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GIVE HEAD

 僕は時々、(まつり)先輩のおちんちんを舐めさせてもらっている。  舐めるっていうか、しゃぶるっていうか、ペロペロもするけど吸い付いたり、口の中でストロークしたり、先っぽも裏すじもサオ全体も、タマの方までいっぱい舐めて、吸って、最後は必ず咥内へ射精してもらったのをゴクンと飲み下す。  つまり、フェラチオ。オーラルセックス。3日くらい溜めたのを出してもらうから、いつもすごく濃くてドロドロしていて生臭くて、興奮する。  僕が彼に舐めてもらうことはないし、セックスもしない。ただ一方的に僕がフェラチオさせてもらうだけ。  最初の頃は場所だって部室とか、サークル棟のシャワーブースとか、彼の部屋の玄関先とかだった。靴も脱がずにただパンツの中からおちんちんを出してもらって、ひざまずいた状態でしゃぶるだけしゃぶったら終わり。射精口に残った精子をお掃除フェラだけして、またパンツの中にお返しする。  フェラした後の僕は興奮にぼおっとしているから、彼が何を言っても頭の中まで届いていないし、適当に相槌だけを打っていたらいつも呆れられてしまう。  僕、どうしちゃったんだろう? 精子が欲しくなるみたいにして、何度も何度も繰り返してしまう。  だけど祀先輩は優しいから、僕におちんちんをしゃぶらせることには罪悪感があるみたい。僕が舐めたいってお願いしているのに、それでも躊躇ってみせる。元々ノンケだからっていうのもあるのだろうけれど、それでも最後は絶対に射精する。  おちんちんを舐めているときの僕は、自分でも緩んだ情けない顔しているの分かってる。おちんちんが好きで好きでたまらないって気持ちになって、すごく幸せな気持ちになる。  パンツの中では僕のおちんちんもカチカチになっているけれど、それを触ろうだとかは思わない。  喉の奥までおちんちんの先っぽ擦り付けて、えづきそうになるのを堪えつつ息ができなくなるほど呑み込んだらそれだけで甘くイキかけることもあるから、怖くなるのにやめられない。  喉の奥気持ちイイって言われて、そこで吸い付きながら外から撫でられたり、指の腹で軽く絞められるのも好きで。そういうのはベッドやベンチの上に仰向けになって頭の方から口の中に入れてもらう方がしやすいから、最近では彼の部屋に上がり込むことも増えてきた。  喉奥に射精され噎せながら、鼻の奥まで精子の匂いでむせ返る。  仰向けになっているから僕も勃起しているの祀先輩にバレてしまって、布越しから無理やり握られたり撫でられたりした時はさすがにイッてしまった。  ヤダって言って泣き出した僕に、祀先輩はまた呆れて、それから2週間くらいはフェラさせてくれなかった。  それでも、僕が泣きそうになりながらお願いしたらまたフェラさせてくれて、お礼を言ってから次の予約をしたら、それもまた呆れられてしまっていた。  (まつり)先輩はオナニーしなくていいし、オナニーより気持ちイイからってことで、ノンケなのにフェラチオさせてくれている。  オナホみたいなものだと思う。僕の口の中は、柔らかくてぬるぬるしてて便利な穴。しかも自分から喜んで吸い付いてくるのだから、慣れてしまえば躊躇いよりも快感のが優ってしまったのだろう。  僕もオナホは使ったことあるけれど――フェラチオをされたことはないし、当然セックスもしたことはない。もちろん、お尻の方も。というか、アナルはNGなので。  僕のセクシュアリティはゲイなのかバイなのか、それとも結局のところはノンケになるのか、自分でも分からない。おちんちんを舐めるのは好きだけれど、だからといって男の人自体が好きか? といったらそんなこともないし。  男の人とセックスしたいって欲求もない。だからといって、好きな女子がいたりとかも無い。ただ、お口におちんちんが欲しいだけ。  オーラルセックスという意味でいったらこれもセックスの一部?なのかも知れないけれど、喉奥まで犯されてもそれでイクことはないからなかなか判断が難しいのだ。  だけどイラマチオされて気持ちイイってなったことがあるし、喉奥のところに性感帯があるんじゃないかってくらい興奮するのも本当。  ゾクゾクが止まらなくなって、窒素しながら痙攣したこともある。濃い涎が止まらなくなって、その中に射精されてる間中イキかけてた。  もしかしたらそのうち僕は、フェラチオだけでイケるようになるのかも知れない。そうしたらオーラルセックスだって、立派な性交と呼べるのだろうか?  僕はそんなことも祀先輩には全く言わないけれど、時々祀先輩は僕の身体を触る。 「嫌です」  っていったらすぐにやめてくれるけれど、そういう時の彼は興奮している。射精したら落ち着くみたいだし、それ以上を求められることもないけれど、もしかしたら『これ以上はまずい』ってサインなのかも知れない……。  もうそろそろ祀先輩のおちんちんとはお別れして、他の人を探した方がいいんだろうか?  後腐れなくフェラチオさせてくれる人は、意外と多い。ノンケだけどフェラくらいなら男でもOKって人もいっぱい居る。  祀先輩のおちんちんを舐めさせてもらうまでは、僕もそうした人とその場限りで会ったりしていた。色んな人がいたけれど、射精まで行かなかった人は1人もいなかった。  潮時っていう言葉があるけれど、今がちょうどその潮目なのかも知れない。何の不満もなく良い時期に、潔く身を引くのが一番だと思う。  最近では(まつり)先輩のおちんちんを舐めたその夜に、その時のことを思い出してひとりえっちしてしまう僕がいるのだから。  前まではおちんちんを舐めていても、そういう時のオカズは女の人だったのに――変わって来てしまっているのが怖い。  匂いを、味を、温度を、息づかいを思い出して、胸が苦しいほど切なくなりながら自分のおちんちんを擦り続ける。舌を出して、涎を垂らして、その中に射精して欲しいって思いながら、自分の手の中で射精する。イク時はいつも変な声が出ちゃって、女の子みたいに泣き出す。  あんまりにも泣くから、 「目ぇ真っ赤だけど、どーした?」  翌朝会った祀先輩に、心配されてしまった。  もしかしたらアレルギーかもと誤魔化したけれど、彼は僕に何か悲しいことがあって泣いていたのでは? と思ったみたいで、何度も聞かれて申し訳なかった。  そうして最近では、フェラの後に僕の身体に触れてくる祀先輩の手を強く拒絶できなくなって来ている。  服の上から触れられるだけだし、頭を撫でるとかハグをされるとかその程度だったりもするけれど、この間なんてハグされたとき思わず抱きついてしまって、慌てて離れたら舌打ちされた。  ――だってゾッとしたんだ。早く離れなくちゃこのまま離れられなくなるって。離れたくなくなるって。  人の温もりの心地よさを知ってしまったら、祀先輩の迷惑になるくらいずっとしがみ付くのをやめられなくなるかも知れない。祀先輩だってゲイじゃないし、そこまで求められるのは困るだろう。  別にキスしたいとか、セックスしたいって思っている訳じゃないから、恋愛感情のようなものではないと分かっていても怖い。フェラチオをして咥内射精されてゴックンって飲み下したあとの多幸感に、僕は勘違いしてしまうのかも知れない。  祀先輩じゃなくたって、男の人なら誰でもいいはずなのに、彼とだけの繋がりのようなものを錯覚してしがみつきたくなってしまう。  だから僕は、祀先輩にお願いしてみた。 「おちんちんを舐める前にハグしてもらってもいいですか?」  って。  祀先輩はさすがに驚いたようだったけれど、彼は優しいから、 「いいよ」  って両腕を広げてくれた。  フリーハグの精神だろう。尊い。  僕は、 「失礼します」  って断って、笑う彼の胸に飛び込んだ。  彼の胸は広くて、温かくて、柔らかくは無かったけれど、両腕が僕を閉じ込めたらものすごく心地よくて。  僕は後悔した。この腕の中が心地よいのは錯覚じゃなかったって知ることは、やっぱり怖かった。  恐る恐る見上げたら、彼も僕を下ろして。慌てて顔を逸らそうとした僕に、祀先輩はそれをさせなかった。  正確にいうと、出来なくさせた。キスで。  僕はそのまま固まってしまって、抵抗も何も出来なかった。僕の口の中に、おちんちんではない粘膜が重なった。  彼の厚い舌に舐められて、ゾワゾワしたものが這い上がり、反射的に身をよじった。それでも解放されることはなかった。  ヤダヤダって首を振ったけどすぐにまたキスされて、舌を舐められて、唾液を注ぎ込まれたのを飲み込んだ。  僕は興奮して、勃起した。  早く祀先輩のおちんちんにしゃぶりつきたかったのに、離してもらえなくて泣き出しそうだった。 「まつり……せんぱぃ」  消え入りそうな声でやっと言って、ハァハァと息は乱れていた。 「なァに?」  尋ねる声は意地悪だった。  いつも優しい(まつり)先輩なのに、その声は意地悪。 「おちん……ちん、舐めさせて、ください」  僕はいつもみたいに言ったのに、彼はいつもみたいに頷いてくれなくて、 「舐めるだけでいいの?」  意地悪に聞くから、 「しゃぶりたい……です」  恥ずかしかったけど、答えた。  祀先輩はニコリともニヤリともせずに「フーン」と言うと、 「それで終わり?」  また尋ねるから、 「口の中に……」  僕は知ってるくせに意地悪な祀先輩に興奮してしまい、 「精子が欲しいです」  飢えたみたいにして言うと、口を開け舌を見せた。  しつけの悪い犬みたいに、エサを欲しがった。待てが出来なくなったのは、祀先輩が意地悪だからだ。  なのに祀先輩は、 「いいよ」  と言ってくれないまま、僕をベッドへ押し倒した。  今までこのベッドの上に仰向けになるのは喉姦してもらう時だけだったのに、僕の上に祀先輩が乗り上がっている。 「自分でケツいじったことある?」  今度の問いには答えられないまま、ただ首を横に振った。  それだけで彼が何を求め始めているのかは分かったから、怖くなったけど逃げられない。  どうして? いつから? ――って混乱に身体が動かなくて、ヤダ駄目って言葉が声にならない。  ちゃんと欲しいことお願いしたのに、違うことするなんて酷いって思うのに、またキスされたら力が抜けてしまった。 「今日はケツの穴でチンポしゃぶってよ」  言われ、怖かったし嫌だったけど、僕お尻の穴でも祀先輩のおちんちんをしゃぶれるの? って思ったら、切なくなった。 「ほんと、エロくて可愛いな、お前は」  思わずうっとりとしかけた僕へ、優しい祀先輩がほんのちょっと見せた甘い牙に……ドキドキした。まだ衣服越しの彼の勃起がお腹の上に擦り付けられて、僕はキュンと震えた。  だけどその前に――やっぱり、お口に欲しくて。  僕はとうとう自分から彼に唇を押しつけると、 「意地悪しないでください」  涙声で言って、 「先にお口でしゃぶらせて」  泣きながら懇願するのに、 「しょーがねーな、お前はよォ……」  やっぱり呆れた声で、折れてくれた祀先輩にすり寄ったら強く抱きしめてもらえた。

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