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第23話 自分の気持ちに気づいたけれど

 このまま籠城してやる! と思ったのにあっけなく布団を剥ぎ取られた。 「俺の布団返せ」 「お前、本当に可愛いよな」 「え?」  どこに何がツボったのか、ぎゅっと腕の中に閉じ込められる。彼の膝に座る形になった。 「さて、いっぱい鳴いてもらうぜ」 「あの、もう寝ない?」 「寝てていいぞ」  ですよね。駄目ですよね。  再開とばかりに首をくすぐられる。 「ひゃああああ」  ぞわぞわっと虫が這うような刺激が走る。 「おい。ラブホじゃねえんだ。あんまり大声出すなよ。俺は別に良いけどな」 「やああ、やめてやめて! ああ! やだやだぁ」  敵わないと分かっていても、身体は腕から逃れようとする。  相手は片腕一本なのにビクともしない。 「もおおおやめてッ! う、くすぐらないで……うぎゃひゃはははあは!」 「くすぐり嫌か?」  こくこくと頷く。 「つまり疼くから早く気持ちよくしてほしい、と?」 「前向き解釈ヤメロ!」  どすどすと肘打ちするが胸筋に弾かれている気がする。  わしっと胸を鷲掴みにされた。 「っ!」  声にならない悲鳴が出た。 「こうしてほしい、とかリクエストあったらその通りにしてやるぞ?」  浴衣の生地の上からくりくりと転がされ、ビクッビクッと身体は跳ねる。以前より、感じるようになってしまっている気がする。 「ああ! だめ……ああっ」 「なんだ? もう艶っぽい声が出てるな? そんなにここが気に入ったのか?」  顔を見なくともニヤついているのが分かる。  違う! と頭を振るも、「そうかそうか」と頷かれる。 「じゃあ、もっと弄ってやるよ」 「ん、いやぁ! やめてっ、やめ……くりくり、しないで、ぇ。ああん」  藤行の身体はすっかり快楽に慣れてしまったのか、じわっとソレが熱を持ち始める。 (うそだろ……?) 「はっ。楽しいなあ? 藤行?」  何度も指先で摘まみ、やさしく引っ掻かれ高い声が出る。まだ浴衣越しに触られただけなのに。 「も、やめ。……む、ねばっかり、やだ……」 「んー?」  伸一郎はバス内で使用したローターを取り出す。 「俺はまだ胸弄っていたいから。下はこいつに遊んでもらえ」 「ちょ」  浴衣をめくられ、下着の中に手を突っ込まれる。 「おいおい。もう濡れてるぞ」 「あ、あ……」  ソレにローターを巻きつけられ、手は無情にも下着から出て行く。 「ろ、ローターって、い、痛くないの?」 「初めはすげー弱めにしてやるから、安心して感じてろ」  スイッチを入れ、テープで括りつけられたローターが振動を始める。 「……? ……ぁ、……ン、ふるえて……る」 「そりゃよかった。じゃ、こっちも可愛がってやらねぇとな」  衿から手が入り込んでくる。  乳首ではなくその周辺をくすぐられ腰がくねる。 「んあっ、やめ、そんな……たえられな……あ、アッ」 「まだ弱だぞ。頑張れ」 「うう、ああっ! やめてぇ。くすぐ、らない、でぇ……」  二か所で異なる刺激にじわじわと高められていく。 「う、あ。しん、伸一郎さ……ああ!」 「弱も飽きてきただろ。中にしてやるよ」 「あっ、やだ! ……んんんっ」  彼の手元でかちかちっと音がして、ローターが更に勢いよく震え出す。  ブゥーー。 「やだ! あああ、やだ、アッんあああ、ひいぃ」  がくがくと身体が震える。つま先がぴんと伸びる。 「もうイきそうになってんのか? でも、中程度じゃイけないだろ」 「はあっ、ああ、ああ。んう! とめ、やあ、っあ」 「はい。お口開けてー」 「んん……」  指二本を口内に押し込まれる。  それらがバラバラに動き出し、口内、胸、下半身をそれぞれ犯される。 「……あはっ、はあ、くううっ、う」 「ほら。もっと指しゃぶれ」 「はあ、ん、ちゅば、ん、ちゅ……」  快楽に支配される藤行は、彼の言葉に逆らえない。太い指に舌を絡ませ、必死に吸いつく。 「おー。エロいエロイ」 「ん、んっ……。あ、ん、もお……ん、ん」  きつめに乳首を挟まれ、目を見開く。 「ぎっ! んん。あ、ん、ゃあ」 「おい。指舐めるのやめていいなんざ、言ってねえぇぞ?」 「あ、ん。ごめ、なさ……」 「謝ってる暇があるなら、舌動かせ」 「ん……ん」  ちゅぱちゅぱと卑猥な水音が響く。口内をかき混ぜられたせいで、唇の端からだらしなく唾液が垂れる。だが藤行はそれに気づいていないようなとろんとした目つきで、犬のように舌を這わせる。 「はっ。お前の舌真っ赤だな。俺専用にしてやりたい」  強引に顔を持ち上げられ、唇に噛みつかれ呼気ごと奪われる。 「ふっ? ふぅ……っぅう」  息苦しさに身体が震えるが、ローターが与える快楽とごちゃ混ぜになり、頭がぼうっとしていく。  唇が離されるが、藤行の舌は名残惜しむかのように彼に向って伸びる。 「ん、もっと……」 「ふっ。可愛いな」  そっと重ねられる。欲しがれば応えてくれる。酩酊じみた、どこまでも甘いキス。  頭を撫でられ、心がとろけていく。  ああ。  俺は、この人のことが 「……っ、く」  でもそれは声に出せない。付き合う関係を望んでいない彼に言って。もし、捨てられてしまったら―― 「んぐっ、ンぐ……」  ぎゅっと彼の浴衣を握りしめる。  離れたくない。捨てられたくない。  忘れられたくない。  少しでも彼を取り込みたくて、自ら舌を絡め、唾液を飲み込んでいく。 「んく、んく……」 「……?」  情熱的な藤行に、伸一郎の頬がわずかに朱に染まる。 「ん……伸一郎、さん……」 「なんだ?」  彼の声が少しだけ優しくなったような気がした。  藤行は恥ずかしそうに顔を背ける。 「い、……」 「聞こえねーよ」  優しく顎を掴まれ、目を合わせられる。羞恥と愛おしさが込み上げ、心がきゅっとなる。 「……い」 「はっきり言え」 「イ、きたい。もう……我慢できな、あ」 「ふーん」  ぴらっと浴衣がめくられる。下着はぐっしょりと濡れていた。 「おいおい。漏らしたのかってくらい、びっしょびしょだな」 「……っ! イきたい。イきたい、よ」 「ははっ。イけないって苦しいだろ? もうちょい我慢しな」  どうして? イきたいのに。恥ずかしいの我慢して言ったのに!  イかせてもらえず。かといってイくことも出来ないのに、ローターは責め立ててくる。 「あっ、あん。あっ、あ、あ」 「気持ち良さそーにビクビクしちゃって」 「ど、うして? はあっ、あん。あ、あん。イかせて……くれな……あ、う」  伸一郎は下着と生足を露出させた藤行を抱いたまま、じっくりと表情を堪能してくる。 「うあ、あ、見な、いで、よ……」 「顔を隠すな。手は胸の上に置いとけ」  素直に言うとおりにする藤行の髪を撫でて褒める。 「ははっ。気持ちいいか?」 「……ぅ」 「答えろ」  耳の横で言われ、びくっと肩が揺れる。 「ん……。きもち、いいけど」 「あ?」 「伸、一郎さん、に。さわって、ほしいよ……」  伸一郎は不意に顔を背ける。あれだけこちらを見てきたのに。 (あ……)  彼の耳は真っ赤だった。  嬉しくなった――と同時に胸が締め付けられる。  そんな反応しないでよ。勘違いする。嬉しく思ってしまうだろ。  伸一郎はやっと藤行を見た。にやけそうになる顔を無理に押しとどめようとするような。引きつった笑みを口元に浮かべて。  照れ隠しなのか、横たわせた藤行に跨ってくる。 「……言ったな? 藤行。この状況で俺の理性に喧嘩売るとはな……。乱暴に出来ないのが、悔しくて仕方ないぜ」 「あ、あ……伸一郎、んっ、あ、さん……。いい、よ? 乱暴に、アッ、しても」 「ほお? 良い度胸だ」  下着を剥ぎ取られる。  すでに濡れててらっている藤行のソレは、外気に触れるとひんやりと冷たい。 「あっ、あん。あ、あ、あ……ローター……とめ、て、あ、う」  声を押さえるためにがりっと指を噛むと鈴口をピンと弾かれる。 「うあっ」 「噛むなっつったろ? これでも噛んでろ」 「んぐうっ⁉」  口に何かが押し込められる。 「んっ! うっ、う」 「ははっ。似合ってるぜ? パンツ銜えている姿。吐き出すなよ?」  あろうことか藤行の下着を丸め口に埋め込んだ。じわっと己の汁の味が口内に滲む。青臭いし不味い。  それなのに。雑に扱われたと言うのに。いや、雑に扱われると胸がキュンとして、先端からさらに蜜を零す。 「ンッ、ん……う、うう」 「どこで興奮してんだよお前はよ……。ま、いいわ。そういう意味不明なところも好ましいと思ってるから」  どんな自分も受け入れてくれる。膝をM字になるように立てられ、恥ずかしい姿を晒しているというのに。穴は彼を求めてヒクついてしまう。  指を濡らすためかソレを根元から指先で撫で、蜜を指に絡めていく。 「いっ、ぃう、ン! ン、んう……」  伸一郎に触れられている。そう思うだけで一層気持ち良くなる。でも、熱を放てない身体は苦しくなるばかりだ。 「指入れるぞ?」 「ん……」  こくこくと頷く。早く、と言わんばかりに下半身が疼いてしまう。  垂れた蜜が穴を濡らし、彼の指をすんなりと飲み込む。つぷっと指先が入り、ビクッと大きく背中が跳ねた。 「んんっ……! ん、ん、んうぅ……ッ!」 「拡張させてねぇからきついな。こら。力抜け」 「はぐ……ぐう……ふう、ぅ」  振動する玩具も密で濡れて、いやらしい光沢を放っている。そのせいでテープが緩んだのか、ローターがずり落ちてくる。 「んんっ! んあああ、ああっ、ぐう」  ゆるやかにずり落ちていくローターの刺激に、射精を求めてくねくねと身を捩ってしまう。 「あーあ。そんなに汁をとろとろ出してるから」  しかし彼はローターを強にはしてくれない。イけない程度の刺激がすっと与えられる。 「いううっ、んん! んおおっ」  彼の名を呼びたいのに。下着が邪魔をする。  長い指で穴の中をかき混ぜられ、ぬちゅぬちゅと空気の混ざったスライムを潰すような音がする。静かな部屋で耳も犯されているような気持になり、ナカはさらに彼を求めるように蠢く。 「そんな吸いつくなよ。お前の気持ちいいとこはここだろう? でも今はお預けな?」 「ううっ、うう!」 「だって今夜はながーく楽しむ予定だからな。最悪、イけないと思っとけ」  じわっと涙が滲む。  吐精できない苦しさ。与えられる快楽。それらがコーヒーとミルクのように、藤行の心で解け合う。  こんな状況がずっと、一晩も続いたら。果たして自分はどうなってしまうのだろうか。  藤行が変になっても、目の前の男は多分責任を取ってくれない。 「うっ」  たまらず起き上がろうと身を起こすも、身体を動かしたせいで指先が良い所に当たってしまう。 「ひぐっ!」  目の前がチカッと光り、頭はぼすんと枕に戻っていく。 「んん、ん……。ぐう。う、うう……」  かたかた震える藤行に、伸一郎は深く指を入れたまま耳元で囁く。 「かわいそーになぁ? 自由に動けず、声も出せない。お前の身体は俺の玩具なんだよ。押したら音が出る玩具みたいに、せいぜい鳴けよ」  ちゅっと、額にキスを落とされる。 「ん、ん! うう、ぐう」 「良い表情だなオイ。つーか、逃げられると思ったのか?」  冷たい彼の声。  ぐちゅぐちゅとかき混ぜられるナカ。吐き出された蜜が腹まで濡らす。  強引に帯が引き抜かれ、ぷっくり膨らんだ乳首がさらけ出される。 「はっ。いいねぇ。写真撮っておいてやるよ」  虚ろな目から涙が落ちる。  この後も何かされたようだが、藤行は何も考えられなくなっていた。

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