45 / 139

41.楽しい。

「わぁ……」  並べていってくれる料理の綺麗さに、ちょっと感動。 「キラキラした顔してるけど、凛太」  瑛士さんがオレを見て、面白そうに微笑む。 「パエリアもピザもすごくおいしそうです。サラダも色とりどりで綺麗だし。スープ、透き通ってる……」  こないだの料理も綺麗だったけど、今日も綺麗。おいしそう。  そういえば、オレって……母さんとはほとんど家で食べてたし、ご飯作ってあげたかったから、友達と食べて帰るとかも無かったんだよね。しかもこんなお店なんて来ないし。  和食の感じももちろん大好きなのだけれど。こういう料理って、こんなに色とりどりで綺麗なんだなあ……。  ワクワクしてると、料理を持ってきてくれた和智さんがクスクス笑う。 「今まで瑛士さんが連れてきたタイプと、違いますね」 「――まあそうかもだけど。いいだろ?」 「ふふ。ていうか、瑛士さんが、めちゃくちゃ楽しそうに笑ってるなーと、思いました」 「ん?」 「オレが今こっち来る時も、笑ってたでしょ」  瑛士さんとオレは、顔を見合わせて、笑ってたっけ、と考えて。あ、笑ってましたね、と頷き合う。それを見ていた和智さんが、ふ、と笑った。 「楽しそうな瑛士さんは、何よりですね」 「そう?」 「はい」  和智さんは頷くと。「どこで知り合ったんですか?」と聞いてきた。わー、さっき話してたばかりの、出会いの話。ていうか気になるよね、やっぱり。なんて言うんだろう、瑛士さん。 「ん。あのね、家が近所でさ。凛太がオレに一目惚れして、お茶に誘ってくれたの」 「え。ナンパですか?」 「……って言ったら信じる?」 「――え、なんですか、それ」  和智さんは、んー? と考えながら、クスクス笑って悪戯っぽい顔をしてる瑛士さんを見てから。 「そうなんだよって言われたら、信じるしかないですよね……でも瑛士さん、一目惚れされるなんていつもだからなあ……ナンパに応じたんですか?」 「――まあ。出会いについて語るのはまた今度にする」 「え、嘘なんですか?」 「いや――むしろ、オレが声かけたというか……」 「ええっ??」 「……ね、そうだよね?」  瑛士さんが、オレを見て、にっこり笑ってくる。 「まあ、そう、ですね」  苦笑して答えると、瑛士さんが「凛太、可愛かったから」と言う。  少しして、和智さんは、ふ、と笑った。 「なんか良く分かんないけど――仲良さそうなのは分かりました」 「うん。そう」  クスクス笑って瑛士さんが頷いている。 「デザートは何がいいですか?」 「ああ、それもおすすめで――あ、でも、カッサータは欲しいな。それ以外はおすすめでいいから、盛り合わせて?」 「分かりました」  和智さんが離れていくと、瑛士さんはクスクス笑った。 「一目惚れ説さ。凛太がっていうより、オレがっていう方が良さそうな気がする」 「えっそうですか?」 「確かに一目惚れされること多くて……でも全然相手にしてこなかったのにって怪しまれそう。オレが、なんか可愛くて、声を掛けたんだって言ったらもう、そうなんだ、しかないでしょ。実際、なんか可愛いのが、うろうろしてて、やばそうだったし、それで声かけたようなものだし」 「……ああ……なんか、やばそうで、すみません」  なんとなく、あの店の前で行ったり来たりしてたのは、ちょっとはずかしいなと思って、そう言うと。 「声かけたら気に入っちゃって――って、それなら、事実だから。そこは嘘じゃないから。そうしよ」 「――はあ……」  瑛士さんがオレに一目惚れ、かぁ。  瑛士さんは押し切るつもりみたいだけど……まあ。いっか。なるようになる。 「とりあえず食べよ?」 「はい。いただきます。パエリア、取り分けていいですか?」 「ん。サラダ分けるから。お皿貸して」 「はい――あ、瑛士さん。 かっさーた……って何ですか?」 「んん。凛太、好きそうだなぁって思って。あ、レアチーズケーキみたいな味、好き?」 「大好きです」 「じゃあ、楽しみにしてて」 「はい」  何だろ。本気で楽しみ。  ちょっとわくわくしながら、おいしいイタリアンを食べる。  ……こんな料理を、こんなお店で、こんな人と、向かい合って食べてることを、かなり不思議に思うけど。  瑛士さんと居るのは、なんか心地が良い。  話し方かなあ。雰囲気? ……なんか。運命共同体みたいに、色々相談して話してるのも、なんか、契約結婚とかいって、ほんとはちょっと不謹慎だとは思うのだけど――でも。楽しい。

ともだちにシェアしよう!