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第70話 領地再建

 7ー10 魔法使いが望むもの  ずん、と重い音が辺りに轟き、地面が激しく揺れる。  俺は、魔力が体内から抜けていく感覚に堪えていた。  ぬるっとしたものが俺の体から抜け落ちていく感覚に背中がぞくぞくして震える。  あの時と同じだ!  ドラゴンを魔力で撃った時と同じ感覚に俺は、体がふるっと震えていた。  熱い!  体の奥底から蕩けるような熱が流れ出して俺は、快感の波に打たれてわななく。  いいっ!  これ、やっぱ、気持ちいい!  これに勝る快感は、俺が知る中には1つしかない。  それは。  リュートに抱かれること。  俺は、ぶんぶん、と頭を振った。  意識を保たなくては!  俺は、隅々まで丁寧に意識の指先で辿って重い描いていく。  水源から流れ出る水が町をめぐる様や、少し傾斜して重なっていく地面がならされ固められていく様を細かく思い描く。  ぬかるんだ土地が乾いて、盛り上がっていくのがわかる。  町は、傾斜を描いて段々と積み重なり、その土地を網の目のように縫う水路に水が流れていく。  水路とは別に、汚水が流れていく溝も形作られていった。  俺は、最後まで意識を保とうとしていた。  頭は、魔力切れでがんがん、殴られるみたいに痛くて。  あんなに熱かった体もだんだんと冷たく感じられてくる。  それでも。  俺は、町の中央に立って全てに意識を集めていた。  いつの間にか、頭上にあった陰は消えて眩しい光が差していた。  地面の揺れが収まり、俺の周囲には、整地された町が現れていた。  もう、ぬかるみもないし、岩や木切れも消滅していた。  辺りには、整然とした土地が現れていて、張り巡らされた水路には、清らかな湧き水がさらさらと音をたてて流れていた。  うん。  これで、いい。  欲をいえば建物も造れたら言うことなかったんだけど、それは、無理だ。  俺の魔力がもたない。  『アンリ!』  イキナムチが俺を呼ぶ声が聞こえる。  『しっかりするのじゃ、アンリ!』  俺は、ふっと微笑んでいた。  ああ。  こんなにも魔法って気持ちがいいんだな。  俺は。  そのまま倒れて、空を見上げていた。  こんなにも、いい。  なのに。  俺の体は、ぶるぶると震えていた。  寒い。  すごく寒くて。  「……りゅー、と……」  俺は、なぜか、あいつのことを考えていた。  欲しい。  あいつの温もりが。  ぎゅっと抱き締めて。  そして。  魔力を注ぎ込んで。  俺は、目の前が暗くなっていって、いつしか意識を手放していた。

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