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41.楽しい。
「わぁ……」
並べていってくれる料理の綺麗さに、ちょっと感動。
「キラキラした顔してるけど、凛太」
瑛士さんがオレを見て、面白そうに微笑む。
「パエリアもピザもすごくおいしそうです。サラダも色とりどりで綺麗だし。スープ、透き通ってる……」
こないだの料理も綺麗だったけど、今日も綺麗。おいしそう。
そういえば、オレって……母さんとはほとんど家で食べてたし、ご飯作ってあげたかったから、友達と食べて帰るとかも無かったんだよね。しかもこんなお店なんて来ないし。
和食の感じももちろん大好きなのだけれど。こういう料理って、こんなに色とりどりで綺麗なんだなあ……。
ワクワクしてると、料理を持ってきてくれた和智さんがクスクス笑う。
「今まで瑛士さんが連れてきたタイプと、違いますね」
「――まあそうかもだけど。いいだろ?」
「ふふ。ていうか、瑛士さんが、めちゃくちゃ楽しそうに笑ってるなーと、思いました」
「ん?」
「オレが今こっち来る時も、笑ってたでしょ」
瑛士さんとオレは、顔を見合わせて、笑ってたっけ、と考えて。あ、笑ってましたね、と頷き合う。それを見ていた和智さんが、ふ、と笑った。
「楽しそうな瑛士さんは、何よりですね」
「そう?」
「はい」
和智さんは頷くと。「どこで知り合ったんですか?」と聞いてきた。わー、さっき話してたばかりの、出会いの話。ていうか気になるよね、やっぱり。なんて言うんだろう、瑛士さん。
「ん。あのね、家が近所でさ。凛太がオレに一目惚れして、お茶に誘ってくれたの」
「え。ナンパですか?」
「……って言ったら信じる?」
「――え、なんですか、それ」
和智さんは、んー? と考えながら、クスクス笑って悪戯っぽい顔をしてる瑛士さんを見てから。
「そうなんだよって言われたら、信じるしかないですよね……でも瑛士さん、一目惚れされるなんていつもだからなあ……ナンパに応じたんですか?」
「――まあ。出会いについて語るのはまた今度にする」
「え、嘘なんですか?」
「いや――むしろ、オレが声かけたというか……」
「ええっ??」
「……ね、そうだよね?」
瑛士さんが、オレを見て、にっこり笑ってくる。
「まあ、そう、ですね」
苦笑して答えると、瑛士さんが「凛太、可愛かったから」と言う。
少しして、和智さんは、ふ、と笑った。
「なんか良く分かんないけど――仲良さそうなのは分かりました」
「うん。そう」
クスクス笑って瑛士さんが頷いている。
「デザートは何がいいですか?」
「ああ、それもおすすめで――あ、でも、カッサータは欲しいな。それ以外はおすすめでいいから、盛り合わせて?」
「分かりました」
和智さんが離れていくと、瑛士さんはクスクス笑った。
「一目惚れ説さ。凛太がっていうより、オレがっていう方が良さそうな気がする」
「えっそうですか?」
「確かに一目惚れされること多くて……でも全然相手にしてこなかったのにって怪しまれそう。オレが、なんか可愛くて、声を掛けたんだって言ったらもう、そうなんだ、しかないでしょ。実際、なんか可愛いのが、うろうろしてて、やばそうだったし、それで声かけたようなものだし」
「……ああ……なんか、やばそうで、すみません」
なんとなく、あの店の前で行ったり来たりしてたのは、ちょっとはずかしいなと思って、そう言うと。
「声かけたら気に入っちゃって――って、それなら、事実だから。そこは嘘じゃないから。そうしよ」
「――はあ……」
瑛士さんがオレに一目惚れ、かぁ。
瑛士さんは押し切るつもりみたいだけど……まあ。いっか。なるようになる。
「とりあえず食べよ?」
「はい。いただきます。パエリア、取り分けていいですか?」
「ん。サラダ分けるから。お皿貸して」
「はい――あ、瑛士さん。 かっさーた……って何ですか?」
「んん。凛太、好きそうだなぁって思って。あ、レアチーズケーキみたいな味、好き?」
「大好きです」
「じゃあ、楽しみにしてて」
「はい」
何だろ。本気で楽しみ。
ちょっとわくわくしながら、おいしいイタリアンを食べる。
……こんな料理を、こんなお店で、こんな人と、向かい合って食べてることを、かなり不思議に思うけど。
瑛士さんと居るのは、なんか心地が良い。
話し方かなあ。雰囲気? ……なんか。運命共同体みたいに、色々相談して話してるのも、なんか、契約結婚とかいって、ほんとはちょっと不謹慎だとは思うのだけど――でも。楽しい。
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