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第二章 18話 偵察
「俺がアキトくんを乗せて王都に出向く」
琥珀色の髪をなびかせて穏やかなアンバーの声があたりに響く。
「なっ?!何を言い出すっ?だめだ!いくら優しく慈悲深い私でもそれだけは許さないよ!アンバー。君はすぐに単独行動をとろうとする。この私が認めない限り勝手な行動はさせないからね!」
ホワイトが必死でアンバーを止めにはいる。
「なに大丈夫さ。俺が土に擬態できるのはお前も知ってるだろう?」
「ばかっ!擬態が出来るとかそんなことじゃないっ!もしも本当に王都に不穏な動きがあったらお前の事だ!誰よりも先に突っ込んでいくでしょうが!!!」
「……もしもの話じゃないか。」
「やめてくれ。普段の視察などではない。戦だったら、お前に何かあったら……私は生きてはいられぬ……」
ホワイトさんの悲痛な表情からどれだけアンバーさんを大事に想ってるかがうかがい知れる。
「アンバーさん、今回はここにとどまってください。竜騎士団として動かないほうがいいというのはわかりました。なおのこと、僕が動いた方が良いでしょう?僕なら見習いだし……」
「アキトっ。それはダメだ!ベットに縛り付けてでも行かせねえ!」
アキトの声をエドガーが遮った。
……エドガー。なんでベットなんだよ。皆がいるのに恥ずかしいだろっっ。
「ホワイト。俺が言い出したら聞かないのはわかっているだろう?」
「……」
アンバーが静かに言い聞かすようにホワイトに詰めよる。
ピリっとした空気が流れた。
「はぁ、変な噂が出てるから嫌な気はしていたんだ。ならば魔法契約をしてくれ」
先に折れたのはホワイトだった。
「あぁ。お前の気のすむようにしてくれてかまわない」
アンバーの緊張がほぐれる。細い目がさらに細くなりホワイトを見つめる。
「魔法契約?」
アキトが首をかしげると足元で声がした。
『相手の行動を縛る契約でしょうね』
いつの間にかクロが傍に来てするするとアキトの足に尻尾を巻きつかせ獣人に戻る。
「あまりに騒がしいので来てみたら、もめてるようですね?」
「それが……」
簡潔に今起こってる出来事をクロードに聞かせる。
「それでエドガーが引き攣った顔になってるんですね?」
「うるっせい!」
エドガーが苦虫をつぶしたような顔になった。
「黒猫は獣人であったのか?」
ホワイトが唖然としてこちらを見てきた。
「訳あってこの姿でおります。私はクロード。アキトのもう一人の伴侶です」
「エド。王都はまだ無事でしょう」
クロードが腕を組みながらエドガーに声をかける。尻尾はアキトに絡めたままだ。
「なんでそんなことが言えるんだよ」
「エマージェンシーコールがまだ届いてないからです」
「エマージェンシーコール?」
おおっ。なんかドラマで聞いたことがある。
「王都の城で何かがあればこちらに緊急連絡が入るようになってるのですよね?」
クロードがホワイトに向かってにっこり微笑む。なんだか怖いよ。どうしたんだクロ?
「……そうだ。良く知っておるな?」
ホワイトが片眉をあげて答える。
「この城と王都の城はリンクしているはず。本当はどこかでつながっているんでしょう?」
「何を根拠にそう思うのだ?」
ホワイトの美しい顔の眉間に深いしわができた。
「王様は動けない状態でしたが、常に竜騎士団の情報は入ってるようでした。でも城の周辺で竜を見たことはありません」
「だからなんだというのだ。定期的にここにはロックワイバーンが物資を届けに来る。その時に書簡を預けているのだとしたら?」
「いや、まて。俺がこの剣を。力の剣を譲渡されたとき、親父はすぐにこちらに了承を得たと言っていた。馬車に揺られて3~4日かかるほど悠長なことはしなかったぜ!」
エドガーが二人の間に割り込んできた。
「まったく。忍耐強い私でもこれには困りましたねえ。仮に繋がってるとして、貴方には教えられませんよ。ユリウスの弟君」
「なんだってんだ!どういうことだ!そりゃあ!?」
「ドラクルは本当はユリウスを団長にしたかったのではないか?だからお前にこの城の詳細を教えなかったんではないのか?」
「そんな……親父はそんなことはしねえ!」
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