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63 桃の粒は蜜の味 ※ ソンユン

              「…っは…、そ、ソンジュ様、そこ…僕、……」    口を離すと、ユンファ様は火照った顔を弱々しい表情にして、どこか怯えたように俺を見てきた。…が、俺はその桜色の乳首に唇を寄せ――ちゅう…と優しく、吸い上げてみる。   「…んん…っ♡」    するとビクンッと胸を跳ねさせ、ユンファ様は「駄目です…」と泣きそうな声で言いつつ、やめてくれと、俺の肩を押してくるのだ。――が、俺はむしろチロチロと、その柔くも(しこ)った乳頭を舌先で転がし、弾く。    甘い――もちろん乳の甘さではない。  熟れた桃の香…その果実味の、初心な胸。   「…ァ…っ♡ ぁぁ、♡ ぅン…♡ …んん…♡」    甘く鼻から抜けた声をもらし、ユンファ様がピクン、ピクンと反応している。…もう片方の乳首は、その先を掠めるよう指先で何度も刺激――「そ、ソンジュ様…嫌です、駄目…」ほとんど吐息の拒否に、俺はもう少し強めにぢゅ…と乳輪から先端を吸い上げ。   「…ぁぁ…っ♡♡」    小さくビクビク、としたユンファ様に、俺は吸い上げながら一旦唇を離す。――というよりは吸い上げつつ、その硬く凝った乳首を唇で何度も扱いてやる。   「…ん…♡ ソンジュ様…、ぁ…♡ いや…だめ、そこ…は、はしたない声が、出てしまいま…、あ…っ♡」    カリッとやや強めに噛むと、ユンファ様はビクンッと腰を軽く反らせて声を出した。――いや…それにしても彼、かなり嬌声がしっとりとして、上品かつ可愛い。  無垢で上品なユンファ様らしい声だ。――その嬌声一つでさえ、胸がきゅうっと締め付けられ、たまらなくなるほど愛おしくなる。    しかしユンファ様、俺の肩をぐっと押しやり――弱々しい泣き顔を真っ赤にして、…眉を困ったようにたわめ、涙目で俺のことを見てくる。   「…そこ、そこ、へ、変になってしまいそうなのです、駄目…、もう、そこはおやめくださいませ……」   「………、…」    いやはや…媚態で「駄目」という人こそいくらでも知っている俺だが――ユンファ様の「駄目」に至っては、はしたなくなってしまいそうだから、声が出てしまうから、本当にもうやめてください…と、本気でその言葉(駄目)()()()()()()らしいご様子である。    しかし…ならば尚の事唆られてしまうのが、男というもの…――俺はニヤリと思わず笑い、唾液に濡れて艶めくユンファ様の乳首…俺が吸って舐めて刺激したからだろうか、やや色が濃く、赤っぽい桃色になったソコを。    唾液のぬめりを活かして、親指の腹でぬりゅ、ぬりゅ…と優しく押し潰し、押し潰して――「……ぁ、♡」と顔を歪めたユンファ様、俺は、もう片方の乳首を口に含む。    口の中で軽く吸い上げながらチロチロ、この甘い豆粒を転がし――もう片方はぬる、ぬると敢えて唾液のぬめりを活かし、先端を、粒の側面を、指先で撫でるだけ。  すると、キュ…と喉を鳴らしては堪えているか、声こそもらさない彼だが、ぴく、……ぴくん、…ぴくんっ…と、断続的に上体を跳ねさせる。   「…だめ、……ッんん…♡ そこ、い、いや…ぁぁ…♡」   「…ふふ……」    これはおそらく――生まれ付いて乳首が感じやすい体でありながらも、本当にユンファ様は、自慰の試しがないのかもしれぬ。  いや狼族とて、そう多く自慰をする種族ではない。――なぜなら狼は、恋い慕う相手にしか興奮しない体質の種族だからだ。  とはいえ――俺たち狼だって、全く自慰をしないということでもないのだ。…すなわち恋い慕う相手ができれば、その相手の妄想を片手に自慰行為を行うこともままある。    俺はもしか、このユンファ様のお体にせよご様子にせよ、今宵のこれに想いを馳せた暁には一人、密かにシてしまうかもしれないが――まあ、そんなことはどうでもよい。    快感に「変になりそう、はしたなくなってしまいそう、だからもうやめて」と本気で言う人が、この世にいたとは。…秘め事の理をあまりにも知らぬ、というより、それを知る機会もここまでにまるでなかった境遇のユンファ様は――あまりにも清廉潔白、あまりにも無垢、いっそ幼気ですらある。  そうしたユンファ様の、この至極当惑した反応――それにどうしようもないほど唆られてしまうのは、俺が汚れた大人の男だから、かもしれない。    いやしかし、よくよく考えてみれば――ユンファ様は今二十六歳。…俺は二十三だ。つまり、これほど無垢で純情な美しいユンファ様は、俺より三つ年上の人なのである。      俺よりも年上の人が――俺よりも無垢。      まるで夢の如く、神秘的な官能を覚える――。      

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