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第68話 日記と手紙 ①

 ルーカス様との婚礼の儀式の準備は、職人たちが寝る間も惜しむかのように迅速に進められた。  各分野の専門家たちが知識を出し合い、式に必要なものを揃え、組み立てる。  帝国一のお針子と宮殿内の優秀なお針子総出で、ルーカス様と僕の式での衣装を縫ってくれている。  今日はドレスの最終確認の日。 「レオナルド様、今日もお綺麗です」  鏡に映る僕の姿を、エマがうっとりと見つめる。 「エマが毎日、髪や体の手入れをしてくれているからだよ」  僕がそういうと、 「エマさんだけずるいです。私もレオナルド様のお手入れしたいです」 「私も」 「私も」  部屋にいた侍女やお針子が言う。 「ダメよ!レオナルド様専属の侍女は私だけですからね」 「え~いいな~」  エマを羨む声が上がった。 「エマには本当にお世話になっています。これからもよろしくね」 「はい!」  元気にエマが返事をした。  僕がルーカス様の求婚を受け入れた時から、僕の周りはとても平和だ。  エマにルーカス様と結婚すると報告した時は、少し悲しそうな顔をしたけれど、すぐに「おめでとうございます」と祝福してくれた。  でも僕はまだサイモンのことが大好きで、愛している。  こんな気持ちのままルーカス様と結婚するのは、いけないことだと思っている。それでも僕は僕のことを助けてくれたルーカス様の力になりたかった。 ートントントンー  部屋のドアがノックされる。 「少しお待ちください」  婚礼のドレスを脱ぎ、いつもの服に着替えてから、 「どうぞ」  返事をするとルーカス様が入って来られた。 「婚礼のドレスの仕上がりはどうだ?」 「皆さんよくしてくださって、完璧に仕上がっています」 「それはよかった」  ルーカス様が僕を抱き寄せた。  ルーカス様は婚約発表をしてから、僕を抱き寄せたりはするようになったが、キスやそれ以上のことはしてこない。  僕に触れる時も、大切に大切に触れてくださる。  こんなに大事にされているのに、僕が愛しているのはサイモン。  そんな自分がズルい人間に感じていた。 「今日はレオに会いたいという人が、来ている。ここに呼んでもいいか?」  誰だろう?  そんなことを考えながら頷くと、宮殿には似つかわしくない平民の服を着、帽子を深く被った人が入ってきた。  帽子があって顔がよく見えない。  見えないけれど、僕にはわかる。  この人は……彼は……。

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