46 / 141
解毒 その2
カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で。
2人は既に裸になっており、互いの体を愛撫し合っていた。
「互いに」とは言えど、確実にヴェルトの方が優位に立っている。
「カイラ君積極的だね……嬉しいよ」
甘く鳴き続けているカイラの唇を貪る。
するとカイラは更に表情を蕩けさせるのだ。
「カイラ君……そろそろ始めようか」
「始めるって……その、そ、そ、挿入?」
恥ずかしがり、緊張の為に体を強張らせるカイラに対し、思わず笑みが溢れてしまう。
「あのねぇカイラ君。お尻ってのはね、1日で気持ち良くなれるような場所じゃないんだよ」
「でもヴェルトさんこの前僕に指3本挿れられて悦んでたじゃないですか」
思わぬカウンターにヴェルトは赤面する。
「あれは! 夢魔のせいだから! ……だからねカイラ君。うつ伏せになってくれる?」
「えっと……こうですか?」
ヴェルトの言われた通りカイラはゆっくりと身を起こしうつ伏せになる。
首から背中にかけての美しい曲線。
若々しい張りのある臀部。
(……まさか男の子のお尻で興奮する日が来るとは)
「あー……カイラ君あのさ、ごめんね? ウォーターだったっけ? あの魔法使ってさ、自分のお股濡らしてくれない?」
「っ、はい……♡」
カイラは「『ウォーター』」と唱えて粘度のある水を生成すると、それで自身の下を濡らしてゆく。
それがまるで自慰をしているように見えて、視覚的にヴェルトに訴えかける。
「……やりましたよ。あの、ヴェルトさん、これから何をするんです?」
「素股ってやつ」
と言いながらヴェルトは屹立をカイラの太腿の間に挿入した。
「わっ♡ わっ♡」
彼の熱い物が、蟻の門渡りや睾丸に当てがわれる。
「いちいち初々しいよね……本当に可愛いよ。カイラ君、ちょっと足閉じてくれる?」
「こ、こう……ですか?」
期待で胸を膨らませながら、カイラはヴェルトの屹立を挟むように足を閉じる。
「そう。上手だね……動くよカイラ君」
と宣言した後、ヴェルトは腰を動かし、自身の屹立をカイラに擦り付ける。
「わっ♡ わっ♡ わっ♡わっ♡」
初めて味わう感覚に、カイラは戸惑いながらも悦びを感じ始めた。
「男の子相手にやった事ないから下手かもしれないけど……気持ちいいかい?」
「はっ、あ……♡ きもちい♡ です♡」
緩やかな快感がカイラの体をゆっくりと包み込む。
「良かった」
水の音を響かせながら、ヴェルトは動き続ける。
「なんか……っ♡ 挿れられてないのにっ♡ 挿れられてるみたい……♡」
甘く鳴くカイラの背を見下ろしながら、ヴェルトは話し始める。
「カイラ君……僕知識があんまり無いからさ……もう少し勉強するよ。そしたらさ……挿れても良いかな?」
「~~~~ッッ♡」
「カイラ君が痛くならないようにじっくり解してから、奥の方までゆっくりと突いてあげる。そしてゆくゆくは、僕のをすんなり受け入れてくれるようにさせたい」
「いいかな?」と囁かれるだけでカイラの体は反応し、甘美に震える。
蜜が溢れ出し、シーツにシミを作る。
「はっ……はい♡ 時間かかるかもしれないですけど……っ♡」
股に力を入れ続けながら、カイラは目に薄らと涙を浮かべた。
「ありがとう、カイラ君」
2人の荒い息が混ざり合い、空気に溶けてゆく。
しばらくして。
「カイラ君、そろそろ出そうなんだけど……出して良いかな?」
快楽の波に翻弄され続けるカイラは、「ひゃい♡」と舌足らずに答えた。
ヴェルトの動きがさらに速まったのを感じ、カイラは頑張って股を締める。
「出すよ、カイラ君」
熱の籠った声を聞いた後、自身の下でヴェルトの欲望が跳ねるのを感じた。
「カイラ君……」
ヴェルトはゆっくりとカイラを解放し、へたり込んだ彼の頭をそっと撫でる。
「夢魔の呪いって不思議だね。マ……マ? ……まぁ、いいや」
どうやら一晩も経たぬうちに、ヴェルトはマティアスの名を忘れてしまったらしい。
「あの魔導士が言ってたでしょ? 人がどんどん離れてゆくって。でもさ、カイラ君と僕みたいに、逆にくっつく縁もあるんだね」
本当に不思議だね。とヴェルトはカイラの頭を優しく撫で続けた。
***
「おい、見ろよディック! 俺の愛しい愛しいカイラ君と犯罪白髪頭がくっついた!」
マジェスティック邸のとんがり屋根に腰掛けたミキが嬉々としながら、右隣でタバコを吹かしているディックの顔を見る。
「珍しいんですかね」
「あぁ、大体の人間は夢魔の呪いをかけられた人間から離れるんだよ。面倒だからな……そしてやがて、ソイツは射精したいあまりに不特定多数の人間と体だけの関係を持つようになる。1人とくっつく例は久しぶりに見たな」
ディックは口から白い煙を吐いた。
「これでしばらくは安定して精気にありつける。助かるわぁー」
と実に嬉しそうなミキは、ディックの姿全体を見てある事に気付く。
「ん、待てディックお前……その指どうした?」
ディックの左手の小指に包帯が巻かれているのだ。
「これですか?」
ディックは自身の左手を見ながらこう答えるのだ。
「折ってもらったんです」
「悪い、聞き間違えたわ……折っちまったんだよな?」
「いや、折ってもらったんです」
聞き間違いでなかった事を知り、ミキは眉を顰める。
「……お前のご主人にか?」
ディックは平然とした様子で頷いた。
「……お前、それは流石に心配になるぞ? ご主人に虐待されてんのか!? モンスター愛護団体に訴えるか!?」
本気で心配してるらしく、ミキは真剣な視線をディックに向ける。
「いえ、虐待とかじゃないですから」
ディックは短くなったタバコの火をもみ消しゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、俺はそろそろ……戻らねえとアイツが心配するんで」
「おう」と困惑しながらも返事をすると、ディックの体が無数のコウモリとなり青空へ消えて行った。
「……大丈夫かよ、あいつ」
ともだちにシェアしよう!

