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第40話 清side心臓に悪い

 温泉へ向かう玲の後ろ姿を見詰めながら、俺は三浦達と歩いていた。ずっと玲に執着していたはずなのに、今はそばに居るのはヤバい気がしていた。玲の裸を見て俺の身体が反応したら、本当に洒落にならない。社会的な死だ。  箕輪達と腰にタオルを巻いた玲が、温泉の入り口へ消えるのを残念の様な、ホッとしたような気持ちで見送った。そんな俺の油断が、玲を変な男につけ込ませることになったことに、後になって後悔することになるなんて思いもしなかった。  箕輪達に玲が露天風呂に居ると聞いて、出入り口から顔を出して声を掛けた時の、なんとも言えない違和感に俺は眉を顰めた。少し焦った様な玲が、動揺しているみたいだったからだ。  一緒にジャグジーに入ろうと誘われて、ジャグジーなら多少身体が動揺しても泡で見えないかと、少し弾む気分で一緒にジャグジーを楽しんだ。そこで明かされた玲への痴漢の事実に、俺は愕然としてしまった。  俺が玲から目を離したばかりに、危ない目に遭ってしまった。きっと玲の言う様に、あいつはもう居なくなってしまっただろう。俺が後悔で悔しさを噛み締めていると、玲は湯の中の俺の手をぎゅっと握ってにっこり笑って言った。 「ふふ、キヨくんの方が凄く怒ってて、僕が怒る必要ないみたい。今度は変な人について行かないから。ね?」  やっぱりおっとりした所のある玲が痴漢について行ってしまったのだと、俺はますますため息をつくしかなかった。  裸の玲が隣にいても、痴漢騒動でそれどころじゃないし、玲が無防備に俺の手を握って来るので、ますます心配になって、俺はドキドキする暇がなかった。何だか想像していたのとは違う…。  それでも、俺のせいで逆上せたと文句を言いながら俺の前を行く、身体をほんのり赤くした玲の背中に妙にザワザワしてしまった。はぁ、やっぱり玲と風呂めぐりをしなかったのは正解だったみたいだ。  更衣室では、ロッカーが少し離れていたので、俺は妙にドキドキする必要もなく着替えることが出来た。鏡の前で髪をドライヤーで乾かしていると、玲が上半身裸でこちらへやって来た。どうして裸なんだ。俺の努力を無にしようとする玲を思わず睨んでしまった。 「着替えてから来いよ。」  思わずぶっきらぼうになってしまった俺に、玲は赤らんだ顔で言った。 「さっきジャグジーに浸かりすぎたせいで熱くて。とてもじゃないけど服なんて着れないよ。」  そう言いながらタオルで髪をゴシゴシ擦る玲の、チラチラ覗く胸の印が妙に赤く、いやらしく思えて、一気にドキドキが高まってしまった。ああ、俺の努力が一瞬で無に返してしまった。冷静になれ、俺!みんないるから!
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