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第148話

「そんな……」  相国の言う事が確かなら、広間にいるこの場の全員が幻術にかかっている。 「それでも、お兄様を助けないとッ」 「なりません、勇者様!」 「たけどッ」 「陛下との約束をお忘れですか」  俺はこの線から外に出てはいけない。だが、そんな事を言っている場合では。 「我々とて助けたいんです!」 「兵士さん……」 「近衛兵団全員が同じ思いです。しかし今、不用意に動けば、相国の新たな幻術にかかる可能性があります。そうなれば、陛下を我々が傷つけてしまうかも知れません」  ぎゅっと兵士さんは拳を固めた。 「相国の幻術は強力です。対抗できるのは、この中で最も魔力の高い陛下のみです。だからこそ、短慮で陛下の集中力を削いではならない。我々の心は一丸となって、陛下と共に戦っています」  一歩、線から足を下げた。 (勇者なのに.…..)  俺は…… 「無力じゃないですよ。諦めない限り、力になります」 「そうですね」  一つ頷いて、視線を上げた。目の前で、お兄様が戦っている。  諦めない限り。  加勢のチャンスは必ずやって来る。  諦めるには早い。  腕も、足も動かない。  だが。  指だけを動かして、お兄様が法印を描いた。  印が青く光った。 「解呪《ディスペル》」

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