3 / 37

第3話

 二日目。  真二郎はしつこいくらい「頼む」と念を押して学校に行った。  そして…… 「どういうこと?」  と、こぼしたのは璃斗だ。真二郎が子犬を抱っこして帰ってきたのだ。  そう、二匹目の子犬である。 「神社でちょろちょろしてたので拾ってきた。こっちは黒丸にする」 「くろまる?」 「額の丸いのが、茶丸よりちょっと黒いだろ? だから、黒丸」  それはそうかな、でも黒というほどの色合いではないんじゃないかな……などと思う璃斗だが、あえて言わなかった。 「にいちゃん、スマホ貸してよ」 「え? あ、うん」  真二郎は璃斗のスマートフォンを使って黒丸を撮影し、パソコンに取り込んでチラシとポスターを作った。驚くほど手際がいい。出来上がったポスターやチラシは、人目を引きながらも子犬の特徴がうまく表現されていて、なかなかの出来だ。 「コンビニ行ってくる! 茶丸と黒丸見てて」 「うん」  真二郎が飛び出していく。  それから帰ってきたのは三時間ほどが過ぎてからだった。  まずは警察に行って二匹目を届け、次にコンビニに行ってコピーし、近所にチラシを配って回ってきたそうだ。  この機動力に驚かされる璃斗ではあった。 「真二郎、お風呂に入っておいでよ」 「もうちょっと遊んでる」 「あがってから遊べばいいじゃないか。やんなきゃいけないことはさっさと終わらせるほうが、あとが楽だから」 「風呂なんて入らなくたっていいんだから、茶丸たちと遊んでる!」 「汚いだろ」 「ヤだ!」  万が一、飼い主が見つかってしまったら……そう思っているのかもしれない。これは言っても聞かないだろう。それにせっかくの雪解けムードだ。 (今回はいいきっかけだ。この機会をうまく使って関係を構築するんだ。仕方ない)  璃斗は店に戻ることにした。掃除と後片付けが残っている。 (ん?)  視線を感じて振り返ると、ガラス戸に隠れながら真二郎がこちらを見ている。足元には二匹に子犬。璃斗が振り返ったので、慌てて頭をひっこめた。  素直になればいいのに、そう思うが、これは時間が解決する問題だと考え直した。

ともだちにシェアしよう!