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2.Sell~人買い

宮殿に住んでいる王も――。 王に仕えている兵士たちも――。 だいっきらいだ!! 大嫌いな奴らのことを考えただけで、さっきまであった穏やかな気持ちは、少しずつ、確実に消えていく。 そして、オレの頭から、ヘサームのことがすっかり消え去った頃――。 気がつけば、オレは家にたどり着いていた。 家といっても、立派なソファーがあったりとか、応接間があったりだとかはしない。 あるのは玄関と呼ばれる扉と、自分たちが眠る部屋の、ただそれだけだ。 オレの家は、赤茶色をした、粘土で作られた壁のレンガには大きな亀裂が入っているし、今にも崩れ落ちそうな天井があるばかりだ。 それでも、オレたちには、『家』と呼べる場所がある。 ココ、スラム街に住んでいる連中の中には、『家』すらも持てない人々もいるんだ。 そう考えると、オレたちは、まだマシな方だといえる。

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