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第18話

「まあ、趣味程度でサッカーするのには問題ない怪我だから、別に良いんだけどね」 「僕もそういう経験あったから、少し分かるかも。真っ直ぐ続いてる道が、目の前から突然消える恐怖、今でも覚えてる。すごく怖くて、辛かったよ」 「そっか……そうだね、辛かったな」 遠くを見つめる圭太。 「でも、今日圭太を描いててすごく楽しかった。辛いことがあっても、それでも前向きに考えられることって、そう簡単にできる事じゃないと思う。それって、凄い事だよ」 真剣にそう言って、圭太を見た。 少し驚いたような顔をして、ふ、と笑う。 「てか、俺の事いきなり呼び捨てなんだ?」 「ああ!これはその、なんていうか」 慌てる僕に、圭太が可笑しそうに笑った。 「別にいいよ。そっちのが嬉しい」 「う、うん」 あはは、と楽しそうに笑う圭太に、吊られて僕も笑う。 そこに大きな影が近づいて来た事に気づいて、振り返るとしゃがみこんでスケッチブックを覗き込む聡介がいた。 「何してるんだ、二人で」 すこし機嫌の悪そうな声色に、理由が分からなくて首を傾げたくなる。 「わ、でた。柊くんのストーカー!」 「俺は柊が心配なだけだ。ていうか、サッカーの授業をサボるな。さっさとあっちいけ」 無理やり圭太の腕を掴んで立ち上がらせる聡介に、不快そうに眉を顰める。 「はー?柊くんと俺は両思いなの。このスケッチブックが証明してるじゃん。ほら俺の事ばっかり描いてある。何だっけな?好きなのもを書くって言うのが授業テーマなんでしょ?」 嬉々として聡介を見て、にい、と笑う圭太。 なんという意地の悪い笑みなんだろう。 「っ!早く行けよ。こっちの授業の迷惑だ」 圭太の背中を軽く押して、しっし、と手を振る聡介に、圭太が睨む。 「わかったよ、たく。またね、柊くん」 ニコッと笑って手を振る圭太に、僕も手を振り返す。 その様子を面白くない様子で睨む聡介の視線が痛い。 圭太が渋々と走ってコートへ戻っていった。チームの仲間達になにか文句を言われて、苦笑している。 それを見て、くす、と笑う。 「柊は、なんでアイツを描いてたんだ?」 そう聞かれて振り返ると、迫るように近づいてくる聡介。驚いて後ずさりするけど、その分距離を詰められる。 「え、楽しそうにサッカーしてるの、良いなって思って……」 「それなら、別にアイツじゃなくたっていいだろ?スケッチブック、アイツの絵ばかりじゃないか」 トン、と太い木の幹に背中がぶつかって、これ以上距離を取れなくなる。 構わず近づいてくる聡介と、距離が縮む。 聡介が顔の横に手をつく。 近すぎる整った精悍な顔に、心臓の鼓動が早くなる。 「アイツが、好きなのか?」

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