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第7話 春樹の疑問
「おい? おいおいおいおいおいおいおい?」
「どうしたの、春樹。何を泣いてるの?」
「泣いてないよ。見ればわかるだろ。そうじゃなくて、おい。今さ、急に気づいたんだけど」
「なに?」
「お宮参りの写真、見ただろ。俺達が映ってるやつ」
「うん。見たね。それが?」
「おかしいだろ」
「なにが?」
「お前と俺が、並んでお宮参りしているのが、だよ」
「おかしくないよ。僕はいつでも君の隣にいるよ」
「いやいやいやいやいや、そういうことじゃない。こら、抱きつくな。おい、尻をもむな! 真面目な話なんだよ!」
「もう、恥ずかしがり屋さんだなあ」
「そういうんじゃない! 真面目に聞いてください!」
「はいはい」
「拓斗、誕生日いつだ」
「秋ですけど」
「なんで、そこぼやかすんだよ。はっきり答えろよ」
「じゃあ、春樹。君の誕生日はいつ?」
「春だよ。……あれ?」
「ね。べつにぼやかすつもりはないでしょう」
「……いや待て、おかしいぞ! なんか思い浮かばないぞ、俺の誕生日はいつだ!?」
「だから、春でしょう」
「春のいつだよ!」
「もう。細かいことを気にするなあ。それより、お宮参りがなんだったの?」
「そうだよ! お前は秋生まれ、俺は春生まれで、なんで一緒にお宮参りしてるんだよ!」
「なにか変?」
「変だよ! お宮参りは、生まれてから一か月後にするんだぞ、それが、なんで秋生まれのお前と、春生まれの俺が、同じ日にしてんだよ」
「それにはね、ふかーい理由があるんだって、孝子おばさんに聞かなかったの?」
「いや、なにも」
「しょうがないなあ。じゃあ、教えてあげましょう」
「そんな、ふんぞり返るほどのことでもない気がするが」
「僕はね、生まれつき、体が弱かったんだ」
「うん。それは知ってる。聞いたことあるからな」
「生まれてから二か月は入院してたんだ。母さんもほぼ一緒に」
「え、そんなに悪かったのか」
「そうなの。それで、退院できたのが冬。母さんが元気に歩けるようになったのが春。で、お宮参りなんだけど」
「俺と一緒に、春だったのか」
「そう。だから、あの写真の中では、ほんの少しだけど、僕の方が君より大きかったんだよ」
「わかった」
「なにが?」
「お前が俺よりでかいのは、俺より早く生まれたからだ!」
「……それなら、小学生時代も中学生時代も、君より大きいはずなのに、実際は君の方が大きかったよね」
「そうかもしれない」
「関係ないよね」
「そうかもしれない。ちなみに、今、お前何センチだ」
「図ってないよ、最近。最後に計った時で178だったかな」
「くっそおおおおお! にょきにょきでかくなって! ずるいぞ!」
「春樹は僕の身長、嫌い?」
「……すき」
「うわ! 何するんだ!」
「うふふふふー。背が伸びた分、腕力も強くなったみたいなんだよね。春樹を抱き上げるくらい、楽勝だよ」
「やめろー、おろせー、お姫様抱っこはやめろー!」
「ふふふ。かーわいい。春樹、大好きだよ」
「う。き、キスじゃごまかされないからな!」
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