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 息を切らせて笑顔を見せる倫に、怜士は少し首を傾げた。 「人に散歩と言いながら、君はどうした? 午後の仕事は無いのか?」 「はい。勤務は明日からです。今日はここに慣れるために、和生さんに案内してもらっています」 「なるほど」  そして、沈黙。  静かに目をつむり、しばし考えていた風の怜士だったが、瞼を開いた後こう言った。 「では。今日は肉体労働が、無いのだな?」 「えっ? は、はい」 「疲れるようなことは、無いのだな?」 「はい……」  解った、というようにうなずいた怜士は、倫を正面から見据えた。 「ならば今夜、私の寝室へ来るように」 「ええっ!?」  倫は、慌てた。  初体験はまだだが、怜士の言わんとすることは解る。 (つまり。怜士さまは今夜、僕とエッチしたい、ってこと!?)  それだけ告げると、怜士はバラ園の方へと向き直って歩き始めた。  慌てて、従者がついて行く。  倫はあまりのショックに、その場に立ち尽くしていた。 「どうしたの? 怜士さまに、ご挨拶はできた?」  追いついて来た和生に、倫は震える声で訴えた。 「あの、その、怜士さまが。今夜、僕に寝室へ来なさい、って!」 「え!? それは、その。……おめでとう」 「そんなぁ!」  とんでもない事になっちゃった!  倫はただ、うろたえるしかなかった。

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