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第13話鎌倉旅行1日目終了

3人は江ノ島岩屋を出て、元来た道を引き返し歩いていた。 日が西へと傾き徐々に気温も下がりはじめていたが、海でビショ濡れになった卓のズボンの裾は乾きはじめていた。 帰りの景色は来た時とはまた違った景色であり、新しい発見がたくさんあった。 道中、遼は 「今日は鎌倉駅まで戻ったら、解散かな?」 と2人に尋ねると、海斗から 「そのことなんだけど…今日近くの旅館を予約してて3人まで泊まれるんだよね。遼とは初めて会うからさすがに1泊2日は誘いづらいなぁと思ってたんだよ。だけどさ、思ったより意気投合したから、もし良かったら3人で明日も鎌倉で遊ばない?」 と遼の顔色を伺いながら聞いた。 「明日予定ないから、まぁ俺は良いけど、今晩推してる海外のサッカーチームの試合があるから中継みたいんだよなぁ」 遼は、渋りながらそう言った。 そういえばと思い出しながら卓から 「あれって、スマホで見れなかったっけ?」 と遼に伝え 「まぁ見れない事はないんだけど…」 遼の顔に卓は察した。 「あっ。そっか。一人で集中してみたいのか」 「まぁそんなとこ」 「それって何時からなの?」 と海斗は聞くと 「21時から23時位かな」 「じゃあその間、俺と卓は外出てるよ。近くに海があって散歩が出来るみたいなんだよね」 「夜の海の散歩楽しそう!俺は全然良いよっ!」 と卓は海斗に賛成した。 遼は、少し考える様子を見せた。 「まぁ、なら良いか。じゃあ泊まるか!」 遼は色々考えてめんどくさくなったのか、泊まることにしたのだった。 遼は決断にとにかく時間がかかる。 卓の様に感覚に生きてる人間とは違い深く考えてから行動するタイプの遼は、なんでもすぱっと決めていく卓と一緒にいるのが楽だなぁと感じていた。 今も着替えの事や、気まずくはないかとか色々考えていたが、いつも考える量が多い時は周りに流していた。そのため遼はよく“自分が無い”と言われることが多かった。 泊まることが決まり、江ノ島を後に3人は本土へと続く橋へと差し掛かった。 「丁度、旅館は江ノ島駅から歩いて5分位の所にあるんだよねっ」 歩きながら海斗は2人に説明した。 海斗の用意周到ぶりに2人は気づいていないが、鎌倉に行くと計画した時点で、現地の事を一通り調査し、あらかじめ江ノ島近くの旅館を予約し、そして当日江ノ島に行く流れを作る。 自由奔放で我が道を行くように見せかけて実は、色々と練り込んでいくところが彼の凄い所である。 海斗の後を遼と卓はついて歩き、やがてたどり着いたのは素泊まりには贅沢なホテルのような旅館だった。 「今日泊まる旅館はここだよ」 「すげぇ!ここに1人で泊まる気だったの?」 「俺も民宿みたいなものかと思った。海斗は1人でここに泊まろうとなんてリッチだな」 卓も遼も鈍感なので全く気付く様子もないが、あえて言うと1人で泊まる気などさらさらなかった。 旅館のロビーにて受付を済まし、3人で割勘し代金を払い、部屋に向かった。 部屋は和室になっており10畳ほどの広さだった。 中心には丸机がおいてあり、海が見える奥の広縁(縁側の広い版)には1卓の机を挟むように2脚の椅子が並べられている。 「良い感じの旅館だねっ!気持ちいい!」 卓は、部屋に入るなり荷解きもほどほどに畳に横になり体を伸ばした。 海斗は旅館に向かう途中に買ったお菓子や、飲み物を机に置いて一段落ついた。 「あーっ疲れた!今日はたくさん歩いたからなぁー!」 遼はそう言いながら卓を横目に畳に腰を下ろし足だけを伸ばした。 「みんな足伸ばしてるとこ悪いけど、飯食いに行かない?近くに美味しい魚介系のラーメン屋さんがあるって受付の人言ってたし」 「そうだなぁ。行くかぁ!根っこ生えてきちゃうし」 と遼も立ち上がった。 「あー。だめだぁ立ち上がれない根っこ生えたぁー!遼起き上がらせてぇー!」 卓の言葉に遼は卓の腕を引っ張り座らせた。 「ありがとうっ!」 卓は、そういうとよっこらしょと言いながら立ち上がった。 こいつら本当に仲がいいなぁと海斗は心の底から思い、この2人の間に入りたいと強く感じた。 外に出た3人は、すっかり日も暮れ夜風を感じながら、近くのラーメン屋さんへと足を運んだ。 お腹も満たされラーメン屋さんから旅館へ帰ってきた3人は、再びゴロゴロと畳の上に寝転がった。 「あそこのラーメンうまかったなぁ」 と海斗は寝転がりながら言うと 「ねっ!結局3人とも同じ店長のおすすめを頼んだけど、あれは正解だったね」 海斗と卓は話しているが遼はスマホをいじっている。 「そろそろ風呂、行かない?ここの露天風呂、景色が良いらしいよっ!海が一望出来るんだって」 海斗の言葉に遼が喰いついた 「よしっ!いくかぁー!歯ブラシも買ったしな」 「露天風呂楽しみだなぁー!」 卓もそう言って準備を始めた。 3人は、着替えと備え付けの浴衣と洗面用具を持って、大浴場があるフロアへと向かった。 脱衣所まで着いたが、先客は誰もいなく貸切状態となっていた。 「誰もいないねっ!俺らの貸切じゃん」 と卓のテンションはさらに上がっていた。

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