そして春は少し黙った後、言った。 「向井さんに呼び出されても、1人では行かないでね」 え？なんで？と思わず聞くと、春は少し迷った仕草をした後、「厳しい人だから、すごい」と言った。 厳しい人…？と、昼間話した向井を思い出す。 
そうとは思えなかったけどな…と思いつつも、
分かった、と秋はぼんやり答える。


 そうして春は、急いで帰って行った。
 その夜中、一件のメッセージが。

 登録してない番号からだった。 
恐る恐るメッセージを開くと、差出人は向井だった。 え、なんで連絡先知ってるんだろう？と疑問に思いつつ、マネさん経由かな？とメッセージを確認。 「ドラマの作曲に参考になりそうな資料がいくつかあるからぜひ渡したい」との内容で、秋はありがたい、とぜひ！と返事をする。 するとすぐに返事が返ってきて、日付の指定がいくつかくる。 それに返すと、住所が送られてきた。 
そこで、春に言われたこと――向井さんに呼び出されても、1人では行かないでね――を思い出し、マネージャーと行きますね、と一応連絡を返した。 すると、了解です、と素直に返事が返ってきた。 
厳しい人って、どういうことだろう？ 秋は、春が初めて自分の行動を制限するような事を言ってきたことに、少し違和感を感じていた。