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第157話
騎士の咆哮が広間を揺るがす。
朱獅子隊の穂先の炎は既に消えている。だが。
「……焼き払うぞ」
朱の布が巻かれた隊長の槍が振り上がった。
側に控える二人の副隊長の槍も振り上がる。
魔力集中。
三人の魔力を凝結し、穂先が輝いた。
火種だ。
結界を破壊した、次の攻撃を彼らは描いている。
火種を放り込み、相国を骨まで焼き払う……
絶対神域は強力無比な分、失敗すれば術者への反動も強大だ。
勝機はある。
(でも……)
だったらなぜ、相国は諸刃の大技を繰り出したんだ?
出さざるを得ないほど、追い詰められた?
ほんとうに?
(いや)
ブンブン
かぶりを振った。
今はそんなこと考えない!
(信じるんだ)
勝利を呼び寄せるために、
(騎士団の勝利を!)
「光輝炎断」
消滅した筈の炎が、騎士達の穂先に宿った。絶対神域で消された筈なのに、どうして?
ガキンッ
あれは魔力の火じゃない。
互いに騎士同士、槍を交差させて打ち合う。その時に生じた火花だ。
間髪入れず、火花の散り、赤く閃いた槍を結界に突き刺す。
「続けェーッ」
二弾目の槍を結界に突き刺した。
結界に歪みが生じた。
「今だ!」
号令が轟く。
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