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第1話 金曜日の情事は無いけどお泊まりデート

先生の言葉も上の空で、窓からの景色に目をやる。 友達がほんの少し開けた窓から強い風が吹き込み、窓の外の木がザワザワ揺れて葉擦れの音が騒がしい。 パタンと、音を立ててとうとう窓を閉めてしまった。 部屋はまた、閉塞感に満ちている。 まあ、閉塞感と言ってももうすぐ卒業なので、どちらかと言えばみんな開放感に満ちている。 卒業したら、次は大学だ。やることは変わらない。勉強、勉強だ。 今日は金曜日。 ああ、約束の金曜日だ。 授業が終わると、担任のタチ公と呼ばれる担任が、最後にやってくるのを待つ。 立花水城という、女のような変わった名前の先生だから、愛称はタチ公だ。 厳しいけれど、顔だけはいい。 「もうすぐ卒業だからと、気を抜かないように。麻都(あさと)!ボサッとするな!」 「はーい」 ちっ、名指しで言うなっつーの。そんな事わかってる。 イヤってほど聞いた。 僕は帰って行く友達を見送りながら、卒業間近ですっかり減った宿題をして帰るからと居残った。 もう1人、兄弟の多い同級生が、やはり宿題を済ませて帰って行く。 僕はガランとした部屋に1人残ると、5時40分を待って帰り支度を始めた。 薄暗い廊下を歩き、ふと、トイレで立ち止まる。 中に入って鏡を見る。 何か言いたげな自分の顔に、くすりと笑ってトイレの個室に入った。 毎度、いざという時の為に準備だけはしておく。 すでに暗くなった道は、人通りの無い道を選んで歩く。 公園のトイレに入ると、私服に着替えて学生カバンも全部、もう一つのカバンに入れて辺りをうかがい外に出た。 この公園は、神社の中で周囲に家がなく、夕方は子供もほとんど遊んでいる姿を見ない。 もう少し時間がたつと、密かに睦み合う男女が車でやってくる。 僕は、駐車場の目立たない場所に停まっているグレーの車に向かった。 後ろのドアを開けると、詰めていた息を吐く。 「水城、待った?」 「いや、来たばかり。出すよ」 「うん」 運転席の彼が、静かに車を出した。 「どこに行く?」 「海が聞きたいな」 「波の音?いいね。テイクアウトでバーガー買って行こうか」 「うん、今夜泊まっていい?」 「いいよ、ゲームしよう。新しいの買ったんだ」 「ゲームもいいけどさあ。セックスは?」 「まだ早い。まあ、キスくらいなら」 「ケチ」 「もうすぐ卒業なのに、何言ってんの。麻都(あさと)は一昨日(おととい)18になっただろ? 誕生日のお祝いしよう」 「じゃあ何で泊まりに誘うんだよ。僕はやっと18で、やっとって思ったのに。 もう中3の終わりからだよ?付き合ってさ」 「あーもう3年ちょっとかー、長かったなあ」 長かったなあじゃないってぇの。その気も無いのに泊まりに呼ぶなよ…… 僕はこの日の為に準備してきたんだ。 パンツもTバックのエッチなのはいてきたのにぃ! このわき上がる感情をどうしてくれる! 僕らはゲーセンで出会った。 対戦を楽しみ、同じ趣味で気があって、何度か一緒に遊ぶうち次第に2人で会うようになっていった。 水城はオシャレでいつもラフな格好で若く見えて、仕事が忙しいって言いながら、時間を作って遊園地も行ったし、ちょっと遠いイベントにも普通に一緒にホテルにも泊まって割り勘でホテル代も払って、 本当に、ただのいい友達だった。 でも、 僕は、次第に水城を意識し始めた。 中3卒業して高校入学前だった。 ゲームのイベントでホテルに泊まった時、近くに温泉があるって遊び半分で一緒に風呂へ行った時見た彼の裸が、妙に目に焼き付いた。 ツインの部屋で、隣のベッドに寝る彼に気づかれないように、自分の身体の変化に気がつく。 何度も寝返りを打っても熱が静まらない。 僕はとうとう夜中にトイレに入ると、マスターベーションをしてしまった。 身もだえる身体を持て余してたまらずバスルームに入り、下着を下ろしてトイレに座ると激しい息遣いが聞こえないようにタオルを噛んだ。 こんな、こんな気持ち初めてで、僕はどうしていいのかわからず必死でペニスをこする。 でも、初めての事に、痛いだけでなかなか上手く行かない。 僕は、夢精はあってもどこか恥ずかしくて、中3になってもマスターベーションなんてしたことがなかった。 どうしよう、どうしよう。 ああ、ああ、こんな気持ち、激しすぎて僕は耐えられない。 まるで、身体に火がついたようで、水城さんの裸体が目に浮かんで離れない。 噛んだタオルの端を顔に押さえつけ、涙でぐしゃぐしゃの顔を覆う。 ひっく、ひっく、 しゃくり上げて抑えきれない気持ちに抗っていると、ドアがコンコンと鳴った。 僕は恥ずかしさに泣きながら、とうとう鍵を開けてしまった。 「麻都(あさと)……上手く出来ないんだね」 コクコク何度もうなずくと、下を脱がせて隣の浴槽に入れて膝立てさせる。 「大丈夫、大丈夫だよ。リラックスして。出したらおさまるからね」 「うー、うー、」 タオルで顔を押さえていると、水城さんが洗面台に置いていたクリームを少し取って、僕のペニスにそれを塗りつける。 そして、優しくしごき始めた。 「うっ、んっ、あっあっあっ、んんっ!」 ビュウビュウと、信じられないくらい白いものが出る。 凄く、凄く気持ちいい。 ああああ、気持ちよくて声が抑えられない。 タオルで必死になって口を押さえた。 「うっ!あっ!!んっんっ!ハアッ!ハアッ!ハアッ!アッ!アッ!アッ!アッ!」 ギュッと目を閉じて、腰が揺れる。 水城さんの腕を握り、ぐしゃぐしゃの顔でその横顔を見つめた。 水城さんは、驚くほど真面目な顔で、こんなガキの性処理を手伝っている。 何だかおかしくて恥ずかしくて、じっと見ていると、ふと目があった。 「痛い?」 「水城さん」 「なに?」 「キスして」 「いいよ」 僕の汗で濡れた髪を掴み、そっと唇を合わせてくる。 パジャマの裾から手を差し入れて、僕の身体を撫でてボタンを外した。

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