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第9話
俺と……
執事さん……
ふたり
俺と〜?
執事さん〜?
ふ・た・り
「エェェエエエーッ!!」
ちょ、ちょちょー!!
待ってくれ。
「秘技・国語辞典」
勇者装備には国語辞典が付いている。
えっと、たちつてと……
(あった)
トキメキ……
「トキメキとは、胸がドキドキする事である」
胸がドキドキ。
俺も胸がドキドキするけれど。
(このドキドキはトキメキではない。断じて絶対)
「ヒイロ様」
「ひゃい!」
このドキドキは紛れもない!生命の危機だ。
「ヒイロ様は、私めを好きだと言って下さいました」
「ちょっと待って。俺が言ったのは……」
顔がきれい→顔だけが好きじゃない→(中略)→ひっくるめて……
好き。
(言っているー!)
好きって言っちゃているー!
いやいやいやいや!
好きは好きでも、
「LOVEじゃない!」
「らぶ?……らぶとは何でしょうか?」
そうだ、ここは異世界。異世界ゆえに、時々元いた世界の言葉が通じない。
「美味しいのでしょうか?」
「……美味しくはないです」
「では?」
「えっと。う〜」
どう説明すれば……
「それでは、ヒイロ様がお考えをまとめていらっしゃる間に、私から少しよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「初めてなのです」
闇の中、柔らかな光が帯びた。
「初めて好きだと言われました。私を好きだと仰って下さったのは、ヒイロ様、貴方様だけでございます」
「その好きなんですが」
細めた黒曜の玲瓏の優しさに、俺は言葉を止めてしまった。
「私はずっと孤独でしたので、ヒイロ様の想いに救われました」
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