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01誘拐

「ノエル、俺の愛人になってはくれないか?」 「カーレント殿下、それは何の冗談でしょう」 「冗談ではない、ノエルどうか俺の愛人になってくれないか?」 「お、お断りします。カーレント殿下」 「そうか、分かった」 「……………………」  僕の名前はノエル・ビルヘン、白い髪に赤い瞳をもった子爵家の次男だ。そんな僕はこの国の王太子である金の髪と青い瞳を持つカーレント殿下から告白された、いや愛人にならないかって言われた。僕にとってカーレントは年も同じでなんでも話せる学友だった、そんな彼から愛人にならないかなどと言われて僕はびっくりした。僕は彼を友達としか思っていなかったし、恋愛感情を抱いたことはなかった。グランシュタイン学園の最後にそんな驚いたことを言われたが、僕はきちんとお断りしたし大丈夫だと思っていた。 「ノエル・ビルヘン様ですね、王宮よりお迎えにあがりました」 「え?」 「カーレント殿下がお呼びです、至急王宮の馬車にお乗りください」 「ええ?」  学園が終わって家でのんびりしていた僕は、無理やり王宮につれていかれた。そして離宮に閉じ込められた、僕はなにがなんだか分からなかった。しばらくしたらカーレントが来て僕を抱きしめた、そしてこんなことを言い始めた。 「ノエル、お前は今日からここで暮らすんだ」 「カーレント殿下、愛人のことはお断りしたはずです」 「愛人じゃなくてもいい、俺の確認できる場所にお前はいろ」 「いや、そんな困ります。僕を実家に帰してください」 「それはできない、俺にはお前が必要だ」 「僕はそんなにお役に立てないと思いますが」  カーレント殿下は僕を離宮に閉じ込めて戻っていった、離宮を探検したがトイレやお風呂も揃っていて温室まであった、そこでは植物たちが伸び伸びと成長していた。そうして探検していたら侍女がやってきた。 「お食事でございます」  離宮の一部が開いてそこからぞろぞろと侍女たちが食事を運んできた、僕は食欲がなかったが一応食べれるだけは食べた。そうしてからお風呂を使うと僕はベッドに横になった、そうしていたらいつの間にか眠ってしまった。人の気配がして僕は目を覚ました、カーレント殿下がそこにはいた。そしてカーレント殿下は僕を抱きしめて眠ってしまった、僕は疑問が山ほどあったがいつの間にかカーレント殿下と一緒に眠ってしまった。 「目が覚めたか?」 「カーレント殿下」 「目が覚めたのなら服を整えろ」 「僕は服なんて持ってきてません」 「そこのクローゼットに入っている」 「えっといつの間にこんな服が」 「着替え終わったな、執務室に行くぞ」 「え? はい、カーレント殿下」  僕は執務室につれていかれてカーレント殿下の仕事を手伝うことになった、元々カーレント殿下とは生徒会で一緒だったから書類を処理するのには慣れていた。でもこれは国政に関わる書類だった、だから少し緊張しながら書類を処理していった。他にも何人かカーレント殿下の側近がいた。そうして一通り書類の処理がすむと僕は離宮に戻された、そこには遅くなった朝食が用意されていた。 「今頃カーレント殿下は王室の方々と食事中です」 「はぁ、あの僕をここから出して貰えませんか?」 「申し訳ございませんが、ノエル様を離宮からお出ししないように言われております」 「えっと、それもカーレント殿下の命令ですか?」 「その通りでございます、お食事が済んだようなのでおさげ致します」 「あ、ありがとうございます」  仕方がないので僕は離宮の温室で呆然としていた、これからどうすればいいのか分からなかったたし、どうして僕が連れてこられたのかも分からなかった。そうしてしばらくは呆然としていたが、今朝処理した書類を思い出して、僕にはまだ知識が足りないと思った。だから侍女にお願いして本を持ってきて貰った、そうして僕はベッドで本を読みふけった。 「お前をでろでろに甘やかして、俺なしではいられなくしたい」 「カーレント殿下。私は女性ではないので、そのようなことを言われても困ります」 「そうしてやりたいんだ、ノエル」 「カーレント殿下、それは僕ではなく女性にしてください」  するとカーレント殿下はぷいっと顔をそむけてしまった、そうして本だらけの僕のベッドに横になって眠ってしまった。僕は本たちを片付けて床に敷かれている毛皮の上に移した、そうしてそこでまた僕は本を読みふけっていた。 「ノエル、俺の愛人になる気になったか?」 「カーレント殿下、僕には過分なお役目です」 「俺がお前を欲しいと言っている」 「どうかそのようなお役目は女性にお与えください」  それから僕の離宮での生活が始まった、朝食の前には執務室につれていかれて書類の整理をさせられた。そこからは自由時間だった、僕は本を読んで勉強したり、温室で休んだりして過ごした。何度もカーレント殿下から愛人にならないかと誘われたが、僕はその度に丁寧に断った。夜はカーレント殿下と一緒に眠ることが多かったが、僕一人で眠ることもあった。そんなときはカーレント殿下は婚約者のところへ行っているようだった、そう侍女たちが教えてくれた。 「暇だ、手紙でも書こう」  僕は実家宛てに手紙を書いた、父や母それに兄は元気にしているかと書いた。僕の手紙は検閲されたがちゃんと実家に届けて貰えたようだった、実家から僕は元気でいるのかと手紙が三通届いた。 「ユーディが妊娠した」 「それはおめでとうございます、カーレント殿下」 「ああ、しばらくあの女を抱かなくていいと思うと清々する」 「ユーディ様との交わりはご不快ですか?」 「不快で仕方がない、しかもあの女はおねだりが酷い」 「はぁ、それは大変ですね」  僕がここにきてねだったものといえば本だけだった、あとは実家に帰してくれと願ったがそれは叶わなかった。それからしばらくはカーレント殿下は僕と一緒に眠った、僕はいつも抱きしめられていた。 「ノエル、いい加減に俺の愛人にならないか?」 「僕には荷が重すぎます、カーレント殿下」  僕は何度も愛人にならないか誘われたがその度に断っていた、カーレント殿下は不機嫌そうにしていたが、僕の離宮から出て行くことはなかった。

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