14 / 30

第14話 晩冬から初春にかけてのこと2

 目が覚めたらベッドの中だった。フカフカのお布団の中で丸くなって眠っていたらしい。 (いつ寝たんだっけ……)  ぼんやりしたまま寝返りをしようとしてお尻がピリッとした。でも痛いわけじゃない。お尻の孔がピリッとしたのは一瞬で、ジンジンしている奥のほうが気になった。それにお尻の中に何かが入っているような変な感じもする。 (お尻の中に……って、そっか、そうだった)  昨日の夜、ついに王様の指が三本入った。はっきり教えてもらったわけじゃないけど、あれはたぶんそういうことだ。ということは次は王様のアレが入ってくるわけで……そう考えた途端に顔が熱くなった。体もポカポカして、お尻の孔がキュッキュッと動くのがわかった。 (あ、朝からエッチなこと考えるなんて最低だ)  反省しながらゆっくりと反対側を向く。 (あれ?)  いると思っていた王様がいない。布団から顔を出すとカーテンを開ける使用人の人が見えた。半分空いている窓の外がとても眩しい。 (……寝坊しちゃったのか)  獣人の国に来てから寝坊したのは初めてだ。慌てて起きようとしたけど、腰からカクンと力が抜けてベッドにうつ伏せになる。 「……っと、」 「アカリ様!」  顔を上げるとカーテンを開けていた猫族の人が慌てたように近づいてきた。 「大丈夫ですか?」 「アハハ、大丈夫です」 「お手伝いしましょうか?」 「平気です。ちょっと力が抜けただけなんで」  ぼくを起こしてくれようとした猫族の人の手がピタッと止まった。どうしたんだろうと視線を向けると、ぼくを見ている顔が段々と赤くなっていく。耳もピクピクしているように見える。 「……ええと、本当に大丈夫なんで」 「は、はい! では、お食事の用意をしておきます!」  そう言って顔を真っ赤にしたままピューッと部屋を出て行ってしまった。 (やっぱりをしたって勘違いしたんだろうなぁ)  まぁ、完全に勘違いってわけでもない。それに王様と一緒に寝ているのは使用人のみんなも知っている。ぼくと王様は“つがい”だから、そういうことをしていることも知っているに違いない。でも、あんなふうに顔を赤くするのを見たのは初めてだった。 (寝間着は着てるし、どこも変なところはないと思うんだけど……)  とにかく顔を洗おうと思ってテーブルに用意してあった桶の水で顔を洗った。腰とお尻が少し変な感じはするけど歩けなくはない。それでもゆっくりと隣の部屋に移動する。  居間に入るとおいしそうな匂いがした。テーブルにはホカホカのご飯が用意してある。いつもよりゆっくり歩いて椅子に座ったところでアルギュロスさんがやって来た。アルギュロスさんが来たということはお昼過ぎということだ。「思ったより寝坊したんだなぁ」と反省していると「お食事中でしたか」とアルギュロスさんが少しだけ笑った。 「ちょっと寝坊して……って、アルギュロスさん?」  アルギュロスさんが青い目を見開いている。そうかと思えば口元に手を当てて何かを考えるような顔をした。 「どうかしたんですか?」 「いえ……」  どうしたんだろう。じっと見ていると「やはり」とアルギュロスさんがつぶやいた。 「アルギュロスさん?」 「わずかですがアカリ様から匂いがします」 「匂い?」 「おそらく発情の匂いではないかと」  アルギュロスさんの言葉に、部屋にいた使用人の人たちがパッとぼくのほうを見た。気のせいじゃなければ、さっきの猫族の人と同じようにみんな顔を赤くしている。 「ええと、発情っていうのは……」  もしかして動物がなるあれだろうか。 「わたしたち獣人には発情があります。種族によって様子や日数、どのくらいの間隔で訪れるか違いはありますが」 「あの、ぼくは獣人じゃないです」 「アカリ様は獅子王のつがいになられましたから、獅子族としての発情を迎えることになります」 「ししぞく……?」 「獣人の中でも気高く強い種族のことです。ですが獅子族のみがかかる流行病のせいで、いまや純血は陛下だけになってしまいました。陛下のご両親もお亡くなりになっています。それゆえに陛下は最後の獅子王と言われています」  最後の……つまり、王様にはほかに家族がいないということだ。 「獣人は子が生める体になると発情状態になります。アカリ様は人ですからいますぐに孕むことはないでしょうが、そういう状態に近いとお考えください」 「ぼくは本当に子どもが生めるんですか?」 「はい。獅子族である陛下のつがいになられましたので、間違いなく」  ぼくはぼんやりしながらご飯を食べた。食べ終わっても発情の匂いがしているという実感はない。何度も腕を匂ったけど、昨夜お風呂で使った石鹸の匂いしかしなかった。そもそも発情した獣人を見たことがないから、どういう様子のことかもわからない。でも、発情すれば王様の子どもを生めるようになるんだということは理解した。 (本当に男でも子どもが埋めるようになるんだ)  そういうことができるのは相手が獅子族のときだけなんだそうだ。そして、そんなことができる純粋な獅子族は王様しかいない。  アルギュロスさんの話では小さい頃に両親が亡くなったそうで、王様は前の王様だったおじいちゃんに育てられたんだそうだ。そのおじいちゃんも亡くなってしまった。つまり、王様は一人きりになってしまったということだ。 (……寂しくないのかな)  ぼくだったら寂しい。ぼくにはおかーさんもじいちゃんもいたけど、小さい頃はおとーさんがいないことが寂しくて仕方なかった。 (いくら強くて大きい王様だって寂しいよな)  一人きりなんて寂しいに決まっている。でも、いまはぼくがいる。こんな頼りないお妃様で申し訳ないけど、ぼくは王様の奧さんだ。そしてぼくは王様の子どもを生むことができる。 (ちょっとは怖いけど……でも、ぼくは王様の子どもを生みたい)  王様のことを考えながらお風呂の入って歯磨きをした。火を燃やすことがなくなった暖炉を見ながら王様を待つ。 「どうした?」  あれこれ考えていたからか、部屋に入ってきた王様に気がつかなかった。「なんでもないです」と言いながら王様の大きな手を握る。そうして二人並んで寝室に行き、向かい合うようにベッドに座った。  王様は今夜もかっこいい。たてがみみたいな金髪はフワフワのツルツルで艶々に光っている。蜂蜜色の目もキラキラ眩しかった。 (ぼくは王様が大好きだ)  改めてそう思いながら「ぼくは子どもを生もうと思います」と言った。蜂蜜色の目がぼくをじっと見ている。ぼくの声は聞こえているはずなのに何も言ってくれない。それならと、もう一度はっきりと言うことにした。 「ぼくは王様の子どもを生みたいです」 「誰かに何か言われたか?」 「違います。あー……っと、ぼくが発情しているんじゃないかってことはアルギュロスさんに言われました。でも、子どもを生みたいと思ったのは僕が考えたことです」 「発情のことは俺もアルギュロスから聞いている。かすかにだが、それに近い匂いがしている」 「ぼくは王様の子どもを生みたいです。それに王様だってそう言いました」 「たしかに言った。だが、無理強いしたいとは思っていない。あのときは混乱、いや興奮していたせいだ。性急すぎたと反省している」 「反省なんかしないでください。だってぼくは本当に王様の子どもを生みたいって思ってるんですから」  また王様が黙った。蜂蜜色の目をじっと見ながら、ぼくは考えていたことを話すことにした。 「王様は両親を病気で亡くしたと聞きました。それって家族がいないってことですよね?」 「親族はいる。純血の獅子族がいないだけだ」 「親族であって家族じゃないんですよね。それは家族がいないのと同じだと思います」  王様が口を閉じた。 「ぼくは王様の奧さんです。家族です。でも獣人にはなれません。だけど、ぼくなら獣人の、王様の家族を増やすことができます。にぎやかな家族にすることができます」  ぼくにはおかーさんとじいちゃんがいた。でも、周りの子たちにはおとーさんも兄弟もいた。ぼくはずっと兄弟がほしかった。ほしかったけど、おかーさんに話したことはない。言えばおかーさんを傷つけると思ったからだ。  王様は獣人で王様だけど家族がいない。獣人だって家族がいるほうが楽しいに決まっている。ぼくは大好きな王様に寂しい思いをしてほしくなかった。 「ぼくは王様の家族です。大好きな王様とたくさんの家族を作りたいです」  いろいろ足りないぼくでも家族を作ることはできる。大好きな王様とにぎやかで楽しい家族を作りたい。 「怖くないのか? 男の身で子を生むのだぞ?」 「少し怖いとは思いました。でも、子どもを生むときは女の人だってきっと怖いはずです」 「そうかもしれんな」 「怖いとは思うけど、それより子どもを生みたい気持ちのほうがずっと強いです。それにぼく、体は丈夫なんで生めると思います」 「丈夫か」 「はい。それにお、お尻も丈夫みたいだし」  ぼくの言葉に蜂蜜色の目が少しだけ大きくなった。そうしてすぐにおかしそうに笑う。 「やはりおまえをつがいにしてよかった」 「はい、ぼくは王様のつがいです」  膝立ちになったぼくは金色の頭をギュッと抱きしめた。フワフワでツルツルの髪の毛が気持ちいい。フワフワでモフモフの髪の毛から、ぼくが好きな森のような花のようないい匂いがした。フワフワの髪の毛に顔を埋めると、ぼくの指先に当たっていた金色の耳がピクッと動いた。 「おまえはすばらしい花嫁だ」 「アハハ、そうですか?」  笑いながら金色のフワフワに頬を擦り寄せたら、寝間着の上から乳首を噛まれた。 「んっ」  痛くはないけど変な感じがする。それに背中がゾワゾワした。 「おまえには勝てないな」 「王様?」 「おまえはそのままでいい。これからも、いまのままのおまえでいてくれ」 「王様、っ」  頭を抱きしめていたはずなのに、気がついたらベッドの上で仰向けになっていた。驚いている間に寝間着も下着も取られてしまう。そうしてすぐにお尻の孔にヌルヌルしたものを塗りつけられた。驚いている間に太い指がヌクッと入ってくる。 「んっ!」  いきなりだったのに全然痛くなかった。それどころかお腹の奥がジンジンして物足りない気がする。もっと奥がいい。もっとお腹いっぱいになるまでギュウギュウにしてほしい。もっと、もっと、気がついたらそんなことばかりが頭の中をグルグル回っていた。  ぼくはいつの間にかとてもエッチになっていた。こんなエッチなぼくでも王様は嫌にならないだろうか。変な奴だと思わないだろうか。 「今宵、おまえのすべてを俺のものにする」  太ももをグゥッと持ち上げられた。パカンと開いた股の間に王様が見える。 「俺のすべてを受け入れてほしい」  かっこいい、どうしよう、かっこよすぎて言葉が出てこない。それでも「全部王様のものにしてほしい」と言いたくて必死に頷いた。  お尻の孔に何かが触れた。熱くてヌルヌルしたものが孔を擦るように動いている。それだけで背中がゾクゾクした。でもまだ足りない。ぼくの体はもっと気持ちよくなれることを知っている。これまでは指だったけど、コレが中に入ったらもっと気持ちがいいと期待して腰が震えた。 「おうさま」  ぼくはきっと王様の全部を受け入れられる。だから入れてほしい。 「フリソスだ」 「え?」 「俺の名はフリソスだ。王様ではなく名を呼んでほしい」 「フリソスさ、あっ!」  熱いものがキスするように孔にくっついた。そうして少しずつ孔を拡げていく。どんどん拡がって、熱いものがぼくの中に入ってくる。 「あ……なんか、へんっ、んんっ」  お腹が熱い。熱くて苦しいのに、それ以上に気持ちがよくてびっくりした。いつの間に勃っていたのか、王様のモノが入ってきただけでぼくのアレからピュピュッと白濁が飛び散った。 「おまえは感じやすいな」 「あぅっ」 「こんなに小さい体で、よく俺を受け入れてくれている」 「んっ」 「こんなにも感じてくれている」 「んふっ」 「人の体で発情までしてくれた」 「ふぁっ」 「こんなに早く発情の兆候が見せるとは思ってもみなかった」 「ふあ! あっ!」 「おまえの何もかもが……こういうのを愛しいというのだろうな」 「ぁんっ!」  体の奥をドチュンと突き上げられた。目の前がチカチカする。頭がパチパチして星が見えたような気がした。 「おまえは俺のつがいだ。二度と人の国へは帰さん。俺のそばにいろ……アカリ」 「~~……!」  大きな体にギュウッと抱きしめられた。息ができなくて苦しいのに、やっぱり気持ちがよくて目の前がグルグル回る。体の外も中も気持ちがよくてグニャグニャになった。 「おうさま、だいすき」  目の前にあるフワフワした金色を抱きしめた。フワフワでモフモフなのが気持ちいい。それにぼくが好きな匂いがする。王様もこの匂いも大好きだ。 「だいすき、んっ、んあっ!」  お尻の孔がグワッと拡がった。大きな王様のアレがぼくの中でビクビクしているのがわかる。それが気持ちよくて大きな体をぎゅうっと抱きしめると、お腹の奥で王様のアレがブルンと震えた。続けてぼくの中にビューッと勢いよく吐き出すのを感じた。それがお腹の中に当たるたびにぼくの体はビクビク震えた。 「王様は大きさも勢いもすごいんだなぁ」なんて思いながら、フワフワでモフモフの髪の毛に顔を埋めた。

ともだちにシェアしよう!