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第60話 お茶会 ③

 それからルーカス様との一緒に過ごす時間が増えていった。  こんなことを言えばルーカス様に怒られるかもしれないけれど、意外とルーカス様はお茶を淹れるのがお上手だ。   どうやらルーカス様はミカの影響でハーブティーを飲むようになり、それから自分で淹れられるようになったそうだ。    僕に淹れてくれるハーブティーは珍しい紫のお茶。紫の葉と花を咲かせるハーブで、クセがあるが茶葉だが、ルーカス様は僕が飲みやすいようにとわざわ他の茶葉とブレンドしてくださってると聞いて、驚いた。  朝、夕の食事は一緒に食べ、夜もなんだかんだとルーカス様は僕の部屋に遊びにやってきて、ボードゲームをしたりする。  まるで幼い頃、できなかったことを僕とされているようだった。  僕と言えば、朝と夕。ルーカス様と一緒に食事をしている時は、僕もルーカス様と同じメニューだが、一人で食べる昼食は以前侍女に言ったように、パンとスープのみ。  それでも食べられず残すことが続き、とうとう僕の昼食はなくなった。  昼食がなくなり用事が少なくなった侍女は、僕の部屋に寄り付かなくなった。  昼食がなくなるのはまだいい。でも侍女が寄り付かなくなることで、体調が悪くなっても誰にも言えない。  ルーカス様に自室から出ることを許されたけれど、広い宮殿で使用人を探すのは一苦労。  この前は探しに出て、結局使用人には出会わないし、どこをどう行けば自室に行けるかわからず、迷ってしまった。  そして今日は本当に体調が悪い。  朝食の時、僕の顔色があまりに悪かったので、ルーカス様が気にかけてくださり、昼、医師が診察してくれることになった。  それまで僕は自室で静かにベッドで横になっていたが、朝食後から痛み始めた腹部の痛みが増してきていた。  無意味だとわかりつつ、リンリンとベルを鳴らす。案の定、誰も来ない。  でも腹部の痛みが酷くなり、冷や汗が出てくる。  あの流行病の時のように、自分の身の危険を感じる。  このままここで寝ていてはいけない。  本能がそういい、全身の力を振り絞り、僕はベッドから立ち上がると、ドアに向かう。  誰でもいいから、助けてほしい。  あと数歩でドアまで辿り着けるというところで、両足に暖かいものが伝うのを感じた。  なに?  何が伝うのか確認しようと床を見ると……。  え?  足元に血溜まりができている。  その血溜まりはどんどん広がり、上等な絨毯を汚していく。  それと同時に意識が遠のいていく。  ぼんやりした視界の中、部屋の景色が横に見え、ドサっと音を立てて床に倒れ込むと、そのまま意識を失った。

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