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第二章 22話 疑惑

「かわいいね~。飼いたいなあ」 「どっから迷い込んだのかな?外からは入れないはずなのに」 「でも結界が張られたのは2日前からだからその前にすでに入り込んでたんじゃない?」  なるほど、あの結界は2日前に張られたのか。  どうも口調からすると結界の一部にコーネリアスが使われてるなんて思ってないようだ。 「怖い兵士たちに見つからなくって良かったね~」 「そうそう!なんだか急に兵士が増えてさ怖いったらありゃしないよ」 「それに同期の獣人の子が急に辞めさせられちゃうしなんかおかしいよ」 「きっとあの直訴に来た三人組の獣人のせいなんだろうね」 「うん。王都を反乱させようとしたって聞いたけどそんな悪い人には見えなかったんだ」 「たまたまあの三人が獣人だっただけでココに働いてる獣人の子らが悪いわけじゃないよ」  侍従達はうつむいて今にも泣きそうだ。  僕は足元にすり寄ってみやあと鳴いた。 「猫にもわかるのかな?ぼくらの気持ちが」  皆がかわるがわる僕をなでててくる。 「この子賢そうだからね。なんだかアキト様に似てるね」 「あぁ。ほんとだね。……バレットは元気にしてるだろうか?」  僕はギクッとした。バレットは僕の専属の従者だ。  少し前まではここで彼らと一緒に仕事をしていたはず。 「うん、きっと元気にしてるよ。連絡が取れないのが残念だけど」 「さあ、そろそろ仕事に戻らないと」  これ以上彼らといると逆に迷惑をかけるかもしれない。  僕は彼らの傍を離れて走り出した。 「あ!待って。怖い兵士さんのところには行っちゃだめだよ」 「捕まったら何をされるかわからないからね!」  僕は一度だけ振り向いて みゃあ と鳴いてその場を後にした。  城内の警備自体は厳しくはないようだ。きっと結界を張ったせいで気が緩んでるんだろう。  兵士たちは皆うつろな表情だった。  僕は幽閉されてるというユリウス様が気になった。  エドガーのお兄さんなら僕の義兄さんでもあるのだ。なんとかしてあげたい。  早くここを離れなきゃ。でもどこを走ってるのかわからなくなってきた。 「ふみゃ……」  つい情けない声で鳴いてしまうとザっと物音がした。  驚いて身体を丸めて固まってしまうと首根っこを優しくくわえられた。 『探しましたよ。私が戻るまではウロウロしないように言っておいたではないですか』  このくわえ方はクロードだ。ほっとしたら力が抜けた。 『ごめん。クロ。でも侍従の子らがユリウス様が幽閉されてるって言ってて』 『やはりそうでしたか。それなら見当がつきます』  途中調理室から出てきたエドガーと合流しながら情報交換をした。  エドガーがみた食糧庫には数年分の備蓄が用意されていたらしい。  そんなに必要なのだろうか?ここで籠城するつもりで貯め込んだのかだろうか? 『エド、中身は確認しましたか?』 『え?積み重なった箱の中身か?食料ってかいてあったが?』 『一部は武器かもしれません』 『な?!!』  まさか、武器を隠し保管させてる?それって王宮内から反乱させるため?  やはり内部からこの王都を壊すためか?  急に苦しくなってきた。長時間擬態をつづけたせいか?  僕の様子に気づいたクロ―ドがぺろぺろと頬をなめてくれた。 『もう限界でしょう?あとは人型でなんとかしましょう』  クロードの言葉にホッとして僕は魔法を解いた。 「ん~~っ」  エドガーが背伸びをする。肩をコキコキならして腕を回した。  僕は脱力感がひどい。魔力を消耗したからだろうか。  黒猫のクロは尻尾を僕の足にからませた。 「やはり人型のアキトに触れないと獣人に戻るきっかけがとれないようです」  でも、ドラゴン城よりは効力が薄れてるようで僕にぴったりくっつかなくても傍に居るだけでいいらしい。 「まずはユリウス様に会いに行きましょう」 「どこにいるのかわかるの?」 「おそらく地下牢ではないかと」  地下牢なんてあったんだ?この間まで王宮にいたくせに僕は何もこの城の事を知らなかったんだなと思うと情けなくなってきた。これで僕も王族なんて言えるんだろうか?  塔の下から地下牢へと続く階段があり入り口には兵士が二人見張っている。  クロードが呪文を唱えると兵士二人がに壊れた人形のようにドサっと倒れた。  その隙に僕らは階段を下りて行く。  薄暗い中、小さな小窓から光が漏れていた。傍に寄るとそこには……。  鉄格子の中でやつれた表情で鎖につながれたユリウスがいた。 「……なんで……鎖なんか」  エドガーが悲しんでるのがわかる。 「クロ!ユリウス様を助けてあげて!」 「兄貴っ!しっかりしろ!!」  開錠の魔法で扉をあけるとユリウスが焦ったようすで問いかける。 「エド……?何故・・・・・・戻ってきたのだ?ここにいてはダメだ」  すぐにクロードが防音結界をはった。 「しばらくの間、ここには誰も近寄れません。何があったか話してもらえますか?」  ユリウスによると僕らがココを離れてしばらくして直訴に三人の獣人が来たらしい。  地方にいる貴族たちをもっと厳しく取り締まってくれと言う内容だった。  当初はコーネリアスが担当して話を聞いていた。  本来なら王にも話を通すところなのだが、僕が居なくなった途端に王の病状が悪化したらしく以前のような寝たきりになってしまったという。  そのためコーネリアスは直訴を保留にしユリウスに相談しようとしたらしい。  しかし、それが裏目に出た。    何故か直訴に来た三人が突然暴れだしラドゥを人質にとってクーデターを起こしたのだ。  それをオスマンがとらえ、首謀者はコーネリアスとなったとのことだった。 「俺はコーネリアスを信じている。アイツは俺や王を裏切るやつじゃない」  ユリウスはコーネリアスに加担とした疑いの元地下牢に繋がれてるのだという。 「おかしいよ!何かが変だよ!」 「兄貴、コーネリアスが今どうなってるのか知っているのか?」 「おおよその事は……俺とコーネリアスは魂を繋げる契約をしている」 「なんと。ではコーネリアス様とユリウス様は生死を共にしてるのですね」 「あいつをただでは死なせない!」 「しかし、クーデターを起こした犯人を手際よくオスマンが捕まえたというのは何か出来すぎていますね」 「ああ。あの野郎、またなんか汚いことしたに違いねえ!」 「それは人を操る力を使ったということでしょうか?」  

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