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こんな気持ち流れればいいのに
目を開けるとそこには居なくて、1人分空いたスペースが少し寂しい。
さっきまで人の気配があったのに布団はすっかり冷たくなっていた。
シャワーを浴びようと思い身を起こして風呂場に向かう。
シャワーの水と同じくこの思いも流れればいいのに。
俺、鳥下大和にはセフレがいる。
名前はレン。きっかけはマッチングアプリだった。恋人に振られてヤケになってインストールしたアプリ。
いわゆる、そういう目的のアプリで暫く恋人は遠慮したい俺には丁度良くて使っていた。向こうからいいねを貰ってトークをしているうちに気になって会ってみたらめちゃくちゃイケメンで驚いたのが第一印象だった。写真では口元しか映ってなくてそこだけ見ても顔は整っているんだろうなと思ってはいたが。アプリなんかしなくても相手いるだろと思ったけど人には事情があるだろうから聞かないことにした。そこからはそういう関係になって1年くらい経った。関係を割り切ろうと思ったがまずビジュアルから入って次に性格…とあれよあれよと好きになってしまった。好きになってしまったからと言って告白するつもりは全くないし相手も俺なんか恋愛対象としては見ていない。これでいい、これでいい。何度も自分に問いかけて自制をする。恋愛なんてもうするつもりなかったのにまた人を好きになってしまった。つくづく恋愛脳で呆れる。
だからいつも思うのだ。シャワーの水ごと全て流れてしまえばいいのにって。
◇◇◇
「今日からお世話になります。日和と申します。これからよろしくお願いします。」
今日から新人が来るとは聞いていたがよりによってなんでレンがいるんだ???
しかも何が最悪ってレンの教育係っていうのが辛い。
あまり目線はそっちに向けずに明後日の方向を見る。その後の朝礼なんか所長の声なんか何も入っては来なかった。
「日和です。今日からよろしくお願いします。」
「鳥下です。こちらこそよろしくお願いします。」
人間って不思議だな。仕事場だと思うと感情が無になる。
顔を見た時動揺しかけたが出来るだけ自然な笑顔で自己紹介をした。レンも一瞬引き攣った顔をしていたが無事に自己紹介を終えた。てか笑顔が眩しくてここが職場じゃなかったら暴れまくっていた。危ない、命の危険がある。
時間が経つのは早いものでもうお昼休みになった。
昼休みになった途端、女性社員がレンの近くに来て昼食の誘いをしていた。やはりイケメンは違いますね。
日和がちらりと俺の方を見て様子を伺う。
「昼行ってきていいよ、昼休み終わったらここ戻ってきて」
「分かりました、ではお昼行ってきます」
もしかしたら一緒に昼食べる流れになるかと思ったが案の定ならなかった。というか俺たちの関係じゃ仲良くなる必要はないかもしれない。
スマホから音がしてメッセージの通知を見るとさっきまで話していた相手からだった。
夕飯一緒にどうかという内容でやっぱりレンも思っていることは同じかもしれない。
俺も話したいことがあるので誘いに乗ることにした。
◇◇◇
仕事が終わって約束通り夕飯を食べて駅に着くまで一緒に帰ることになった。
こんな風に一緒に肩を並べて歩く日が来るとは思わなくて嬉しさと緊張が入り混じる。
「…」
「…」
会話も何を話せば良いのか分からなくてとりあえず当たり障りのないことを口にした。
「何回も言うけどまさか仕事場が一緒になるなんてなーびっくりした」
「ほんと、まさかですよね…俺もびっくりしました。しかも本名初めて知ったし笑」
「だよな〜笑あのさ、呼び方なんだけど日和って呼んでいい?」
「全然いいですよ、名前でも構わないし」
「会社でそれはまずいだろ…」
「でも2人きりのときはレンでいいですから」
「分かった」
思ったよりフランクに接してくれている。良かったと胸を撫で下ろした。急にレンが立ち止まるので立ち止まった先を見てみると
「…って、ここラブホじゃねーか」
「鳥下さんもそのつもりじゃないんですか?」
顔を覗き込まれて不思議そうな顔をする。本当にそういう対象にしか見られてないんだと痛感する。
「それとも帰ります?」
「っ…いいよ」
日和よりも背の低い俺を覗き込むように目線を合わせてニヤリと笑いながら問いかけられる。
そんな風に求められたら俺は拒めない。
事が終わったらレンはシャワーを浴びてあっさり帰っていく。
もう慣れたけど1人分空いたスペースが寂しい。きっと俺はセフレの1人に過ぎなくて替えが沢山いるんだろうな。少し前に会った時、女性物の香水が香ってきてそこで察したんだ。
「きっつ…」
不毛な恋はどこまでも俺を苦しめる。
早いものでレンが入社してから一ヶ月が経ち教育係も終わりを告げた。
飲み込みが早くて一度教えたことはメモを取り、見返しながら仕事をしていた。会社にとってすぐに戦力になるだろう。教育係を外れることが少し寂しいと思ってしまうのはきっと一ヶ月一緒に居たせいだ。
「鳥下」
「おぅ、浅井。お疲れー」
浅井は同い年で同期だ。仕事のことで相談したりよく飲みに行くことが多い。
「教育係お疲れ〜、日和、仕事の飲み込み早いな」
「あぁ、覚えも早いし、すぐに即戦力になるよ」
「なぁ、お疲れさまってことで今日飲みに行かね?」
「お前、飲みたいだけだろ?」
調子の良い所もあるが俺にとっては良い同期である。常にポジティブな奴で何度助けられたか分からない。
「そんなことないって、いつものとこで良い?」
「いいよ」
お互い仕事の愚痴を吐き合ってストレスを発散する…明日の仕事の活力のためなのだ。そして、日和に対する思いもアルコールで流してしまう。飲んだって変わらないのにこんな日々を繰り返している。
◇◇◇
「鳥下、なんか悩みあるだろ?」
「へ…?」
いつもの居酒屋に来て程よく酒が入ったところで浅井が俺に問いかけた。
「え、何、急に?」
「いや最近、悩んでる顔見るのが多いなって」
図星である。日和が来てから俺は落ち着かなくて動揺している。
やっぱりあの見た目だから女性社員がほっとくはずがなく、話しているところを見ると胸がざわついて仕事に集中ができないし、同じ職場になるとは思ってなかったからいつ関係を切られるのかビクビクしている。もちろんレンが関係を切りたいと言えば応じるつもりだ。嫌だけど無理強いするなんて出来ない。
「…え、えっと実はずっと好きな人がいてでもその人には友達にしか思われてなくて、友達を続けるべきが悩んでるんだよね」
こういうとき浅井は親身になって相談に乗ってくれる。普段は軽い奴だけど頼り甲斐のある同期だ。
「そっかぁ…まずは意識させることが重要だよな」
「意識?」
「今は友達にしか見られてないから2人きりで会ってみたり、相手の好きなものを聞いたりするとか?」
「な、なるほど」
浅井もかなりモテる。だが軽い性格のため、一部では黙ってればカッコいいと言われている。いわゆる残念なイケメンだ。
さすがイケメンのアドバイスだ。早速、実行してみようと思う。
◇◇◇
と、言っても実行に移すまで時間がかかるタイプの俺はかなり迷っていた。メッセージを打っては消し、打っては消しの繰り返し。文章がおかしくないか何度も読み返すたびに訳がわからなくなってきた。
今が1人でよかったと思う。会社の休憩スペースで1人椅子に座りブツブツと独り言を言っている頭のおかしい奴と思われそうだから。
「何独り言言ってんだ?」
「うわああ!!」
不意に声をかけられて大声を出した。振り返ると浅井が笑っていた。
「驚き過ぎじゃね?」
「きゅ、急に声かけるからだろっ…!って…あ!!」
「今度はどうした?」
「ど、どうしよう…この前、俺好きな奴いるって言ったじゃん?相手にメッセージ送ってしまった……送るつもりなかったのにぃぃぃ!」
「まぁじか!送ったのか!」
浅井は何故か嬉しそうな顔をしていた。浅井が声かけなきゃ送らずに済んだのに。
「浅井、何その嬉しそうな顔…」
「こんな顔にもなるでしょ、あんな悩んでたんだぜ?一歩前進じゃん?」
「そうだけど…あぁぁどうしよ…」
スマホから通知音が鳴って画面を見るとレンから返信がきた。
返事はまさかのOKだった。
「ひぃぃ!OKもらってしまった…!!」
「お、良かったじゃん!頑張れよ〜!」
浅井のこの他人事感にイラッときたが怒りをぶつけたってしょうがない。でも成り行きとはいえレンとデートに行けるのはすごく嬉しい。
服何着て行こう…と心の中に思いをしまって午後の業務に取り掛かった。
◇◇◇
早いもので約束の日になった。今日のために買った服を着て待ち合わせ時間に間に合うように余裕をもって行動したら早く着きすぎてしまった。張り切りすぎだろうか。服変じゃないかな。待ち合わせの15分前になった。まだ時間あるしトイレにでも行こうか…
ふと顔を上げると少し遠くの方でレンが歩いているのを見つけた。
遠目で見ても分かる。
頭ひとつ飛び抜けた身長。モデルみたいでカッコいい。
「おはようございます、鳥下さん」
「おはよう」
私服姿は何度も見たことあるのに二人で出かけるんだと思うとドキドキする。
「映画見にいくんですよね?」
「う、うん!…チケット買ったから大丈夫」
「え、マジですか?金払いますよ」
鞄の中から財布を取り出そうとするレンに言葉を紡いだ。
「俺から誘ったから奢らせてくれ」
「…そういうことなら、すみません、ありがとうございます」
「あぁ」
・・・
「面白かったな〜」
「はい、最後にどんでん返しがあるとは思わなかったです」
「ほんとそうだよな!」
ふとスマホを見ると12:30になっていた。
「昼どこで食べようか?」
「この近くにパスタ屋があるんですけどそこにします?」
「じゃあ、そこにしよう」
・・・
外観も内装もオシャレで女性客やカップルが多いみたいだ。
男二人で入ったら浮かないか少し心配した。
こういう所、レンは行き慣れてるんだろうな。別の人と行ってるんだろう。気づいたらネガティブモードになってた。今日は楽しむ日にしようと思っていたのに。
「うわ、美味そうっ…!」
「ここめっちゃ美味いですよ」
一口食べるとトマトソースが口いっぱいに広がり、けれどクリーミーですごく美味しい。
「すごい美味い!」
「ですよね、俺も初めて食べたとき感動しました」
「どのくらいのペースで来んの?」
「そうですね…三ヶ月に一度くらいかな、たまのご褒美に食べるのが美味くて」
「それ、大事だよな」
「鳥下さん、口にソースついてます」
「え、まじで、どっち?」
俺が慌てているとレンの指が口の端に触れた。
「左端についてました」
「あ、ありがと…」
びっくりしたぁぁ…急に口に触れたものだから反応に困ってしまった。
「ふふ…鳥下さん、かわいー」
「?!いや、可愛いはないだろ」
いつもより妙にレンの雰囲気が甘いんだよなぁ。
まるで本当の恋人同士みたいな。
周りにはどう思われてるんだろう。会社の同僚?それとも友達?
それから、映画について話したり、服を見たり、カフェでのんびり過ごしたりしていた。
外を見ると夕方になっていて楽しい時間はあっという間に過ぎていた。
「この後どうしますか?」
「…あ、俺この後用事があって帰らないといけなくて」
「…分かりました。今日、誘ってくれて嬉しかったです。また会社で」
「こっちこそ、付き合ってくれてありがとう!また会社で」
カフェの前でレンと別れてお互いに別方向へと歩き出す。
初めて夜の誘いを断ったことに対してあんな感じでよかったのかなと自分の言動を思い返していた。
でも今の関係を変えるにはこれはきっと必要なこと。
意識してもらうためには一歩を踏み出すしかない。
仕事が繁忙期になってめちゃくちゃ忙しい。あれからレンとは出かけてもいない。メッセージも送れてない。
仕事の話はするけどそれ以上は話せなくてモヤモヤする。こんな自分が嫌だなとつくづく思う。
ガチャリと扉が開く音がして、声をかけられた。
「あ、お疲れ様です」
「お疲れ様、資料取りに来たのか?」
レンだった。少し気まずい。
話しかけようか迷っていると向こうから話しかけられた。
「あ、はい。…鳥下さん、最近俺のこと避けてますか?」
「…え?」
直球だ。ストレートな一撃。
「仕事の話はしてくれるけどそれ以上は避けてますよね?」
「…そんなんじゃない」
「浅井さんとはよく飲みに行くじゃないですか、俺とは行ってくれないんですか?」
「…」
「それに」
「…っ!」
頭を引き寄せられて無理やり目を合わせられる。
「目も合わせてくれない。夜だって付き合ってくれないですよね?」
「…そ、それは…」
見透かすような瞳を向けて俺を見る。唇が近づいてきてすかさず手で塞いだ。
「ここ、会社だから」
「じゃあ、来週の夜付き合ってくれませんか?」
「…忙しくて疲れてるから、ちょっと無理」
本当は今週で繁忙期が終わる。でも休日は寝溜めをしたい。
「鳥下さんて、嘘つくとき首に手を当てる癖ありますよね」
「っ!」
抱きしめている手が徐々に下へ降りてくるところでパッと離される。
「またメッセージするんで」
「だ、だから行けないって…」
断りの言葉を聞かずに颯爽と部屋を出ていった。あんなに捲し立てられるように問われたのは初めてだった。もういっそのこと告白して振られればいいのだろうか。
出会い方が違ったらこんな風に悩まなくて良かったのか、ただの会社の後輩として出会っていれば、、、そう思わずにはいられない。
◇◇◇
「大丈夫か?ペース早くね?」
「ふぁ?まだ余裕だし」
今日はなんだかむしゃくしゃして浅井に付き合ってもらって飲んでいる。
「なぁ、なんかあったのか?」
「…好きな奴との距離の縮め方が分からない、俺の好きな人…日和なんだ
実は会社に来る前からずっと知ってて向こうは友達としてしか見てない…こんな恋やめたい、なぁ、浅井?俺どうしたらいい?」
気づいたら気持ちを吐露していた。酒の力もあってスムーズに口が開いた。こんな話、するつもりなかったのに。
「…だから日和が来てから悩んでたんだな」
「…」
「それさ、俺じゃダメ?」
「え…?」
「俺なら好きなやつをこんな風に悩ませたりしないし、相談に乗ることもできるし…俺と付き合わない?」
「な、何言ってるんだよー 浅井も酔ったのか?」
「冗談じゃないよ、本気」
真っ直ぐに見つめる瞳。落ち着いた声色。
「…ごめん。気持ちは嬉しいけど答えることはできない」
「そうだよな、分かってたんだけど言いたかったんだよ」
「そっか…」
「気まずいかもだけど、これからもいつも通り接してくれると嬉しい」
「もちろん」
◇◇◇
レンに会う日になってしまった。あれから色々考えた結果、結局行くことにした。
そして俺は今日、日和に告白をする。
告白して振られてくるんだ。
待ち合わせ場所に向かうと待ち人が待っていてた。
「レン」
「鳥下さん、よかった…ちゃんと来てくれた」
「そりゃ、来るだろ」
「ふふ、あれ…髪切りました?」
「うん、」
「髪型似合ってていいと思います」
「あ、ありがとう」
変化に気づいてくれることが嬉しいけどなんだが気恥ずかしい。
「ご飯食べに行きますか」
「そうだな」
夕飯を食べ終えて夜景が見える展望台に来た。夜風が心地よくて気持ちがいい。
「ここからの景色綺麗だなー」
「はい、誰かが頑張って残業している明かりですね」
「それ言うとロマンティックにかけるな〜」
「それもそうですね、でも俺最近この場所見つけてたまに来てるんです、景色見てると気持ちが晴れるんですよ」
「分かる気がする…」
悩んでいることがちっぽけなことに感じてまだまだ自分やれんじゃんって思える。
なんだが今なら言えそうかもしれない。
「…鳥下さん」
「レン」
かぶってしまった。どうしよう。とりあえず、レンから言ってもらうことにした。
「誕生日おめでとうございます」
「……え」
誕生日?思わずスマホを確認する。確かに自分の誕生日だった。
「ありがとう…自分の誕生日忘れてた」
「え、忘れることあるんですか」
「いや、最近まで繁忙期だったじゃん?すっかり忘れてたわー」
「確かに忙しかったですよね、あと、プレゼントです」
プレゼントを渡されて中を開けて良いと言われ開けると、腕時計が入っていた。
「わぁ…これ、本当にもらっていいの?」
「はい」
「ありがとう」
レンからの初めてのプレゼントに嬉しくてつい笑みが溢れる。
「あの、さっき何を言おうとしてたんですか?」
「えっ、あー、誕生日祝ってくれることが衝撃的で忘れたわ〜」
「マジですか?めっちゃ気になるんですけど」
「思い出したら後で言う!」
逃げてしまった。誕生日を祝ってくれることがすごく、すごく嬉しくて。
「時計、どう?似合う?」
「はい、とても似合います…あの時間まだあります?ずっと一緒にいたいんですけど」
「…大丈夫」
◇◇◇
「風呂、ありがとう」
「いえ…こっちきて下さい」
レンの家には何回か来たことがあるけどやっぱり緊張する。
足の間に座る形になりいつもより密着する。ギュッと抱きしめられて心臓が高鳴る。
「すごい心臓の音…緊張してます?」
「うん、そうみたい…あのさ、後で言うって言ってたこと今言っていい?」
「はい」
「あのさ、俺…レンのことずっと好きでか、体だけの関係って割り切るつもりでいたんだけどどうしても無理で、俺と付き合ってほしい」
言えた。やっと思いを口にすることができた。緊張して声が震えた、返事を聞くのが怖くて俯く。
「…俺も鳥下さんのこと好きです。出会ったときからずっと、完全に片想いだと思ってました」
「ほ、ほんと?」
「ほんとです、ね、体こっち向けます?」
顔が熱くて絶対変な顔になってる自覚はある。落ち着かなくてドギマギしてしまう。
「顔、真っ赤…すぐに顔に出るのかわいいですよね」
「しょうがないだろ…」
頬に左手が添えられてキスが唇に落ちる。
「…そういえば、キスまだしたことなかったな」
「私的な考えなんですけど、キスって恋人同士の特別なものって感じがするので…できなかったんです」
少し苦しそうな表情で笑ってぎゅっと抱き寄せられる。
「…あの、さ 二人きりのときは名前呼んでほしい、あと敬語もなしでいいから…それが俺が思う恋人同士の特別」
「分かった…大和さん」
「うん」
「大和さん」
「ふふ、なに?」
「大和さーん」
「だからなんだよ、呼びすぎ笑」
「何度だって呼ぶよ、俺の大切な人だから」
口付けられて次第に深いキスへと変わっていく。
こじ開けられ熱い舌が絡まって溶け合う。
「んっ…ふ、ぁ…」
キスと同時に耳を触られて身体がビクビクと跳ねる。
「気持ちいい?」
「ぅん…」
ベッドに移動して目線が合ってもう一度口付けを落とす。
「好きだよ、大和さん」
「俺も蓮のこと好き」
◇◇◇
とても温かい。まるでひだまりに包まれているようだ。頭が覚醒して目が覚めると隣には愛しい人。
これは夢ではないのだと温かさに身を寄せる。以前の布団の冷たさはもうどこにもない。
「おはよう」
「おはよ」
「すごい…隣に蓮がいる」
ポツリと呟くと、蓮がバツの悪そうに口を開いた。
「…終わった後、一緒に過ごすことに抵抗があって関係を割り切ってたつもりだった…本当は隣にいたかったんだけどさ」
「そうだったんだ…結構寂しくてなんでいつも居ないんだろうって思ってた」
「ごめん、そばに居たかったけど独占したくなるから離れてた…でもこれからは遠慮なしで一緒にいれる」
「!独占って…そういうことよく言えるよな」
「大和さんだから言いたくなるんだよ」
二人で笑い合って、また抱き合って、話して。
アプリを始めた頃の自分に言いたい。気持ちに気づいてから辛いことあったけど今、幸せだよ と。
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