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おまけ⭐︎

ライブの演出の打ち合わせが終わり、僕が帰ろうとすると、茂知に呼び止められた。 「なに?」 「今日はなんかあんのかよ」 なんかってなんだ? と思ったけど、茂知なりの誘う方なのだと理解して「何もないよ。うち来る?」と訊いた。 「あ、でも、茂知たちは明日早いよね。 僕が茂知の家に行こうか?」 と聞く。 僕はプロデュース業と俳優業を少し兼業してるけど、茂知の方が餅麦茶の仕事で大忙しだ。 っていうか、僕が抜けた後もダサい名前を引き継ぐのかと、驚いてしまった。 バラエティの名前は、僕が抜けた後もリスペクトということで「餅麦茶畑でつかまえて」のままだ。 嬉しいような…、恥ずかしいような… 2人でタクシーに乗り、茂知の家に向かう。 茂知の家に行ったのは、デビューから11年で数える程度しかない。 「そういえばさ、茂知ってあまり家に人寄せないよね」と僕が言う。 「あ?あー…、麦はよく来てたけどな」 「え!?なんで麦は良くて僕はダメなの?」 てっきり、自分のテリトリーに入られるのが嫌なタイプだと思ってた。 どうやら僕だけ家に入れたくなかったらしい。 それが表情に出てたのか、 「好きだから逆に呼びたくなかったんだろうが」 と、ため息をつかれた。 「え?普通逆じゃない?」 「…、家にお前がいたら普通に襲ってた」 「…、なるほど」 そういうことなら仕方がないね。 呼ばれなくて正解だ。 「ま、今は付き合っちまったからな。 手を出されても文句言うなよ?」 と茂知がニヤリとした。 顔がいいのが腹立つな〜。 この顔じゃなかったら逮捕されてる。 「言わないよ、別にー」 30超えたおじさんが、のこのこ彼氏の家に行って襲われたくらいでは文句言わない。 むしろ、襲われなかった方が心配だ。 ずっといるから忘れそうになるけど、僕たちは6歳離れてる。 正直、茂知が年下の女の子を好きになって、僕を振っても文句を言うつもりはない。 そんなこんなしているうちに家に着く。 茂知の家は本当に生活感がない。 本当に音楽とか仕事が大好きなんだなぁと感心する。 椅子とかも特にないのでベッドに座ったら、茂知にため息をつかれた。 「なに?」 「なんで自ら襲われに行くんだよ、お前は」 「なんのことー?」 分からないふりをしてベッドに寝転ぶ。 僕にだって性欲くらいあるんだからね。 「むかつく」と茂知は言い、でも優しく僕の上に覆い被さった。 「はぁー…、いまだに夢かと思う」 僕なんかと付き合うことが夢みたいだなんて、今をときめくアイドルとは思えない。 「僕だってそう思うよ。 だってあの餅麦茶の茂知が彼氏だなんて」 僕が茶化すように言うと「こないだまでお前もいただろ」と頬を抓られた。 そのまま見つめ合っていると、どちらからともなく唇を重ねる。 こんな風な甘い雰囲気にもだいぶ慣れた。 何度も啄むように唇を合わせていると、茂知の手が僕のTシャツの中に滑り込む。 「む、待って。シャワー…」 このままおっぱじまったら困る。 そう思って抵抗したけれど「いいこのままで」と跳ね除けられた。 全然いいわけないけれど、僕は流されるまま茂知と体を重ねる。 茂知は、驚くほど丁寧に解すので、体を繋げる頃には僕は息も絶え絶えだ。 「30超えてるんだから手加減して」 と言っても 「アイドルに戻って体力作りすれば?」 と煽られるので最近は好きにさせてる。 僕は訳がわからなくなって痴態を晒しているので、全然良くはないけどね。 交際を世間に公表するかとか、同棲するかとか、まだまだ決まってないことだらけだけど 茂知には今まで秘めてきた時間を取り戻すくらい恋をして欲しいなと思う。 相手が僕だからとても気恥ずかしいけれど。

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