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第1話
【心霊スポットで高校教師の怨霊の餌食にされた挙句ハメ撮りされた話】
オカルトおたくの幼なじみと柔道部の俺は、同い年の高校生ながら見た目や性格が正反対で、趣味もあわなければ、ほかにとくに接点もなし。
なれど俺は忙しい部活動の合間をぬって、たまに幼なじみの心霊スポット巡りに同行。
なぜなら幼なじみが好きだから。
なにより好きなのは顔。
ぼさぼさの髪、いつも顔を伏せて独り言をぶつぶつ、やぼったい格好をして陰気なオーラをまとっているから気づかれにくいが、とんだ美少年で。
超面食いとなれば、そりゃあ惹かれてやまず、周囲にばれてしまうまえに、なんとか恋を成就させたいところ。
とあって気乗りがしない心霊スポット巡りにつきあうわけで。
今日、訪れたのは高校の廃墟。
カメラで撮影しながら、幼なじみが語ったことには「ここには性犯罪者の高校教師の怨霊がでるらしいよ」と。
柔道部の顧問をして指導に励んでいたのが、ある日のこと部員が性被害を訴えて警察沙汰に。
警察官に任意の同行を求められた教師は逃げて、そのまま大通りにとびだし、トラックにふっとばされて死亡。
知らせを聞いて被害を訴えた生徒は泣きながら、すべて嘘だったことを打ち明けたという。
告白して断られたことへの腹いせだったらしい。
【パーティーの料理人が獣人の俺を味見しようと抱こうとするんだが】
獣人の俺が所属するパーティーは資金が潤沢とあり、料理人をつれている。
名はガルといい、どんな食材でも美味な料理に変身させ、長期保存用の素材を巧みに使いこなし、味付けを変えて飽きさせないなど、かなりの腕利きでありがたい存在。
なれど、ひとつだけ難点が。
どうも仲間たちに魔物を食わせたいようなのだ。
食材が減ってくるとかならず「いざというときは魔物がいるから!」と冗談でなさそうな発言をするし、たまに戦闘後「こいつは、どうやって調理できるかな・・」と呟くのが聞こえるし。
この世界で人間はまだだれも魔物を食べたことがない、ことになっている。
魔物を食べると、その内なる邪気もとりこむから危険とされ、今やそれは迷信とされているが、そうでなくても抵抗感があるからだろう、実例の噂を聞いたことはない。
悪食の物好きは、ひそかに食べているかもしれないとはいえ、たとえ可能だとして、俺も仲間もノーサンキュー。
なので決して食材をきらさないよう注意し、戦闘後に魔物の亡骸を、あまりガルに見せないように。
ガルの絶品料理に舌づつみを打ちつつ、警戒を怠らなかった仲間のなかで、いちばん神経質になっていたのは俺だろう。
獣人とはいっても、魔物と人間の合の子ではなく、研究所で牛と人をかけあわせて生まれたのが俺。
二代前、祖父と祖母が善良な人々に助けられ、父と母は市民権を得ることができ、そして俺の代になって冒険仲間として重宝されるように。
なんて歴史があるので、仲間たちは祖先と同じ轍を踏まないよう気をつけてくれているし、ガルも知識はあるはず。
はずだが、魔物を食材と見なすなら、似た異形の俺も同じように・・と考えずにいられない。
物欲しそうな目を向けられた覚えはないが、魔物の亡骸を興味深そうに観察するのを見るたび胸騒ぎがし、あまり二人きりにならないよう注意を。
【侯爵令息との友情を壊したくないから寝こみを襲われても狸寝いりを通します!】
俺は生まれ目つきがわるく、あまり鍛えずとも筋肉質な体つきをしていた。
おかげで小中高とまわりから怯えられるか、喧嘩腰に突っかかられるばかりで友人をつくることはできず。
これまた格闘を習わずとも腕っぷしが強かったから不良にからまれるし、気づけば舎弟が増えているし、おかげでさらに同級生などに避けられるしの悪循環な暗黒の学生時代を送っていたところ。
道路の真ん中にいた猫を庇い、トラックに吹っとばされた。
意識がうすれていくなか「ああ、一人も友だちができずに死ぬのか・・・」と嘆いたものを、次の瞬間、きらびやかな屋敷のソファに。
むかいに座る爽やかな男前が「どうしたガロー?」と小首をかしげる。
俺を前にして目をそらさず睨みつけもせず、気安く語りかける彼は、乙女ゲームに登場するキャラ、ロイだ。
そう、このいかめしい見た目にして、俺は乙女ゲームに夢中になり、オタクといって過言でない。
異性と口を利くなんて夢のまた夢、同性とも健全に親しくなれなかったに、多くの男に好意をむけられる乙女ゲームに現実逃避したわけ。
俺が転生したらしいガローと向かいのロイのことももちろん覚えていて、生まれながらの幼なじみで親友設定だったはず。
兄弟のように親しく、容姿も似ているはずが、俺インのガローは俺のままでいかつい。
かなり見た目が変わったとはいえ、ロイの反応からして設定変更はなさそう。
ゲームに忠実というなら、二人ほぼ同時にヒロインを好きになり、以降、関係に亀裂がはいってしまう。
今はそうなる前のようで「寝不足かい?なにか悩みごとでも?」と親身になって心配を。
こんなに、まともに友人扱いされたのが生まれてはじめてで感激した俺はつい涙を。
さらに慌てて俺を宥めて慰めてくれるのがうれしくて、なんとか涙をこらえ、夢にまで見た他愛もない友人トークに恍惚と。
和気あいあいとしたまま「帰るのいやだな」とすねた顔をしたロイとお別れ。
そのあとは自分の屋敷ですごしたものを、使用人も親しげだし、両親は溺愛してくれるし、兄弟姉妹も慕ってくれるし、親戚知人もフレンドリーだし。
なによりヒロイン、クローディアが俺を前にすると頬を染めてもじもじするし「一生縁がないと思っていた恋愛もできるかも!」と期待は膨らむばかりだったのだが。
その日、ロイが泊まりにきて、夜通しおしゃべり。
「夢見ていたお泊まり会!」と浮かれながら談笑して「これ父上のコレクション」とロイにすすめられて初シャンパンを煽って、ご機嫌なまま寝落ちしたよう。
しばらくして徐々に意識がもどるも「はあん、あ、ああ、あう・・・」と悩ましい声が聞こえて、体は快感に痺れて。
やおら瞼をあげれば、寝巻きが乱れて、胸から股間まで露に。
【BLゲームのモブになった俺は傍観者として隣室のまさかの組み合せな3Pを堪能させてもらう】
転生してBLゲームのモブになった俺は、徹底して傍観者になろうと。
主人公を巡るラブファイトに巻きこまれないようにしつつ、どうせなら「誰とくっつくかな?」とエンタメとしてたのしむことに。
「こいつは有力か?」「こいつは大穴か?」と競馬をするように観察。
男同士の恋愛なんて門外漢だから当てずっぽうだが「こいつはないな」と確信的に思うのが二人。
一人はショタ枠の後輩。
可憐な容姿にしてドジっ子で言動があざとい、いかにもなショタキャラに主人公はまるで興味がなさそう。
もう一人はガチムチ枠の体育教師。
体育会系を絵に描いたような暑くるしく無神経な教師で「柔道部にはいって熱い肉体をぶつけあい、共に汗を流しあおうではないか!」としつこく誘うのに主人公は辟易。
おまけに、体育教師はショタを目の敵にして、ハラスメント全開に当たってくるときたものだ。
「なんて、なよなよしているんだ!男装した女じゃないのか!?」と大笑いしたり「それでも男か!きんたまがあるか確認させろ!」と追いかけまわしたり。
大柄な教師が小柄な生徒を弱い者いじめするさまを見せられれば、主人公もげんなりするだろう。
とばっちりでショタの後輩も主人公にどこか避けられているし。
そんなハラスメントショーと一連の流れを眺めて「やっぱ、ないなあ・・」とあらためて思ったのだが。
【従順すぎる武闘家はエロゲーご都合主義的エッチな魔法の餌食になる】
俺が今、はまっているのは十八禁のRPG。
主人公は魔法使いで、仲間の女性や(なぜか美女しかいない)魔物にエッチな呪文を唱えて、あんなことやこんなことをさせて嗜むのが醍醐味。
まあ魔法はエロゲーならではで基本的に催淫効果があり、魔物に攻撃すれば「ああーん!」と色っぽく悶えるし、同時に仲間の女性たちの服が破れて悲鳴をあげて恥ずかしがるし。
だけでなく仲間の男を性転換したり、おっぱいを生やしたり、女性器をつけたり、アブノーマルなプレイも堪能できる。
男性向けのエロゲーだから、ほとんどのプレイヤーは仲間の女性や魔物にむけて杖をふるうのだろうが、俺は武闘家に魔法をかけて「ああぁ、やらあ、俺え、男なのにぃ・・・!」と泣かせてばかり。
仲間も魔物もナイスバディな美女ぞろいながら、ある意味巨乳の屈強な脳筋にしか目がなかったから。
見た目は雄々しくいかめしいが、何回も何回もエッチな魔法をかけられて、恥ずかしい目にあっているくせに「練習させて」と頼めば、懲りずに「いいよ!」と頼もしげに胸を叩くあたり、阿呆犬のように低能でありつつ、なんとも愛くるしい。
ほんとうは女体化させるなどの魔法を使わず、そのままの筋肉質な体をエロ呪文で悶えさせたいところ、ゲームのシステム上、不可能。
制作会社にクレームしても男キャラは女体化が必須というルールは改善されず、少々、不服に思いながらも、魔法で武闘家におっぱいを生やして揉みしだいていたのだが。
電車のホームで自殺しようとした人に巻きこまれ、電車に吹っとばされてあの世へ。
と思いきや、目が覚めたそこは十八禁PRGの世界。
森で火を囲んでいるらしく、自分の服装を見るにどうやら主人公の魔法使いになったよう。
「ということは・・・!」と鼻息を荒くしてあたりに目をやれば「どうした?レオン」と近くで腕立て伏せをする阿呆犬こと武闘家が。
上半身裸で豊満な胸を寄せて、小麦色の肌を上気させ、汗で濡らして艶やか。
筋骨隆々なれど小首をかしげるさまは大型犬のように愛らしく、思わず喉を鳴らしながら「い、いや、なんでも!」と本に顔を埋める。
「そうか?」とまた腕立て伏せをはじめて、呼吸を乱すのを聞いていると、むらむら。
二人きりだから余計で、なんとか心身を鎮めようと本に目を走らせれば、なんとエッチな魔法の呪文ばかり。
転生したばかりとはいえ、ミミズのような文字をすらすら読むことができ「あ!これ、ゲームにはなかったのだ!」との発見に興奮。
まあ、そりゃあ、新呪文を知ったなら使ってみたくなるし、ちょうどそばには「ふうぅ!くぅ、うあぁっ・・!」と色っぽく吐息して腕立て伏せに励むわがままボディがいるし。
【推しキャラの背中を押して悪役令息とエッチするのを一生、覗き見したい】
彼女の影響を受けて腐男子になるも、そのせいでフられるという理不尽な悲劇。
その悲しみを乗り越えて、今も腐男子ライフを満喫中。
今、はまっているのは乙女ゲーム。
異性愛ものだが、多くのイケメンが集まれば、そこに愛が生まれるのは必然。
俺のいちおしのカプは懐っこいゴールデンレトリバーのような侯爵令息、リドと、ツンデレ美少年の悪役令息、キリー。
二人は幼なじみであり、リドが超天然なおかげでキリーのいやがらせが通じないというのが平常運転だ。
たとえば、パーティーでヒロインと談笑をしていると、手を滑らせたふりをして水をぶっかける。
「やーすまないすまない」とへらへらして謝るのに、怒るどころか「だいじょうぶ!?キリーにはかからなかった!?」と心配。
「彼女がお前の、こういうことろはいけないと嘆いていたぞ」と嘘のつけ口をする。
落ちこんだり、ヒロインに反感を抱くどころか「そうか!自分で自分の欠点は気づきにくいものだからな!教えてくれてありがとう!」と熱い抱擁。
馬の遠乗りをしてヒロインと並走していたのを、誘導して離れさせて迷子にさせる。
もちろん「二人の時間を邪魔しやがって!」と怒らず「遭難したとしても、キリーがいるなら平気だな!だれよりも心強い相棒だ!」と満面の笑み。
対する悪役令息の反応がかわいいったらない。
「まったく、このドブ鼠が!今から仕立て屋にいくぞ!」と高圧的な命令しながら、弁償以上のオーダーメイドの服を仕立てる。
「そうだ!おまえは自分のことをよく分かっていない!欠点だけじゃなく長所もな!」とリドを誉めちらかす。
「な、なにが相棒だ!人に頼りきるやつはきらいだ!・・・ほら、コートを貸してやる。帰るまで時間がかかるからな・・・」とそっとコートをかけ、頼もしげに馬で先導をする。
これには俺だけでなく、乙女のプレイヤーも「ツンデレわっしょい!」とおおはしゃぎ。
ゲーム中、たまにヒロイン不在のイベント発生がするものを、この二人のは異色で「狙っているのでは?」と疑われるほど。
リド×キリー派、キリー×リド派に別れて、たまに論争が勃発するも、俺は断然、悪役侯爵受け。
運営も心得ているのか、アップデートするたびに二人のイベントが量産されて、飽きずに「尊い!」とプレイをしていたのだが。
【親友が辱しめられるデスゲームは最悪に胸糞で最高にエロティックだ】
日々、ステージが更新され、同時接続のプレイヤーが万単位の人気デスゲーム。
高校に通いながら、暇さえあればプレイをして、現実にはいない親友をゲット。
ユキといって、まさに白雪のような毛がふわふわの二足歩行のウサギがアバター。
二足歩行の狼の俺とプレイを通して意気投合し、協力して全員生還を目指している。
というのも、このゲームには全員生還できる裏技があるというから。
「ただし難易度極限だけどねえ!」と公式が発表。
裏技の情報が公開されても、プレイヤー同士の化かしあい騙しあい蹴落としあいは相かわらず、追いつめられると魔女狩り的にだれか一人をつるし上げて生け贄にしがち。
いじめられた経験がある俺とユキはとても見ていられず「お互い足の引っ張りあいをするのではなく、みんなが助かる方法を諦めずに探そう」と説得するも、なかなか聞く耳を持ってくれない。
今日もまた俺たちの訴えは彼らの心に届かず、やけになったプレイヤーは自業自得で皆、死亡。
ステージにとりのこされた俺たちは「せめて裏技の手がかりを見つけよう」と制限時間があるなか、研究所のような室内を調べていたところ。
ノートパソコンを開いたとたん、現実の画面が真っ白になり、その光に俺の視界も閉ざされてしまい。
「眩しすぎ!」と腕で目をおおい、しばらくしてから瞼をあげれば、そこは薄暗い自室でなく、蛍光灯が照る研究室。
「「は?」」と声が重なったのにふりかえってみると、兎耳を生やした青年が。
年齢は俺と近そうな、中肉中背で中性的な顔つきと雰囲気。
「も、もしかしてユキ?」「シルバー?」と確認する間もなく、遊園地で流れるようなメルヘンな音楽が響き渡り「さあさあ!ショーターイム!」と加工した主催者の甲高い声が。
「きみたちの友情を試そうではないか!とくと選びたまえ!
ひとつ目は二人で十字架に張りつけにされて、死ぬぎりぎりまで鞭を打たれるというの!
ふたつ目は一人が触手に犯されて孕まされて、子供が腹を突き破るのをもう一人が最後まで見届けるというの!
ひとつ目は重傷を負いながらも二人とも生きのこれるが、ふたつ目は一人が凌辱されて惨殺され一人が無傷で生還できるのだよ!」
研究室の奥の暗がりにスポットライトがあたり、ふたつの選択を実行するための部屋がガラス越しに浮かび上がる。
「どっちにする!?早い者勝ちだぞ!」とけたけた笑うのが響くも、ユキは興奮して「こんな選択肢を与えられたのははじめてだ!」とうれしそうに。
「全員生還のヒントになるかもしれない!」とふりむくも、俺の顔を見て言葉をなくす。
【パンツを被った魔王は「パンツ泥棒め!」と泣き叫ぶ勇者を愛したくてしかたない】
山あり谷ありの長い長い旅を経て、やっと魔王城へ。
体力と魔力を温存しながら城にいる魔物を蹴散らし、いざ魔王との最終決戦。
このときのために万全を期したはずが、想像をはるかに上回って魔王は強大な力をふるい、まるで歯が立たず。
気がつけば、仲間は全員息も絶え絶えに倒れ、体力と魔力がつきそうながらに辛うじて立っているのは勇者たる俺だけ。
「こうなったら俺の命と引き換えに必殺技を・・・!」と睨みつけ身がまえるも、魔王は悠々と笑ってみせ、おもむろに懐からなにかをとりだした。
高く掲げてみせたのは赤いパンツ。
戦闘中に魔王がパンツを持ってみせるという、場ちがいで間ぬけなさまに呆気にとられるも、すぐにはっとして「おまえがパンツ泥棒かあああ!」と絶叫。
勇者として旅をはじめ、一年経ったころのこと。
占い師にラッキーカラーとして教えられた赤色の愛用パンツが紛失。
そのあとも定期的にパンツが消えて「熱狂的ファンじゃね」とはじめは仲間も笑っていたが、半年もつづくとなると不気味がり、パンツ泥棒を捕まえようと。
仲間で順番に見張りをしたり、魔法やアイテムを駆使して罠をはったりするも犯人は見つからず、魔王城にはいる前、三日前もどこへやら。
それが、まさか魔王の手中にあり、全滅の危機を前にして見せつけられるとは。
「ホモ!?俺をおかずに!?魔王が勇者を!?ていうか変態!まさか俺を・・!」と頭を混乱させつつ「俺のパンツごとエロ糞魔王を消し去ってやる!」と必殺技を発動させようとしたのだが。
こちとら死に物狂いというのに魔王は余裕綽々に笑ってみせ、パンツを口に含んだ。
そりゃあ気色わるかったが、見よがしにしゃぶしゃぶされて、なぜかフェラされている感覚に陥り、いや実際、股が濡れて勃起もして「ぅああ、あふ、んはあぁ・・・!」と力なくへたりこんでしまう。
【巨乳侯爵は母を恋しがる第五王子に揉まれて吸われてしゃぶられて背徳感まみれの快楽に溺れてしまう】
会社勤めしながらアマチュアで柔道家として活動。
そんな体育会系リーマンの俺とは無縁の乙女ゲームに転生。
別れた彼女がゲームにはまって、よくプレイ画面を見せられ解説されたから大体は知っているが。
モブらしい侯爵になったのはいいとして「巨乳侯爵」とあだ名がつけられたのは不本意。
もちろん転生をしてから容貌は変わったものの、年は同じ二十五才、なぜか厚い胸板だけは健在。
この世界の貴族は運動をあまりしないせいか、だらしない体型が多いし、軍関係者がいても前世より食事の栄養分が足りないせいか、俺ほど肉つきがいいのはいない。
おかげで用意された装束は胸だけがきつくて、ボタンを弾きとばしたほど。
今はあらためて寸法したのをオーダーメイドでつくってもらっているところで、それができるまで、しかたなく襟を開けている。
男の貴族が襟を開けて胸の谷間を覗かせるのは、貴族社会において下品らしいとはいえ、だれも文句をつけてこず。
「巨乳貴族」とかるく笑い者にしつつ、今まで見たことがないだろう胸筋に感心しているようなので「ま、いっか」と呼ばせたいようにしたものの、なんと俺の巨乳ぶりが王の耳にもはいったらしい。
ある日、呆れるような王からのお達しを受けた。
「第五王子が亡き母親を恋しがり、お前の胸を求めているからその体で慰めてくれないか?」という。
第五王子はたしか十八才。
この世界は十七才で成人というのに、そうでなくても母親のお乳を飲みたがる年であるまいし。
体が大人になりかけの男を「よーしよし」とあやして、お乳を吸わせろってか?
そりゃあ想像してげんなりしたが、王の命令に背いたら、どうなるか分からず、しかたなく城へ。
果たして、引きあわされた第五王子は、見た目が十四、五才の金髪青目の美少年。
「そうか、ショタ枠だったか・・!」と思いだして、さらにげんなり。
元カノ曰く、乙女ゲームにはかならず一人、少年がいて「合法ショタよ!」らしい。
十八禁だからエッチシーンもあり、ショタならではに、ヒロインが筆下ろしをしてやるのだとか。
あいにく元カノは俺のような男らしいキャラが好きだったから、第五王子にはほとんと、かまわず、おかげで知識がない。
「ぶっとんだキャラじゃなきゃいいが」と思うも「すみません、どうも父上が突っ走ってしまい、理不尽な命を与えたようで・・・」と見た目に反して大人びた口調に気づかいぶり。
【負け犬のサラリーマンだって誉めて甘やかされて抱かれて愛されたいんです】
大企業に就職してエリート出世街道を闊歩していたはずが。
同期のライバルに手柄を横どりされた挙げ句、まんまと罠にはめられて会社の裏切り者扱いに。
おかげで窓際族になって、慕ってくれていた同僚や後輩には「会社の面よごし」と軽蔑され、目をかけてもらっていた上司には「口八丁の詐欺師め」と痛罵される日々。
冤罪による悪評は業界に広げがっているに、転職したくてもできず「田舎に引っこむか」と考えるも、同期に蹴落とされた悲しみをいまだ引きずり、なかなか重い腰をあげられない。
虚しさを噛みしめながら、今日も今日とて無為にネットサーフィン。
あるブログを読んでいたら、まちがって広告をクリックしてしまい、急にアダルトな動画が流れだした。
エロ広告だったようで、しかも男同士の。
ノーマル(だと思う)俺はぎょっとして、部屋は無人ながら、慌てて広告を消そうとしたものの、つい見いってしまい。
「ああ、かわいい。ほんときみは、かわいいね・・」と胸を揉まれて、恥ずかしそうに悶えつつ、あんあん先走りを溢れさせている。
そのあとも男役はひたすら誉めて丁寧に愛撫をして相手の反応をうかがい、体を気づかって挿入。
同期に騙されて濡れ衣まで着せられて周りから蔑まれ冷たくされて、踏んだり蹴ったりだからか。
俺にはその気がないとはいえ「かわいい」「いい子」「よくできたね」と誉められて快感に浸っている男が羨ましくなり「いいなあ・・・」と呟いてしまい。
「先輩ってゲイだったんですか」
急に背後から声がして、瞬時にノートパソコンを叩きつけた。
振りかえれば、紙の束を持った後輩の黒島が。
前髪で顔を隠すようにし、太い黒縁めがねをかけて、いつもうつむきがちで猫背で小柄。
見ためどおり陰気くさいおたくなれど、俺と好きなアニメが同じで意気投合し、今も交流はつづいている。
そう、俺が窓際族になっても態度を変えなかったのは黒島だけ。
今も飄々として「いい店、紹介しましょうか」なんて。
こちらは試し読みになります。
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