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「松下、頼みたいことがある」 「なんでしょうか」 「私の服を何着か愛賀宛てに送っておいてくれ」 「はい、かしこまり──⋯⋯正気ですか?」 至極真面目な顔をして返した。 「おかしな発言だったか」 「いえ、ただ今までの社長らしからぬ大胆な行動だなと思いまして」 「⋯⋯おかしいと思うのなら、はっきりと言ってくれてもいいのだが」 「いえいえ、姫宮様が喜ばれるといいですねー」 棒読み加減で言った松下が「それで、私が適当に見繕ってもよろしいでしょうか?」と訊ねたのを、「任せる」と返した。 「では、やっておきますね」 一礼した松下は部屋から出て行った。 あの反応だとやはりおかしな命令だったのだろう。 だが、松下がそう思う隙がないぐらい好きと言えばいいと助言したのだからしたまでだ。 口で言ったわけではないが、御月堂なりの「好き」を。 それに発情期の時ではあるが、愛賀が欲しがっていたから、そうするべきだと思った。 普段の愛賀が何か欲しがることがなかったから、ここぞとばかりと思ったのだが。 何が正解かは、見当がつかないが。 「物は試しだ。反応を伺うとしよう」 ──その後、松下を通じて返事代わりに送りつけた御月堂の服に、姫宮を始め、安野達が困惑したのは言うまでもない。

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