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第9話 お兄ちゃんが来た

 そんなこんなで、楽しい日々を過ごしていた魔王だったが。  来客はまたも突然にやってきた。 「魔王様ぁ、またどっかの勇者パーティ来てるぜ」  ランドールが報告にやってきた。  首輪に鎖を付けたガイルを犬のように連れている。  元戦士は筋肉が衰えることなく、屈強な身体のままだ。  性玩具にした魔法使いは、あっという間に壊れたので、餌に回した。  今は玩具がいないから、ガイルを時々、魔王軍の皆の玩具にしている。  頑丈な戦士は、どれだけ回されても壊れない。輪姦用には良い性玩具だ。 「シャムルたちが来たばかりなのに、頻繁だねぇ。何処の国の子かなぁ」  魔王は魔鏡を開いた。  三人組のパーティだが、魔王城まで来られたのだから、強いのだろう。  如何にも勇者です、といわんばかりの端正な顔の青年が、先頭を歩いていた。 「兄上……」  魔王の腰に巻き付いてちんぽに頬擦りしていたシャムルが呟いた。 「シャムルのお兄さん? じゃぁ、シャムルとガイルのお兄さん?」  魔王の問いかけに、シャムルの頷いた。 「リンデル王国の嫡男、時期国王候補と名高い王国最強の魔法剣士、ヘルクライン兄様です。正義感が強く悪を見過ごさない強さを持った人だから、私たちを連れ戻しに来たのでしょう」  魔鏡の中の兄を眺めるシャムルの目は冷めている。  魔印のせいではなさそうだなと、魔王は思った。 「そっかぁ、心強そうな顔しているよねぇ」  心、というか、自分の価値観に自信を持っていそうな顔だ。 「とても強いですよ。……鬱陶しいほどに」  シャムルの乾いた声には感情すら無い。 (魔印の縛りで淫欲以外の感情は、絞られているはずなんだけどなぁ)  魔王は隣のガイルを眺めた。  ガイルは魔鏡には目もくれずに、ランドールの股間に顔を埋めて、ちんぽをしゃぶることに夢中になっている。  ガイルの首には魔印が一本、付いている。 (ヘルクラインをあんな風に言っているけど、シャムルもなかなかに役者というか。エッチ好きは魔印のせいだろうけど)  魔王はシャムルの髪をサラサラと撫でた。 「シャムルは、魔族になりたいんだっけ?」  魔王の問いかけに、シャムルは顔を上げた。   「はい! 魔族になって、魔王様のお役にたちとうございます」 「ならば、兄・ヘルクラインの心臓を喰え」  シャムルの顔が一瞬、凍り付いた。だがすぐに、キラキラとした笑みになった。 「魔王様の御命令であれば、何なりと。魔族になれるのでしたら、いくつでも喰らいましょう」  うっとりと嬉しそうに魔王を見詰めるシャムルの顎を撫で上げた。 「上手に喰えたら、魔族の核をあげるよ。魔印より確実に魔族になれる。シャムルが望むなら魔王の血の結晶をあげよう」 「血の結晶、ですか?」  首を傾げるシャムルに向かって、ランドールが感心した声を上げた。 「へぇ、すげーじゃん。魔王様の血の結晶がもらえたら、魔族ン中でも側近の証だ。奴隷から大出世だな」  シャムルが感嘆の表情になった。 「必ずや、ヘルクラインの心臓を喰って見せましょう。今の約束、お忘れになりませんように」  シャムルの顔に氷のような冷たい微笑が浮かんだ。  が、それも一瞬で、すぐに蕩けた笑みに変わった。 「魔王様の御側に居られるならば、何でも致します」  シャムルが魔王の腰に巻き付いて、股間に顔を埋める。  「じゃぁ、適度にHPとMPを削って、玉座の間に誘導しようか」    シャムルの髪を撫でながら、ランドールを振り向く。 「適当にやっとくよ。後ろの二人は玩具にしていいよな。魔法使いがすぐ壊れたから、魔王軍に不満が溜まってんだよ」 「ヘルクラインだけ玉座の間に誘導できれば、残りの二人は適当に堕として遊んでいいよ」  よっしゃー! とランドールが楽しそうにしている。 「魔王様に名前を呼んでもらえるなんて、贅沢な……」  呟いたシャムルが、魔王の股間にぐっと顔を押し付けた。  そんなシャムルを魔王は眺めた。 (さてさて、シャムルの狙いと本音は、どっちかな)  魔王に堕ちた振りをして入り込み、王国最強の魔法剣士と共謀して、魔王を討つのが狙いなのか。  鬱陶しい兄を排除するため魔王を利用したいだけなのか。  他に何か、勇者としての狙いがあるのか。   (魔印の効果は薄まっていそうだから、既に魔王の忠実な奴隷ではなさそうだね)  どちらにしても、醜い本音は面白い。  ゲームを楽しむような感覚で、魔王様はワクワクしたのでした。

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