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                   くちくちくちと絶妙なテンポで、絶妙な力加減で僕のモノを扱いてくるソンジュさんの、その手首を掴んだ僕は、   「…あ、♡ あぁやめ、♡ …やめて、だめ……、お、おかしくな、…なってしまう、……」    うなだれ、低くそう呟いた。  何も媚態だとか、扇情の目的でそう言ったわけじゃない。――おかしくなる、と言われて唆られる男はいくらでもいるのはそうだが、…僕はこのままだと、()()()()()()()鹿()になってしまいそうなのだ。  すると僕の耳元で、ソンジュさんは低くこう囁いてきた。   「…おかしくなればいいじゃないか…? ユンファがボロボロに壊れてくれれば…俺無しではもう、生きてゆけなくなるものね…? ぶっ壊れろよ…壊れろ、壊れろ壊れろ壊れろ……」   「…ぁ…っ?♡ …ぁぁ、♡ ぁ…♡ ぁ、♡ ぁ…っ♡ らめ、…なの、に……っ」    ぐちゅぐちゅと速く激しく扱かれると、泣きそうなくらい、…きもちいい…――ソンジュさんのその低い声すら快感となり、ゾクゾクと背筋が震えて粟立った。  僕は逃げ腰になって腰を引くが捕らえられたまま、…触れられてもいない乳首が、かゆいくらい敏感になっている。…バスローブのややザラついたタオル地に、身じろぐたびに擦れる乳首の先、すると勝手に、ビクッと体が反応してしまう。  なけなしの抵抗に、僕自身を扱くソンジュさんの手首を掴んだままなのだが、ぐちゅぐちゅと全体を扱くその手の動きは止まらない。――力では優るはずもなく、なんなら今の僕の力は、女性よりも弱いかもしれない。   「…ぁッ♡ んぁ…♡ ぁ、ぁ…?♡♡ ち、くび…までぇ、や…ァ、〜〜〜ッ♡♡♡♡」    バスローブの隙間から手を差し込まれ、乳首の先をくにくにされると、僕はビク、ビクンッと反応してしまう――ソコからの快感が直に感じるほど、自身にビリビリと送り込まれてゆく――。…僕の頭に反して、体は“ずっと触ってほしかった”と喜んでいるみたいだ。  僕の体からはもうくったりと力が抜け、すっかり背後のソンジュさんに身をゆだねてしまっている。  駄目だ、と立ち上がろうとして、ソファのヘリを掴むが、――腰が、脚が震えて力が入らず、できない。   「…可愛いな…ユンファ、おちんちんばっかりかと思ったら、乳首もこんなに硬くなってるよ…? 乳首もいじめられるの、大好きだものね…ほら、気持ち良い…?」   「…は、♡ うぅ…♡ ぅぁぁ…♡♡ ぁぁ…♡ ぁぁぁ…♡♡」    自身をめちゃくちゃに扱かれながら、乳首の先端をピンピンと弾かれ、くにくにと先端に指を着けて回されると、もう情けない声しか出ない。――腰が勝手に、前後にくねっている。…駄目だ、やめろ、と頭では思っているというのに…物欲しげ、もっとして…と、いやらしく揺れてしまうのだ、自分の腰が。   「…もう苦しいよね…、パンツ、脱ごうね……」   「……ふぁ…♡…あ…♡」    する、…ずる、ずるるっと脱がされ、下ろされてしまった下着、それにすら感じて…ボロリと飛び出てきてしまった熱いモノが、ピトンッと僕の下腹部に触れる。――そして、思わずもれ出た甘ったるい自分の声に下唇を噛み締めた僕は、自分のソレを見たくないと顔を背けながら俯いた。   「…おちんちん反り返っちゃってる、ふふ…――ショックだね…? 嫌なのに…駄目なのに…ね。」   「……ッ、…ふ、…ッ」    その通りショックで、僕は悔しくて泣きそうである。  込み上げる嗚咽を噛み殺し、それでも泣くものかと堪えているが。  抜けていない僕の脚を拘束するように膝下で留まった下着、ソンジュさんは片手で僕の上体を押さえ、血まみれの手のほうで僕の勃起をぐちゅぐちゅと、激しくも絶妙な力加減でしごいてくる。   「俺の血、ユンファのおちんちんに塗り込んであげるね…」   「……ふ゛…っ♡ グ、♡♡ ……〜〜〜ッん゛…♡♡」    するともう僕は、前にかがむほど感じてしまう。  正直もう、…イきそうだ。――するとソンジュさんは、どこか楽しげでありながらとぼんやりと、こう囁いてくる。   「…ユンファ、もうイきそうなの…? おちんちんがかたーくなってきた……」   「……ッあ、♡ はぁ、…ちが、…ぅク、♡♡ 〜〜ッ♡♡」    僕は下腹部と自身を強張らせて、違う違うと必死に(かぶり)を振った。…とにかくこの激しくも絶えず与えられる快感に耐えて、息を詰めている。――これでイってやるものか、と意地になっているともいえる。   「…貴方って本当、狡い人…――また嘘を吐くのだね…憎らしいくらい賢くて、気高い…やっぱり貴方は銀狼(ぎんろう)だ…、だけれどね……」    ソンジュさんは僕の乳首の先を、ぐりっとすり潰し――自身の的確な場所を、速く激しく扱きあげてきた。   「……ふ゛…っ♡♡♡ …〜〜〜ッだm…ッk、♡♡♡」    なかば乳首をそうされるのが、()()()()となっている僕は、結局…抵抗虚しくソンジュさんの手の中で爆ぜた僕自身、久しぶりにソコでの刺激でイった僕は、その射精に頭が真っ白になる。   「は…っはー…♡ はー…♡ はー……♡」    うなだれた先――自分自身の赤らんで艶めく鈴口から、ぴゅく、ぴゅ…と勢いの弱まった白濁が吹き出る様を、まじまじと見留めてしまった。   「…()()()()()()…貴方が逃げ回れば逃げ回るほど、俺は…執拗に貴方を追い掛け続けたくなる…狼なのですよ、ねえユンファ…ふ、ふふ…――たとえ、またユンファが俺の元から逃げ出したとしても…ユンファが世界の何処にいようが、関係ない…、俺たちはまた自然と惹かれ合い、必ずまた出逢うことになるでしょう…。それが、()()()()()()なのですから……」   「……は…、…はぁ……」    カリ…チョーカーのタンザナイトを一本の爪先で掻いて示したソンジュさんの声は、いやに艶めかしくゆったりとしている。…ソンジュさんのそのセリフを耳元で聞いた僕は、ぞくんっと腰から上を震わせた。  そして、彼は後ろから僕の腹をぎゅうっと抱き締め、うなだれた僕のうなじにこう、生暖かい吐息を吐きかけてくるのだ。   「…貴方を射止めるまで…この白いうなじに噛み付くまでは、どこまでも…逃げ回る貴方を、どこまでも…どこまでも…永遠に、追い掛け続けてあげる……」   「…っは、…ク……ッ」    眉が寄る。  マーナガルム…北欧神話、月を喰らおうと――永遠に月を追いかけ続けている、魔狼。      無理だと、虚しくさえ思う。  もはや逃げる意味なんてあるのだろうか。――僕はいずれ、その狼に喰われる運命(さだめ)だというのに。     「…………」      僕は憮然として霞んだ()を、力なく伏せた――。           つづく

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