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新婚旅行らしくない新婚旅行5

 翌日、朝起きると陸さんがキッチンでキウイを手にしていた。 「僕、剥きます」 「これくらい自分でもできる」  陸さん、包丁は使えるんだろうか? 自宅に住んでいたし、自宅にはお手伝いさんがいて作って貰っていたはずだ。 「でも、僕ができるときは僕がやります。いえ、やらせてください」  そう言って頭を下げると包丁を渡してくれたので皮を剥いていく。キウイの皮は柔らかいから剥くのはさして大変でもない。でも、小さいから気を付けないと手を切ってしまいそうになるんだ。陸さんの手を傷つけたくないからできる限り僕がやりたい。帰国してもやらせてくれるかな? 「ありがとう」  陸さんは、切り終わったキウイとシリアルと一緒にラナイに持って行った。コーヒーでも淹れてあげようと思い、コーヒーメーカーをセットする。   「コーヒー淹れるので待っててください」 「ああ」    陸さんはあまり僕と話したくなさそうだけど、挨拶とありがとうという感謝の言葉はきちんと口にしてくれる。これが話したくないからと言ってなにも言わずに黙ってられたらちょっと嫌だけど、陸さんはこれはない。だから年に1回のお正月の挨拶で顔を合わせたときも、最低限の言葉だけは交わしていた。もっともそれもなく黙っていたらゆきな伯母様が怒りそうだけど。だから僕は顔を合わせて嫌な気になったことは一度もなかったし、それどころか好感を持っていた。  コーヒーメーカーをセットした後は自分の朝食だ。今日は何にするか決めてある。簡単に済ませたいけれど、美味しいのが食べたくて昨日チーズとハム、卵を買ってきてあるからパンで挟んでクロックムッシュにする。それにサラダをつけて、キウイとヨーグルトをそえれば十分だ。  パンをフライパンで焼き、それを見ながら自分用にキウイの皮を剥いていく。これでOK。  パンが焼けた頃にはコーヒーも落ちているので、コーヒーを淹れてラナイにいる陸さんのところに持って行く。 「コーヒーはいりました」 「ありがとう」  ラナイは陸さんがいるので、僕はダイニングで食べることにする。  朝食を食べながら今日の予定を頭の中で組み立てて行く。  今日は和食の食材と調味料を買いたいので日系スーパーに行きたい。バスで行くとなるとワイキキかアラモアナになるけれど、食材以外にも色々見て回りたいからアラモアナに行くことに決めた。もし荷物が多くなりすぎたらタクシーで帰ってこよう。ちょっと高くなるけど、それくらいいいよね?  僕がそんな風に考えていると陸さんが席を立つ。食べ終わったのだろう。 「後で一緒に洗うので置いておいてください」 「わかった。ありがとう。今日は夕食はいらない」  それだけ言うと陸さんは車の鍵を持って出ていった。陸さんは僕と違って車の運転ができる。そして、ゆきな伯母様から陸さんはサーフィンをすると聞いている。だからきっと今日もこれからサーフィンに行くのだろう。  この辺でサーフィンをするならダイヤモンドヘッドだろうか。そこなら車ですぐそこだ。  でも、サーフィンをするけれど陸さんは色が白い。だからサーフィンをするようには見えないのだ。色白なのはゆきな伯母様似で、多分黒くなることはないんだろう。子供の頃から今まで、日に焼けた陸さんというのは見たことがないから。  それよりも陸さんは今夜は食事はいらないと言うので僕1人ということになる。1人ならば食べに出てもいいけれど、一度帰って来てしまったらまた出かけるのが面倒になるので何かお弁当か惣菜でも買ってこよう。1人分作るのは面倒だ。となると食材は買わなくてもいいかな。調味料と明日の朝のフルーツだけ買えば良さそうだ。  今日の予定も決まったのでコーヒーをゆっくり飲んだら出かけることにした。   

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