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第21話
ザアア、と窓の外では大雨が振り続ける。
僕と聡介は教室に戻って避難した。
「美緒は、良かったの?」
「あいつん家近いからな。傘も美緒に借りてきた」
ああ、と納得する。
それであのカラフルな虹色の傘だったのか。
「濡れてる、じっとして」
聡介がハンカチで頬や首を優しく抑えるように拭いてくれる。
また、この前と同じだな。
「ん、」
心地よくてされるがままにジッとして眼を閉じる。
どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
聡介は美緒の事が好きな筈なのに、勘違いしてしまいそうになる自分を卑しく思う。
「柊……」
名前を呼ばれて、目を開ける。
ぐ、と顔を近づけて首を傾げる聡介。
息を飲むほど整った目鼻口。
「な、なに」
綺麗だな、ぼんやりとそんな事を思う。
頬をする、と撫でられてかかる息が擽ったい。
「んっ、!」
唇に唇が触れて、目を見開いてフリーズした。
「好きだ」
一言、はっきりと鼓膜を揺らした言葉。
拍子抜する僕に、聡介がふ、と目を細めて笑った。
「え、え?」
起こったことに処理が追いつかない。
聡介は美緒が好きな筈じゃ無かったのか。
好き?聡介が、僕を?
「ぼ、ぼく?僕が、好きなの?」
口に出すと突然恥ずかしくなって、耳まで熱くなる。
「好きだよ」
「ほん、とに?」
「何回も言わせるのが趣味なのか?」
苦笑して眉を下げる聡介に、大きな手で頬を撫でられて、じんわりと胸が熱くなる。
「好きだ、柊」
でもその言葉に答えることに戸惑う。
聡介は僕が描いた漫画の主人公で。
でも、目の前にいる聡介はちゃんとこの世界で現実を生きている人間で。
そして、聡介に好きだと言われて、心が満たされる自分がいる。
頭がこんがらがってパンクしそうになる。
「返事は後でもいい」
頭をぽん、と撫でられる。
「う、うん」
戸惑いながらも、僕は頷いた。
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