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第28話 秘果のお仕置き

 その日の夜、ベッドで蜜梨は何となく秘果に背を向けていた。  昼間、心惟にされた悪戯を思い出していた。 (言付けるとかいっちゃったけど、言ったら秘果さん絶対怒る。下手したら、心惟を祓いかねない)  蜜梨の魂に絡まった心惟を祓えるかというと難しいが。  何をするかわからないから、言えない。 「蜜梨ちゃん、ちょっと話があるんだけど、いい?」  布団の隣に入り込んだ秘果が、後ろから声をかけた。  意味もなくビクリと肩が震える。 「うん、何? どうしたの?」  振り返らないまま返事する。  何となく、秘果に向き合うのが気まずい。 「……慶寿様に、伝えてほしいと頼まれたんだけどね」 「慶寿様に?」  蜜梨は振り返った。  その顔を眺めて、秘果がぐぃと顔を寄せた。 「やっと俺のほうを向いたね。どうして顔を隠すの? やましいことでもあるの?」    大当たりな指摘をされて、蜜梨は固まった。 (いや、別にやましくはない。……ない、よな? 耳を舐められただけだし)  あの時のことを思い出したら、かっと顔が熱くなった。 (あれ? 俺、何で照れてんの? 別に、エッチなことしてたわけじゃないのに……。エッチじゃ、ないよな?)  考えるほどわからなくなって、恥ずかしくなる。  蜜梨の顔を掴まえて、秘果が迫った。 「心惟に何かされた?」  やっぱり大当たりすぎて、言葉が出ない。  口がハクハクして、顔が熱い。  そんな蜜梨の頬に、秘果が口付けた。 「え? 秘果さん?」 「ちゃんと話すまで、色んな所に口付けるよ。納得するまで、やめないからね」  言いながら、秘果の唇が蜜梨の唇を掠めた。 「んっ……、待って、秘果さ……んっ!」  顎を掠めた唇が、首筋に降りて、鎖骨を食んだ。  寝巻の袷を緩く開いて、秘果が胸に唇を押し当てる。 「待って、秘果さん、待って……ぁんっ」  秘果の指が服の上から胸を撫でまわす。  指が乳首を掠めると、体がビクンとしなった。 「蜜梨ちゃん、敏感で可愛い。もっと深い場所に触れたら、どうなっちゃうのかな」  秘果の足が、蜜梨の足の間に侵入する。  股間をやんわりと刺激されて、軽い快楽が背筋を昇った。 「待って、本当に待って、……ぁんっ、話す、ちゃんと、話す、からぁ」  足の動きも手の動きも止まらないのに、口付けも首や胸に落ちる。  時々舌が蜜梨の肌を舐め上げて、ぞわりと痺れる。  力の入らない手で蜜梨の手を、きゅっと握った。 「昼間、心惟に、耳……食まれて」 「耳? 耳だけ? 他に何もされてない?」  少し尖った秘果の声に、蜜梨は頷いた。 「本当に、耳、だけ。秘果さんに話したら、心配すると思って、言えなくて、ごめん」  蜜梨が握った手を握り返して、秘果の顔が近付いた。  近付いた舌が蜜梨の耳を舐めて、食んだ。昼間、心惟に食まれたのとは反対の耳だ。 「ぁん! や……、秘果さん、だめぇ」  耳朶を噛んで舐め挙げると、舌先で穴をくりくりと刺激する。  それだけでも腹の奥が疼くのに、足がまだ股間を刺激している。 「ぁっ……はぁっ、やぁ……、ひみか、さ……ぁんっ」  吐息をかけられながら舐められた。  敏感になった皮膚が、やけに鮮明に感触を伝えて、気持ちが良い。 「心惟に食まれた時も、そんな声で啼いたの?」  耳元で囁かれる。  吐息のくすぐったさまで、気持ちがいい。  蜜梨は必死に首を横に振った。  秘果の手が蜜梨の顔を掴まえる。 「少し食んで舐めただけで、こんなに感じるのに?」 「だって、さっきまで、胸、舐めて……。足だって、まだ」  秘果の足は蜜梨の足に間で緩く股間を刺激し続けている。 「勃ってきちゃったね。気持ちいいの?」  潤んでぼやけた視界のまま、蜜梨は頷いた。 「素直だね、蜜梨ちゃん。可愛くて、もっと食べたくなる」  秘果が蜜梨の耳にキスをする。  舐めるのとキスが交互に雨のように降ってきて、音だけで快楽が増す。 「はぁ……も、むりぃ……、がまん、できなく、なっちゃ、ぅ」  堪らずに、蜜梨は秘果の腕を掴んで胸に凭れた。 「心惟と俺、どっちが気持ち良い?」 「秘果さんのが、きもちぃ。秘果さんが、いぃ……」  何も考えずに、蜜梨は秘果に口付けた。  やっと、秘果の愛撫が止まった。  足を外して、秘果が蜜梨を抱きしめた。 「俺に寸止めされたくなかったら、心惟に好き勝手させちゃダメだよ」 「わかった。ごめんなさい」  中途半端に昂った快楽が溜まって疼いている。  ぎゅっと瞑った目から零れそうになった涙を秘果が吸い上げた。 「それでね、慶寿様からの伝言なんだけど」 「それ、ブラフじゃなかったんだね。俺まだ、体、疼いてるのに……、ひゃ!」  秘果の唇が項に落ちて、強く吸い上げた。 「これはお仕置きだから、体を疼かせながら大事な話、聞いてね。聞き洩らしちゃダメだよ」  秘果が緩い力で蜜梨の背中を撫でる。  快楽が中途半端に疼いているから、触れられているだけでゾワゾワする。 (秘果さん、Sっ気あるんだ。Domかな? 俺、明らかにSubっぽい。項に噛み付いたら、運命の番になっちゃうじゃん。秘果さん竜だからセンチネルで、俺は導仙だからガイドかな?)  頭もぼんやりして、色んなバース設定が脳内に波のように押し寄せた。

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