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130 ひと際美しい首巻き
「…お捨てになられるのですか、それ」
俺が問うと、ユンファ様は「どうしようかな…」と曖昧に笑って、立ちすくんだままの俺を見上げた。
「…贈り物にできないなら、捨てるしかないかもしれないね…、しかしもったいないから、あるいは僕が、自分で使おうかな」
そう気丈に笑ったユンファ様は、それでいて少し泣き出しそうな目をして、自分の首巻きの拙さの羞恥にか、頬や耳を赤らめていた。
「…ならば、俺に下さいませ。…」
「…え…?」
「……俺に、下さいませ。」
俺はユンファ様の手から、その首巻きを取った。
ふかふかとして、しかしまあ…妻の作った首巻きよりは確かに、造りは拙いのやもしれぬ。――何度も解いては編んだせいか、いくらか毛糸も毛羽立っているようだ。…それに、ところどころ編み目もちぐはぐとして、緩いところもキツいところもある。
しかし、手作りとはこれだからよいのだ。
「…素晴らしい首巻きだ」
「いや、ソンジュ…、君には奥方の首巻きが…」
「……俺はこの首巻きがよいのです。…これはもともと、俺がひと際美しいと思った色の毛糸でございます。…俺にも特別思い入れがある首巻きですので、どうせお捨てになられるというのなら、もったいない…――俺がいただきます。」
俺は、その首巻きを首に巻いてみた。
「……うん、気に入りました。」
なるほど、しかしこれは悪くない。
首元がチクチクとしないでもないが、あたたかい。何よりユンファ様の匂いがする。…甘い桃の香りがするこの首巻きは、寝る間も惜しんで一生懸命であった彼の姿と重なれば、いよいよこれそのものが熱を放つようにあたたかく感じる。
「…とてもあたたかい。…有り難く頂戴いたします、ユンファ様。」
「…………」
そう笑った俺を、ぼんやりと見上げていたユンファ様は…思わずというように、にこっと泣きそうにその美貌を綻ばせ、しかしそれを隠すようにさっと俯き――頬を桃色にぱっと染めては彼、小さな声で。
「…そ、それは…何よりだ、…じゃあ、ソンジュにあげよう、それは……」
「…はは、ユンファ様…、ありがとうございます」
これは世界で一番美しく、素晴らしい首巻きだ。
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