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26話(4)

「な、なにも~~いきなりキスして!!」手を握られたかと思ったら、急にキスをされ恥ずかしくなり、顔が熱くなる。 「え? 良いじゃないですか」ふにふに。ねこみみを触られる。これ、いい加減外そうかな。  っていうか下着履いてないし!!! 立ってる訳じゃないけど恥ずかしい!!! Tシャツの裾で剥き出しになっている下半身を隠す。 「なんかそういうところ、女の子みたいですよね。可愛らしくて好きです」じぃ。如月は睦月の隠す仕草を見つめた。 「はぁ?! どこが!!! ち、違うし!!! なんでそんな堂々としてるの!!!」見せたいとは思わないのでそのまま隠す。 「え? 何回も見てるでしょ。睦月さんは可愛いからいいですよ、そのままで……ん」ちゅ。  可愛いって……。赤く染まった頬に口付けされる。この座り方、めっちゃちゅーしてくれる。うぅ、恥ずかしいけど、いいっ。  それよりもキッカケはどうあれ、せっかく2人で出かけたのだから、ただ、エアコン見て、えっちして帰るのは味気ない。少しくらい、如月とデートしたい。 「如月……え~~っと…少しデートしない? このあと」目線だけ上げ、見つめる。 「良いですよ、どこ行きますか?」  如月の手がTシャツの裾から素肌に触れた。 「っん……やめ…なんで手入れるの!! あっ…やめっ…んっ…あっ」突起を指先で擦られ、肩がビクッと上がる。 「え? 今、顔赤くして、上目遣いで『触って?』って誘って来たからぁ~~」如月はクスッと笑い、手を抜いた。 「そんな風に言ってないし誘ってない!!! もぉ!! 触るからおっきくなっちゃったってば!!!」  かぁ。恥ずかし。もう一度Tシャツの裾で隠す。 「すぐおっきくなっちゃうんだね? 触ってあげようか? 上は無防備ですよ~~ほらほら~~」悪戯な笑みを浮かべ、服の上から突起をつまんでくる。 「あっ…んっ…やめて!!! もぉ!!! デート!!! やっ…デート行き先決める!! んっ如月!!!」はぁ。立っちゃった……如月のばかぁ。 「はいはい、どうします? 何かお揃いで買いますか? そういえば恋人になって3か月くらいですね」如月は睦月の頭を撫でた。 「お揃い……」いいかも。 「やだ?」心配そうに見つめてくる。 「ううん、お揃いがいい」その提案が嬉しすぎる。如月の頬に手で触れ、口付けする。ちゅ。嬉しみの愛情表現。 「じゃあ、決定ですね」 「その前にこれ、どうにかして」下半身を指差し、如月を睨む。 「ぇえ~~っ? それ私の責任違いますって~~」如月は面倒くさそうに睦月を見つめた。 「……如月、早くシて?」半分冗談半分本気。 「ふふ。何言ってるんだか」猫を撫でるように、顎の下を指先で触られた。  Tシャツの裾をゆっくり捲り、如月に見せてみる。まぁそのうち収まるし、何かしなくても別にいい。たまには如月を少しからかって遊ぼう。  如月はニコッと微笑み、睦月をお姫さま抱っこしたまま立ち上がった。 「え?」  身体がゆっくりと宙に浮き、ソファへ座らされ、如月よって脚が開かれた。 「あ……」  ま、まさか、今からおくちでしてくれるとか?!?! いいの?!?! ほんとに?!?! やだぁ~~もしそうなら嬉しいぃ~~っ! 想像するだけまたおっきくなっちゃう!!! はぁ~~っ。 「さ、いく準備しなきゃ」如月はう~~ん、と、背伸びをした。  え? イク準備? 俺がイク準備?!?! ななななな何する気?!?! ピンクのおもちゃ?!?! そのための開脚?!?! やだちょっと!!! どうしよ!!! 恥ずかしい!!! む、むりぃいぃ~~っ。はぁ。 「な、なななななんで脚を?」どきどきどき。 「え? その方が(ソファから)立ちやすいかなって」  立ちやすい?!?! た、確かに脚を閉じてるよりは!! で、でも…す、すすす既に立ってますけど?!?! これ以上もっと立たせると?!?! どんな技を俺にっ……。ぁあっ。 「……睦月さん?」  睦月は目を瞑り、両腕を胸の前でクロスさせ、言った。 「お、俺は……ぐちゃぐちゃに掻き乱され何度もイクようなことも既に準備は出来てるっ!!!」 「……………」如月の目は白く濁った。  もう心も体も準備出来てるっ。いつでも来いっ如月!! 薄目を開けて如月を見つめる。口を開けて固まっている。  あぁ、準備中ですか? はぁはぁ。あ、脚、もう少し開きますか? 如月さんっ。  睦月は開いてる脚をまた少し広げた。 「睦月さぁああん!!! あなたって人はーー!!!! なんでそうなるんですか!!!!」むに。右の頬が引っ張られる。 「いっだあーーい!!! ちょっと!!! 攻め方ちっがーーう!!! もっとこう甘くめちゃくちゃにじゃないの?!?!」如月の目を見る。あれ? 濁ってる。なんで? 「なんの話?!?! この話の流れでいつ拗れたぁあぁあぁあ!!!」左の頬も引っ張られる。 「痛い痛い痛い!!!! やめて!!! 拗れてない!!! 最初からそういう話だった!!!」 「んな訳あるかぁあぁあぁあ!!!!」ずりずり。如月は睦月の頬を引っ張りながら歩いた。  ほっぺ引っ張ってどこいくの? え? 寝室? 寝室に向かってる?! や、やだぁ。そんなこと言ってぇ~~もう、好きなんだからぁ。如月のえっちぃ。  バサ。目の前が暗くなる。 「早く着替えろぉおおぉおぉお!!!」脱がされた服が頭の上から次々降ってくる。 「ぇえ!! なにもう!!! こんなとこまで連れて来て!! 思わせぶり!!! 如月のえっち!!!」降って来た服を手に取り、着替える。 「えっちなのは自分の頭の中でしょうがぁあぁあぁあ!!! 睦月さんのえっち!! へんたい!! 脳内ぴんく!!!!」なっ……。 「そうさせてるのは如月だあぁあぁあぁあ!!!!」シャツのボタンを上からひとつずつ外している如月に正面から飛びつく。 「っちょっ!! ばかっ!! 危なっ!!!!」如月は少しよろけながら、睦月を受け止めた。  俺が無茶しても、両腕でしっかり抱きしめてくれる。大好き。ふと、視線を落とす。外れたシャツの間から見える、如月の白い肌。あ。おへそ見えちゃった。えっちぃ。  いきなり飛びついたせいか、シャツが肩から落ちるた。 「あっあっあっ……肩……む、むね……胸がぁ…はぁ…はぁ…」如月の体から目が離せない。このままシャツの中に顔を埋めてしまおうか。 「……み、見るなぁあぁあぁあ!!!!」如月は睦月と着替えをまとめて寝室から放り出した。ぽいぽいっ。 「ひっどぉ~~い……」  ふと我に帰り、冷静になる。  その場に腕を組みながら胡座をかき、座る。そして首を傾げた。馴染む、ねこみみにもはや違和感なし。  アレ? にゃにするんだったっけ?  ーーーーーーーーーーーー  ーーーーーーーー  ーーーー  *  ーー佐野家  結局、睦月さんが変なこと考えたりしたせいで、ぐだぐだぐだぐだして、どこかへ寄ったり、デートすることも出来ず、そのまま佐野家へ帰って来てしまった。 「おっそーーい!!!!」卯月さんが怒っている。 「ごめん~~色々やってたら、遅くなっちゃった」睦月が片手で拝むように謝る様子を少し離れて見守る。 「暑くて暑くて暑くて!! もうたまらん!!! 早くかき氷パーティーしよ!!」卯月は冷凍庫からボウルに氷を入れ、リビングへ持ちだした。  これでやっと、念願のかき氷パーティーを始めることが出来る。出かける前に睦月が切ったフルーツを、皿に並べ、机の上へ運ぶ。 「ぉお~~!!」  卯月の目が輝いている。歯磨き粉やハバネロとは全くの別物だ。睦月の隣に座り、かき氷機に氷を投入し、ボタンを押す。早くフルーツを乗せて食べたい。  ガガガガガガ  ふんわり雪のように積もるかき氷にフルーツをトッピングしていく。乗せただけではあるが美味しそう。 「お店みたいな華やかなかき氷になった!!!」卯月は嬉しそうにかき氷を受け取った。 「はい、どーぞ」睦月へかき氷を渡すと、ニッと笑顔を見せた。可愛い。きゅん。その笑顔に顔が綻ぶ。  ひとりひとつかき氷とスプーンを手に持ち、声を合わせる。 「「「いっただきまぁーーす!!」」」 「美味しぃ~~っ!!」目を細め、幸せそうに睦月が食べてる姿を見て、笑みが溢れる。自分まで、幸せな気持ちになる。 「あ、睦月さん、アレやらないとです」かき氷を掬い、睦月の口元へ運ぶ。これを理由に買ってもらったのだから、やらないと。 「はい、あーーんっ」ぱく。かわいいよ、もう。目の前に来たスプーンを食い気味で食べる睦月が可愛くて、なんだか照れる。 「……溶けるのめっちゃ早い……」卯月は顔を顰め、器を持って和室へ向かった。 「まぁ……暑いですからね」もう半分くらい溶けている。かき氷の器を机へ置く。  私も涼しいところへ行こうかな。卯月の後を追うように立ち上がる。 「え? ちょ、どこいくの? 俺もあーーんやりたいんだけど……」Tシャツの裾が掴まれ、引き止められた。 「いやぁ、暑いんで……また今度……」一刻も早くエアコンの下へ行きたい。 「ちょっと!! 何それ!!! じゃあ暑くない方法を考える!!」暑くない方法? 「と、言いますと?」    如月は首を傾けた。 「扇風機を持ってこよう」  睦月が洋室からごそごそと少し黄ばんだ古そうな扇風機を持ってきた。本来は白かったのだろう。コンセントを差し、電源を入れ、準備している。  ぴっぴっぴっ。最大風力。強。  ぶぉおおおお~~~~ 「あぁああぁあぁ~~~~~~」睦月は扇風機の前に座り、顔を前に出して、叫んだ。  扇風機の風で前髪が後ろになびいている。扇風機が首振りで動くと、睦月の顔も一緒についていく。かわい。  暑さを忘れ、身体は自然に睦月の元へ吸い寄せられる。  ぎゅう。  後ろから睦月を抱きしめて座った。 「なぁに? 暑いの嫌なんじゃないの?」薄い笑みを浮かべ、こちらを見つめてくる。 「これはこれでアリかもって思っちゃいました」睦月に顔を近づけ、扇風機を正面に固定した。  クーラーもいいけれど、扇風機も趣があっていい。強く設定された風が私の長い髪を泳がせる。  睦月と顔を見合わせた。言葉は要らない。口付けを交わし、穏やかに微笑み合い、一緒に正面を向く。 「「あぁあぁあぁあぁあ~~~~~~」」  黄ばんだ扇風機から鳴る、風切り音。年季の入った部屋には、ロボットみたいな2人の重なった声が響いた。

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