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◆第20話

 次の日、俺は外出することにした。直接向かわれるのですか? と使用人達には不思議がられたが、まぁ気持ちは分かる。この場合、領民を屋敷に呼ぶか、使用人を行かせるか。それが貴族達にとっては当たり前だからだ。 「じゃあ行ってくるよ」  声を揃えていってらっしゃいませと返してくれる使用人達の声を聞き、馬車に乗り込んだ。  領地内の様子を眺めているが、ちゃんと仕事をしていたルアニスト侯爵のお陰で治安も良さそうだし領民達も元気そうだ。道や橋などの交通面もきちんと整備されている。まぁ、代理人を降ろされかねない事は出来なかっただろうからな。  店も充実しているし、働いている者達も楽しそうに商売をしている。  ダンテは本当に器用だ。俺が憑依したわけだが、不思議なことに何かをするにしても簡単に出来てしまう。これはダンテ本人の能力だという事だ。ここまで優秀なのに、もったいない。  馬車が停まり、到着しましたよと御者からの声がかかった。さて、お仕事をするとしよう。開けられた馬車のドアを潜り降りたら……  ……デジャヴ。俺の馬車を見て群がっていたらしい領民達は、目が飛び出て顎が外れそうなくらいぽかんと口を開けていた。気持ちは分かるが……そこまで驚かんでもいいだろう。  領民達はダンテの事を見た事がない。この驚きは、ウチの領主様がこんな人だったのかと驚いているのだろうな。  群がるな群がるな、と連れてきていた護衛達によって散らばらせて道が作られた。だが当然、離れはしたものの戻るわけではなく視線をこちらに向けてくる。  俺が用のある場所は、この大きな建物。ここはとある工房で、職人達が汗水たらして作品を作っている。いくつもの機械音が聞こえてくるな。中を覗くと、若い者や高齢な男性達が作業しているところが見えた。作業中のようで声をかけると中断させてしまう事になるが、仕方ないな。 「こんにちは」  その声で、俺の事を見た職人達は、先程の領民達と同じような反応を見せた。一緒に着いてきていたカーチェスによって自己紹介がされると、またもや驚いた顔を向けてくる。 「何用ですかな」 「今日は、あなた方にがあって来ました」  その言葉に、職人たちは驚いていた。普通、そこは提案ではなく命令、指示なのだから。  そして、カーチェス視線を送るとを懐から出し職人達に見せる。きっと、説明しなくとも職人達は一目でこれが何か分かる事だろう。 「え……」 「こ、れは……!!」 「職人のあなた方なら分かるでしょう。私が今から何を言うかも」 「……一体私達は何を作ればよろしいでしょうか」 「いえ、命令ではありません。これは契約ですよ」  そう、これは契約だ。これから俺が始める事業で一番必要なものとなる。  その後俺が言い出した事に、彼らは驚きを隠せずにいたのだ。  彼らの答えは、時間をください、だった。 「彼らは、承諾するでしょうか」 「あんな大物を置いてきたんだ。職人達ならあれがどういうものなのか俺達よりよく知っている。きっと承諾してくれるだろう」  後は、待つだけだ。  工房から屋敷に戻ると、執務室が花で彩られ華やかになってる事に気が付いた。一体誰の仕業だ。 「……これは?」 「あの……ダンテ様は、お花が好きだとお聞きして……」  メイドの一人がそう答えた。公爵様がダンテ様になってる事にツッコミを入れたいところではあるが、何をそんなに恥ずかしそうにしているんだ、君達は。これを言ったのは一体誰だ、さては首都から連れてきた誰かに聞いたな? 「華やかになったな、ありがとう」 「本当ですか!」 「良かったぁ……」 「あ、あと、今日のお食事は、リクエストはありますでしょうか?」 「リクエスト……こってりしていない肉が良いな」 「分かりました! 料理長に伝えてきます!」  ……まぁ、いいか。好意でやってくれたんだ。それに困るほどの量ではないし、花が好きなのも本当だ。  今日の食事が楽しみだな。

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