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2.Idiot~名前

 静かになった空間で、男が言ったそれは名前だっていうことはすぐにわかった。  だからオレは、右手人差し指をズイッとヘサームに向けた。  だって、こいつ、正真正銘の阿呆だ。 「……おまえ、ほんっとに馬鹿だな!!」  ヘサームは、オレが何を言っているのかわからないという顔をしている。 「だあああああっ、もうっ!! 名前は親が付けてくれる、自分にとって意味がある大切なものだろう? 刃物やらが普通に飛び交う、こんな物騒な世の中なんだぞ? 出会ったばかりの奴に、ホイホイと軽々しく自分の名前を口にする奴があるか?」  バッカじゃねぇ?  そういう気持ちで、両手を腰に置き、怒鳴った。  だけどさ、相手が名前を名乗ったのに、自分が名乗らないのは不作法だよな。  しかも、相手が命の恩人なら尚のことだ。  だからオレは、静かに口を開いた。 「……アティファ」

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