返しでベーコンを重ねた。
「もう片方のパンで挟んで~~っと」
「完成ですね!!」如月と顔を見合わせ、笑う。
「うん!! 早く食べよ!」完成したイングリッシュマフィンサンドを皿に乗せ、リビングへ運ぶ。
「私の部屋で食べません? 姉さんたちに見つかったら面倒くさそう」如月は2つのコップにレモンティーを注いだ。
「いいけど?」リビングから、如月の部屋へ行き先を変える。部屋に着くと、如月は折り畳み式のローテーブルを出した。
ローテーブルにイングリッシュマフィンサンドを並べる。お皿の隣にレモンティーの入ったコップを如月が置いた。
なんか、変な感じ。今まで何も思わなかったけど、部屋に2人でご飯とかカップルみたい!!! なんか今更だけど照れる!!!
恥ずかしくて、如月と距離を置いて座る。
「なんで離れて座るんですかぁ~~」
「な、なんとなく」照れくさくて目線が下がる。
「どうしたの? 顔赤いよ?」如月に肩を抱かれ、引き寄せられた。
「なんでもないってばぁ~~! 早く食べよ!! ほら!! 如月食べて!!!」イングリッシュマフィンサンドを手に取り、如月の口に押し付ける。
「んふっ…いきなりやめて」如月は睦月の手首を掴み、そのままイングリッシュマフィンサンドを食べた。
「美味し。睦月さんもどーぞ」手首が離される。
「どーぞって食べかけじゃん。まぁいいけど」如月のかじった上からかぶりつく。
「間接キスだね」如月がクスッと笑った。
「いつもキスしまくりでしょうがぁ~~」釣られて笑う。
「そうでした~~」
笑い合いながら、一緒に作った朝食を食べた。
朝食を済ませ、キッチンで使った調理器具を如月と片付け始めた。俺がこの洗い物をして、隣で如月が洗ったものを受け取って、布巾で拭く。ベルトコンベアー作戦。
「あのさ、長いことお邪魔したし、明日にはそろそろ帰ろうかと思うんだけど……」洗ったものを如月に渡しながら言う。
「そうですね。私もそろそろ睦月さんと気兼ねなくまったりしたいです」如月は受け取った皿を拭きあげた。
「うん、そうだね~~帰ったら何する?」如月を見る。
「え? 執筆!!!」最近書いてないもんね。
「そうじゃないでしょぉ~~そうじゃぁ~~」口が尖ってしまう。
「あ!!」如月が何か思い出したように見てきた。
「え?」
「にゃんにゃんねこみみプレイ」は?
「いや、え? は?」理解できなくて固まる。
「私が勝ったし、おうち帰ったらしてもらう」
はぁあぁあぁあぁあぁあ?!?! え? 無理!!! またやるの?! アレ?! え? やだ!! まだ諦めてなかったの?! てか本気だったの?! もはや趣味?! 癖 ?!
「や、やだ!!!」洗ったフライパンを強引に押し付ける。
「ちょっ……はぁ…『挿れてにゃぁっ…』『なかに出してにゃぁっ…』でよろしく…んはぁ…はぁ…あっ『おかしくなっちゃうにゃあ』もあり…はぁ…はぁ」如月は頬を赤く染め、息切れした。
「何を言ってるの?」如月のヘンタイ性に少し引く。
「はぁ…『ぁあっ…きさらぎっきもちいにゃぁっ…』みたいな…はぁはぁ」真顔で話しておる。
「いやいやいやいや~~俺、燃えないし!!」如月がハッとした表情をした。
「なるほど」理解してらもらえた!!(?)
「そうだよ!! 俺が燃えないからだめ」これでねこみみプレイは却下だな。
「萌えればいいんですよね?」え?
「まぁ?」燃えないけど。
「検討しておきます!!」何を?!?!
洗い物が終わり、如月とリビングのソファに腰掛ける。明日帰るなら、最後は如月家の皆さんと何かしたいなぁ。
「あ」
「どうしたんですか?」如月が訊く。
「今から花火買いに行かない? デートも兼ねて」如月を見つめる。
「ふふ。デート嬉しいです。行きましょう」如月は立ち上がった。
「あれ? ちゅーは?」如月のシャツの裾を握り、引っ張る。
「もう~~~~っ」
如月は少し屈み、睦月の頬に触れ、優しく口付けした。
ちゅ。
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ーーホームセンター
「花火あったね!! どれにする?」並べられた花火を順番に見る。
「ひとつずつ全て買ったら良いのでは?」如月はカゴに花火をひとつずつ入れ始めた。
「誰が買うと思ってるの……」カゴの中にどんどん花火が入れられていく。
「え? 睦月さぁん」甘い声で名前を呼ばれ、ドキッとする。
「だってスマホも財布も忘れちゃったんだもん~~」しれっとまた花火をカゴに入れてくる。
「ショルダーバック持ってくる意味!! もぉ! それ何入ってるの!!」カバンを掴む。
「え? 本」如月はカバンを開け、本を取り出し、見せた。
「本より持ってくるべきものあるでしょーよぉ……」
「あ、バケツも要りますね!」カゴにバケツが突っ込まれる。
「ちょっと!! ストップストップ!! 今いくら?!?!」しゃがみ込み、カゴの中を確認し、計算する。
「3千円くらいじゃないですか?」如月が隣にしゃがんだ。
「ご、ごせんえん!!!」
「まだイケますね」はぁ?
「高いぃぃ~~!!! もうだめ!!! ぶっぶ~~!!」手でバツを作り、如月の目の前に出す。
「けちくさ!!!」
「けち違う!!!」カゴを持って立ち上がり、店内を見る。
如月がフラッと先を歩き始めたので、追う。何かを見ている。なんだろう。そばに寄った。
「睦月さん、私これ欲しいです」出会っちゃったぁ、みたいな顔で、かき氷機を抱えている。
「要らん」作るのも洗うのもきっと俺。
「ぇえ~~っ! せっかく、睦月さんと一緒にかき氷作って、『あ~~ん』したり、楽しもうと思ったのに……」うるうる。じぃ。
「反則!! それずる!!」如月の持っているかき氷機を手に取り、カゴへ入れる。
「睦月さぁんっ」ぱぁあぁあっ。
「これもお願いします」クーリング×3。おめめきらきら。睦月さん。睦月さん。睦月さぁんっ。無言の圧力。
「くそがぁあぁぁあぁ!!!」クーリング×3カゴへ追加。
「睦月さん、あっちみましょ~~」Tシャツを引っ張られる。
「もうこれ以上買わないからね!!! 見るだけ!!」カゴが重い。絶対一万いってる。
「あっ、入浴剤ですって~~」如月は立ち止まり、入浴剤を手に取った。
「…………入浴剤」
入浴剤コーナーからは花のような甘い香りが漂う。
入浴剤=一緒にお風呂入れる=良い匂いに誘われ湯船で甘いえっち?!?!『…睦月さんっ…甘い匂いで…わたしっ…おかしくなっちゃう……早く私の中に挿……ぁあっ(妄想)』はぁはぁ…いいっ!! 喜んで挿れっ……。
「買おう!!!」如月の持っている入浴剤を奪い、カゴへ入れる。
「え? 何急に。なんかえっちなこと考えてない?」如月が訝しげに見てくる。
「考えてない!!! 気のせい!!!」口元が緩んでしまう。
「嘘くさ」
「そろそろ会計でお願いします!!」如月と一緒にレジへ向かった。
ピッピッピッ
「16500円でございます~~」
「たっかーーーー!!」あまりの高さに口元を手で押さえる。
「でも2万はいってないです。レジ袋2枚ください」金額加算。
「そういう問題違う……」ポケットからスマホを取り出し、決済画面を開く。
「IDで……」如月家にお世話になってる分食費が浮いてるはずなのに、これじゃあプラマイゼロ!! かなしみ。決済を済ませ、レジ袋に買ったものを詰めていく。
「いっぱい買ったぁ~~」如月は花火ばかり詰め、手に持った。
「俺がな!!!」ちゃっかり重い物は全て俺へ。
2人で買い物はすごく楽しかった。また一緒に買い物へ行きたいな。
「如月、手~~」右手にレジ袋を持ち、左手を差し出す。
「暑くて手、汗かいてるかも~~」手のひらを服で拭ったりして、中々繋いでくれない。
「そんなのいーから」
強引に如月の手を握る。繋がった手に熱が籠る。
「手があつい……」
「なら離す?」如月に訊く。
「離さない」
繋がれた手が強く握られた。
「離さないって……俺も離さないけど?」
握手のように繋がれた手の指先をずらして、さりげなく向きを揃える。同じタイミングで指を絡め合う。
ぎゅっと力を入れたら、
ぎゅっと握り返された。
「ふふ。睦月さん、いっぱい買ってくれてありがと」
「どー致しまして」
如月の嬉しそうな顔を見て、ニッと笑った。
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