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第36話 白い粉と訪問者 ②

「このまま番にならないお前が、ずっとここにいられると思っているの?後継が産めないオメガなんて、なんの役にも立たないのよ。そんなオメガなんてすぐに捨てられて、サイモンは新しい人と結婚してしまうわよ。お前は捨てられて、ここから追い出されるの。追い出されても、お前みたいな役立たず家には入れてあげないわよ」  捲し立てるように母様が言った。  本当のことすぎて、何も言い返せず黙ってしまう。 「本当にお前は昔から何があっても黙り込んで。陰気な子ね」  汚いモノでも見るように、母様が僕をみた。 「ごめんな、さい……」  消え入るような声しか出ない。 「謝るぐらいなら、ちゃんと仕事をしてちょうだい」  そう言いながら母様は、バックから白い粉が入った小指ほどの小瓶を2本取り出した。 「これをサイモンに飲ませなさい」  飲ませなさいって、こんな怪しいものは飲ませられない。 「これは……?」 「痺れ薬と媚薬よ」 「!どうしてそんなものをサイモンに飲ませないとダメなんですか!?」  思わず大きな声が出てしまい、 「静かにしなさい」  小声だがら威圧的な声で凄まれた。 「夜、サイモンと2人っきりになった時が狙い目よ。この二つは一緒に飲んでも害はないし、無味無臭だからサイモンも薬の効果が出てくるまで気が付かないわ」 「……」 「これをお茶に混ぜて飲ませるの。薬の効果が出てきてサイモンが自分で動けなくなったら、妊娠するぐらいまで行為をするのよ。一度達してからの精の方が、妊娠しやすいから。わかったわね。必ず飲ませて、必ず妊娠するの。子供ができてしまえば、サイモンもお前をここから追い出すことはできないわ。役立たずのお前でも、これぐらいはできるわよね。そうねサイモンにそれを飲ませるのは、今晩がいいかしらね」  有無を言わせず、母様は僕の服のポケットに薬を入れる。 「もしこの薬を飲ませず、妊娠していなかったら、サイモンに私達は『僕がミカエルだ』とお前に騙されていたと言うからね。それが嫌なら番になって妊娠するのです。もしものために、お前にはヒート促進剤を渡しておくわ。行為の前に飲んでおくのよ。わかったわね」  昔から母様の言うことは絶対だ。 「はい……母様……」  そう答えた僕は、また昔の僕に連れ戻されたようだった。

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