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第1話

夏真っ盛り、魔法学科の生徒にもサマーバケーションがやってきた。 全寮制のこの学園では、寮が閉まる。 実家が帰るには遠い生徒や訳あって帰れない生徒のために、1か月前までに申請を出せば残れるのだが、実家帰省を嫌がるテルロはすっかり忘れていた為渋々実家へと帰ることになった。 「っくそ、1ヶ月前なんて早すぎだろ…」 寮の部屋で荷造りをしながらボヤくテルロ。 それを横目に見ながらも手伝うことをしないノンチ。 ノンチが手伝わない理由はテルロに「余計なことすんな」と言われるのが分かっているから。 だからノンチはテルロを気にしながらもソファーに座り大人しくしていた。 「ねーテルロ。何でそんなに家帰んの嫌なの?」 ノンチは暇を持て余し気になっていたことを尋ねた。 「…ぁあ?んなもん嫌に決まってんだろ」 「普通家に帰れるって喜ぶもんじゃん?テルロだけだよ?」 そう、この学園で帰省を嫌がってるのはテルロだけなのだ。 ノンチを含め実家へ帰る子は皆、久しぶりの家久しぶりの家族に胸を躍らせている。 テルロはここ数日その様子を見ながら眉間にシワを避けていた。 「人の家には人の家の事情があんだよ。ノンチには分かんねぇだろうけどな」 「んー、詳しく分かんないけどさ!折角なら楽しめば?」 「は?楽しめる訳ねぇだろ。小言聞いて文句言われて…」 はぁ、と溜息をつきながらテルロは荷造りを止め、ノンチの隣に座りそのまま抱き着くかのようにノンチを腕の中に納めた。 「そもそも俺らの家遠いだろ。離れるとか意味分かんねぇ」 「テルロ、実家がどうのこうのよりそっちが嫌なんじゃん」 そう言いながらノンチは大人しくテルロの腕の中でふふっ、と笑った。 「連絡は出来るんだから問題ないっしょ。もしかして寂しい?」 ノンチは冗談交じりでテルロに問う。 冗談交じりだと分かっていながらも的確な答えにテルロは内心焦りながらもノンチの首元に顔を埋め、数秒経った頃にまた荷造りに戻った。 テルロの荷造りもほぼ終わりを迎えた頃、タイミングを見計らったかのように迎えの者がやって来た。 「テルロ様!お迎えにあがりました!!」 チッと舌打ちをしながらも荷物を従者に渡し「先に降りとけ」と呟く。 それをきちんと聞き従って従者は「下でお待ちしております」と頭を下げ足早に去っていく。 それを見届けたテルロはノンチを抱き締め、別れを惜しむ。 「浮気したら許さねぇ」 「ははっ、する暇なんかねーよ!」 「…連絡する」 「ん、待ってんね」 ノンチからチュッとキスをした。 離れ難いテルロはバードキスを繰り返す。 そのまま首筋へと降り首元に吸い付いた。 丁度シャツの襟で見えるか見えないかの微妙なライン。 「っちょ、やめろよ」 とノンチはテルロの頭を離そうとする。 「2週間だぞ?んぐらい良いだろ」 ムスッとしながらも素直に離れ、チュッとキスをし「行くわ」とノンチに背を向け歩き始めた。

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