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第64話 領地再建

 7ー4 ジポネス  「これ!どうしたんですか?」  俺は、杯を手にライゾさんに訊ねた。  よくある話だが、俺だって一応、自分が転生してきたことに気づいてからは、日本のものがないか気にしてきた。  しかし、周囲には、まったく米も味噌もなかったし、ましてや日本酒など聞いたことすらなかった。  ライゾさんとオリベ君、マリさんが顔を見合わせている。  しばらくしてライゾさんが口を開いた。  「実は、我々の先祖は、この国の民ではないのでございます」  ライゾさんは、俺にこの地に伝わる伝説を話してくれた。  それによると、このグレイスフィールド伯爵領の辺りには、かつて『ジポネス』という小国があったのだという。  『ジポネス』?  それは、前にも聞いたことがあったような。  俺は、ぽん、と手を打った。  そうだ!  イキナムチが話してた!  「その国のことは名前だけは、イキナムチ様からお聞きしました」  俺が言うとライゾさんがうんうん、と頷く。  「そうでございましたか。イキナムチ様が。かつては、イキナムチ様は、『ジポネス』の神であられましたからな」  そうなの?  俺は、ライゾさんの話しに耳を傾けた。  なんでも、『ジポネス』は、300年前にこの国によって併合され歴史から消えたのらしい。  「『ジポネス』では、マナと呼ばれる穀物を育てそれを主食にしていたそうで。今でもこの領地では、わずかですがマナを育てております。それは、イキナムチ様に捧げるこの酒を作るためでして」  ライゾさんの話しによるとこの酒は、本来、イキナムチに捧げる御神酒だったのだが、少しだけこの祝いの席のために分けてもらってきたのだという。  「そうなんだ」  俺は、こくっと杯の酒を口に含む。  この世界の酒だって美味しくないわけじゃないけど、やはりこの酒は、俺にとっては特別だ。  「心遣い、感謝します、みなさん」  俺は、住民のみなさんに頭を下げた。  ライゾさんは、慌てて両手を振った。  「と、とんでもござません、アンリ様。お礼を言わなくてはならないのは、わたしらの方でございます。グレイスフィールド伯爵が亡くなったばかりで心痛、いかばかりかと思われますのに、わざわざ我々を救いに来て下さったのです。みなを代表してお礼を述べさせてくださいませ」  ライゾさんが頭を下げる。  「アンリ様、それにお供の方々、本当にありがとうございます!」  ええっと……  俺は、かなり気まずくて、ちらっとリュートの方をうかがったが、リュートは、なんとも思っていないようだった。  てか、俺、最低?  旦那様が亡くなったばかりなのに、こんな風に別の男に抱かれてるなんて、さぞかし呆れられてることだろう。  

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