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出会い。
気候のせいか最近は春になっても桜が散り始めている、そんな春。
至って普通の高校を選んで受験した僕・館内 忍 は教室の隅の席で大人しくしていた。
(このまま3年間過ごすのか……まぁ、こんな僕じゃ友達なんか出来るはずないよね……)
そんな事を考えながら最近読み始めた本を鞄から出して栞を挟んだページを開く。文字を目で追おうとした瞬間だった。
「ねぇ君。俺は隣の席の久城・ランメイルって言うんだ。よろしくね」
そう言って微笑むハーフ男子がそこに居た。髪は短く金色っぽいが、前髪の一部分に黒いメッシュ。そしてオッドアイ。明らかにハーフと分かる見た目だった。
「えと……館内 忍、です……」
「忍か!いい名前だな!」
名乗られたからにはこちらも名乗らないと失礼だろう。そう思い僕は小さい声で名前だけ告げる。すると彼、久城はいい名前だと褒めてくれた。そんな風に思った事が無かったからか、僕はしばらく久城を見つめてしまった。
「ん?どうしたんだ忍?」
「な、なんでもない……です……」
慌てて謝って本に目を落とす。だが、久城の煌びやかな微笑みが脳裏に焼き付いてしまったようで内容が頭に入ってこない。困ったなと思い本を閉じて今度はスマホを見る。
「あ……」
SNSで知り合った友達からDMが来ていた。どうやら同じ高校らしいけど、僕から話しかける勇気はない。開いてみれば「1年3組だよ」と書いてある。それはまさに僕がいるクラスで。更には「クラスどこ?」と続いている。
どうしようかな。少し悩んで正直に同じクラスだと書いて返信を送る。するとしばらくした後既読が付き、更なる返信が来た。そこには、「席どこ!?」と明らかに嬉しそうな文字が写っていた。
「勇気を出そう……」
何となくそう呟いて窓際の1番後ろだと返信すると、1人の生徒がこちらに向かって来ていた。
「君が忍くん?」
「あ、はい……もしかして」
「うん。僕がリョウヤ。玲弥だよ」
そう言いながらリョウヤ──元い玲弥はDMに本名を送ってきた。藤崎 玲弥 。それが彼の名前。
「僕はそのまま忍だよ。館内 忍。よろしく……?」
「ふふ。やっぱり忍と仲良くなって正解みたいだね」
「そうかな……?」
玲弥からそんな事を言われてなんだか照れくさくなる。しかし、DMでやり取りしていたとは言えすぐに呼び捨て出来るなんて。玲弥は陽キャ寄りなのかな。もしそうだとしたらなんだか申し訳ない。
でも、せっかく仲良くなっていたんだしそんな理由で突き放すなんて出来ない。せめて彼に釣り合うように頑張ろう。
そう意気込んでいる僕を隣から彼がじっと見ていたなんて、この時は気づきもしなかった。
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