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11.信じてるのかも
二人を観察してみたついでに。ふと、瑛士さんを見つめてみる。
茶髪だけど、明るすぎない色。何色って言うんだろう。綺麗な茶色。手入れをちゃんとしてそうな、なめらかな感じの、まっすぐなサラサラの髪。前髪は少し長めだけど、綺麗な瞳は隠れてなくて、なんか、やっぱり、オレがこの世で見た中で、一番カッコいい人な気がする。
肌も綺麗だし。彫が深くて、瞳には吸い込まれそうだし。微笑む唇は綺麗で、優しいのが分かるような。
さっき並んで歩いてて、背高いし、ウエストの位置、絶対おかしかった。股下どんだけあるんだろう?って思ったし。存在感、すごいし。
――ってオレ今、綺麗って何回言ったかな。ちょっとおかしくなってしまう。
こんな造形で、こんな雰囲気の人が、この世には居るんだなあ……。
神様って、ちょっと不公平だよな。ちょっとじゃないか、大分かな。
天は二物を与えないとか、誰が言ったんだ。
なんか、すっごーい欠点でも無いと、なんかバランス悪そうだな?
多分この二人も、結構上位のαなんだと思うけど――瑛士さんは、なんか別格な、気がしてしまう。でも別に偉そうなわけでもなくて……なんだろ。
威圧的で、オレが絶対従うもんかって思う、父みたいなタイプとは違ってて――。
んー。……なんか逆に、頼りたいとか思ってしまうような。近くにいると、ほっとする。
――ってオレ、バカみたいだな。
さっき会ったばかりの人、なんでこんなに信じてるんだろ。
これで三人がかりで騙されてて、どっか売り飛ばされたらとか、目も当てられないほどのバカだけど――。でも。それは無い気がする。やっぱりオレ――なぜだか、すごく信じてるのかも。
オレ、結構、疑心暗鬼な奴だし。弱い立場の人を助けたいとは思ってるけど、世の人をそこまで信じてはいない。αのことも数人のぞいて、ほぼ好きじゃない、と思っているのに。なのに。変なの。
そう思いながら口に入れた食べ物。
――あ、これも、すごくおいしい。
ふ、と口元が綻んだ時。
「それで、いろいろ話して――オレからお願いして、了解をもらったところなんだけど」
ね、と、瑛士さんがオレを見つめて、微笑む。小さく頷くと。
「契約結婚を、してもらうことにしたから。期間は三年間。オレのプロジェクトが、軌道に乗るまで」
秘書の楠さんは、オレと瑛士さんを見比べてから、口元に手を当てて、固まって。
弁護士の有村さんは、眉を顰めて、瑛士さんを睨んだ。ような気がする。
――まあ。
……そりゃそう、だよね。
瑛士さん、何も言わずに、ただこの二人を呼び出したっぽかったし。
そりゃそうなるに決まってる。
その反応、すごく分かってしまう。
でも、なんか。真ん中で、この緊張感にそぐわない顔をして、楽しそうにしてる瑛士さんが面白くて、笑ってしまいそうになって、顔を引き締めた。
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