166 / 689

23

             どうして僕は、中途半端なオメガ男性として生まれたのだろう。…どうして僕、男に生まれたのだろうか。僕はもう、それに何の意味もないと知っている。  どうせ男性器を受け入れるためだけの種族のくせに、と罵られ――他の種族には、おまけ程度の男性器と睾丸、不要の付属物なんて言われてしまう、ソレら。    しかも僕は、あまつさえこんな見た目だ。  普通のオメガ男性ならもっと可愛くて、綺麗で、愛されて――少なくとも、図体ばっかりデカいブス、なんて言われなかったのだろうに。    それでも僕は、自分のソレらをいらないとは決して思わない。自分のことを、本気ではブスだと思わないようにしている。――むしろ本当は、自分の男性器も睾丸も人並みにきちんと大切に思っている。……それでも僕は、もう確かにメス奴隷の体だ。…それに、人に好かれない見た目であることももう、よくわかっている。   「……んっ…ふぅ…、…ぅ…♡」    ソンジュさんの手が、僕のうしろ髪を指でやさしく梳いて撫でてくる。――それでいてもう片手は僕のうなじを掴み寄せ、逃さないと強く固定される。  彼の熱く、少しざらついた舌と僕の舌が、僕の口の中でくちゅくちゅと音を立て、ねっとりと絡み合う。   「んっ……はぁ、♡ ぁ、んん…っ♡」    重たく響くようなゾクゾクとした甘いしびれが、僕の腰を小刻みに震わせる。――とろ…と僕の膣から溢れてきた愛液が僕のお尻の割れ目を濡らし、僕の下着を濡らしている。――べっとりと濡らしている。――このキスで濡らしているのだ、僕の汚れた体を、いやしくも。   「……ん…っ♡ んん…ん…♡」    ――好き…、好き…僕の耳を撫でるこの大きな手、僕の唇を食む柔らかい唇、…離れると、僕を熱っぽく見てくる、うっとりとした切れ長の間に妖しく輝く、その水色の瞳。   「…はぁ…、は……」   「……ふふ…、エロい顔してる…」   「……は……、…は…」    好き…駄目、だめ、すき…膝が抜けそうなほど下腹部がひくひくして、腰がくねり揺れてしまう。――このまま抱いて、犯して、めちゃくちゃにして、僕におちんちん挿れて、と、ゆらゆら、ゆらゆら。――浅ましく。   「……っ」   「んっ…」    僕がパッと噛み付くと、ソンジュさんは驚いたようだった。――僕は彼の髪を掻き乱すように、その人の後頭部を、彼の耳をぐしゃぐしゃに揉む。…迷惑にそうしながら、ソンジュさんの肉厚な唇を強く、何度も何度も食んで貪る。   「……、…ッ、…ッ、…」    違う、…好きじゃない、好きじゃない、好きじゃない、絶対好きじゃない…――心配いらないようだ。  僕はきっと、そろそろ迎える次のオメガ排卵期で――ソンジュさんの子供を孕むことができる。…彼もこの調子なら、きっと僕をじきに抱いてくれることだろう。   「……、……――。」  そのときはこう言うつもりだ。――『責任は一切取らなくて結構ですから。決してご迷惑はおかけしません。そのように誓約書を書いて誓っても構いません。…ですから、僕を妊娠させてください』と。  正直あまり意図していたつもりはなかったが、僕はソンジュさんの誘惑に成功したようだ。    問題ない。  これなら本当に、問題なく妊娠できる。      僕は、妊娠しないといけないのだ――。           

ともだちにシェアしよう!